「駆逐艦横倒しと幹部粛清」目撃した金正恩”愛娘”のメンタル不安

2025年5月28日(水)5時2分 デイリーNKジャパン

北朝鮮国営の朝鮮中央通信は26日、進水に失敗し横転した新造駆逐艦の「均衡性を完全に回復するための作業」が順調に進んでいるとする一方、法機関が「重大事故の発生に大きな責任がある党中央委員会軍需工業部のリ・ヒョンソン副部長を召喚して拘束した」と明らかにした。党軍需工業部の副部長は、日本の中央省庁の次官クラスに当たる高官だ。


横転事故は進水式に出席した金正恩総書記の眼前で繰り広げられたが、その隣にはまず間違いなく、名前が「ジュエ」とされる娘がいたはずだ。金正恩氏はこのところ、軍関連の重要行事にはほぼ毎回、娘を帯同しており、4月25日に行われた同型駆逐艦の進水式にも父娘そろって参加した。



まだ10代のジュエ氏にとって、今回の事故は初めて目撃する「重大事件」だったのではないか。もしかしたら、顔面を紅潮させて怒鳴り散らす父親の姿も目の当たりにしたかもしれない。


そして、この事件は事故当日で終わったわけではない。冒頭で触れた党副部長をはじめ、すでに4人が当局に拘束されて責任の追及を受けている。金正恩氏は今回の事故を「犯罪的行為」だと指弾しており、拘束された人々が解任などの比較的軽微な処分で済まされる可能性は低い。政治犯収容所での無期刑や、公開処刑すらあり得る状況なのだ。


ジュエ氏は、そうした物事の成り行きを、直接間接的に見守ることになる。自ら目撃した出来事をめぐり、自分の父の指示によって、人命が奪われる展開を体験することになるのである。


巷で言われているように、ジュエ氏が将来、父の後継者になるかどうかは未知数だ。仮にそうなるのであれば、恐怖政治の上に成り立つ独裁体制を継承するに当たり、ジュエ氏が粛清や公開処刑といった残忍な統治手法に塗れていくのは避けられないことだ。


そのような過程に、果たしてまだ幼い彼女のメンタルは耐えられるのだろうか。


もっとも、北朝鮮の一般国民たちは現在の彼女と同年代のときに、公開処刑を「強制見学」させられるなどして恐怖政治の洗礼を受けている。独裁者の子であれ庶民の子であれ、北朝鮮に生まれたならば、何らかの「恐怖体験」を行うことは宿命づけられていると言えるかもしれない。

デイリーNKジャパン

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