人種差別解消へ「1歩前進すれば2歩後退」、米社会に分断根強く…黒人男性暴行死5年
2025年5月27日(火)5時0分 読売新聞
【ロサンゼルス=後藤香代、ワシントン=中根圭一】2020年5月に米ミネソタ州で白人警官が黒人のジョージ・フロイドさん(当時46歳)を暴行死させた事件から、25日で5年となった。事件を機に、人種差別に抗議する「ブラック・ライブズ・マター(BLM)」運動が広がったが、その後、運動への支持は伸び悩み、米社会の分断や人種差別は根強く残ったままだ。
BLM 白人保守層不満
事件が起きたミネアポリスの現場では25日、地元の黒人牧師による礼拝が行われた。牧師は「すべての警官が悪いわけではないが、神が人の心を変えない限り、人種差別をなくすことは難しい」と説いた。
フロイドさんの事件後も、黒人が警官から銃撃や暴力的な取り締まりを受ける事件が各地で続いた。21年1月に発足したバイデン政権は、警官の不祥事をデータベース化するなどの警察改革を打ち出して地方警察への監視を強めたほか、人種差別などの問題の解消に向けて、連邦政府機関に少数派の人材を積極採用する「DEI(多様性、公平性、包括性)」も導入した。
一方、白人保守層を中心に、人種的少数派への過度な配慮を「逆差別」と捉え、不満を抱く人も少なくなかった。BLM運動についても、抗議活動の暴徒化や、運動への寄付金を巡るスキャンダル報道などもあって支持が伸び悩んだ。
米調査機関ピュー・リサーチ・センターによると、事件直後の20年6月に67%に達していたBLM運動への支持率は、同年9月には55%に減少。今年2月は52%と横ばいが続き、人種別でみると、黒人の支持率は76%に上るが、白人の支持率は45%と差が大きい。
同センターの2月の調査で、人種問題への関心が「低すぎる」と答えた黒人は69%だったが、白人は26%にとどまり、「高すぎる」とした白人は49%に上った。支持政党別では、民主党支持者は56%が「低すぎる」、共和党支持者は66%が「高すぎる」と回答。人種問題を巡る分断が目立つ。
トランプ政権は今月21日、黒人の公民権を侵害しているとしてバイデン政権が着手した地方警察の調査などをやめると発表。トランプ氏の支持者らは、フロイドさんへの殺人罪で有罪判決を受けた元警官の恩赦を求め、約8万筆の署名が集まっている。首都ワシントンでは3月、共和党の圧力を受けた当局が路上に描かれたBLMの文字を消した。
ミネアポリスの事件現場近くで黒人芸術家に機会を提供するギャラリーのオーナー、エーサ・ライスさん(42)は25日、「1歩前進したかと思えば、2歩後退するような状況だ」と嘆いた。