「出しゃばりが過ぎる」金正恩の”父娘行事”に国内で批判

2025年5月2日(金)5時25分 デイリーNKジャパン

朝鮮中央通信など北朝鮮の国営メディアは4月26日、新たに建造された多目的駆逐艦の進水式が、25日に金正恩総書記の出席のもとで行われたと報じた。式典には、「ジュエ」の名で知られる金正恩氏の娘も同行した。


その様子はテレビを通じて報じられたが、国内では金正恩氏の過度な儀式重視に対する批判の声が上がっている。どうやら、まだ幼い娘を前面に押し出すなど、先代と先々代では見られなかった演出に違和感が強いようだ。


米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じたところによれば、住民の多くはこうした演出を冷ややかに見ている。


ある情報筋は、「住民の反応を一言で表せば、金正恩氏は大げさな行事などの虚礼虚飾を極端に好む人物だということだ」と述べた。また、「故金日成氏や故金正日総書記と比べて、功績も少なく年齢も若い金正恩氏が、過剰に出しゃばっている」との批判もあるという。


テレビで放送された記録映画(ドキュメンタリー)では、金正恩氏が列車で南浦港に到着し、そこからわずか300メートルの距離を車で移動し、その間にオートバイの護衛までつけていた様子が映っていた。情報筋は「金日成氏や金正日氏は、そのようなことは一切しなかった」と語っている。


彼はまた、「金日成氏と金正日氏を特別に評価するつもりはないが、両氏は外国首脳を迎える際のような特別な場合を除き、国内行事ではオートバイの護衛など受けなかった」とも述べた。


さらに、現在の金正恩氏は軍部隊や地方を視察する際にも名誉衛兵(儀仗隊)による閲兵を頻繁に受けているが、かつては名誉衛兵は外国首脳を迎えるような特別行事に限って登場する存在であったと指摘されている。


咸鏡北道(ハムギョンブクト)の住民は、「金正恩氏の虚礼虚飾は昨日今日に始まったことではない」と指摘しつつ、ジュエ氏の目立つ振る舞いに対する市民の疑問の声を伝えた。


「映像を見ると、式典の最中、主席壇に座った金正恩氏は他の幹部たちとはほとんど言葉を交わさず、娘とだけ笑顔で会話する場面が何度も映っていた。これを不思議に思う住民が多い」と語った。


朝鮮社会では長幼の序、すなわち年長者が偉いという価値観が重んじられている。10代の若い女性であるジュエ氏が他の幹部を差し置いて主席壇に上がっていること自体、眉をひそめる人が多いのが実情である。



金正恩氏自身も、父の死去により20代後半で最高指導者の座に就いた。その若さゆえ「若造が生意気に」と批判され、その評価を覆すのに10年を要した経験を、生々しく記憶しているはずだ。ましてやジュエ氏はまだ10代、しかも女性である。今後ジュエ氏が歩む道は、平坦ではないかもしれない。

デイリーNKジャパン

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