金正恩氏「自慢のタワマン」で大問題。崩壊の恐怖に加え…

2019年7月17日(水)11時58分 デイリーNKジャパン


近年、北朝鮮の首都・平壌はタワーマンション(タワマン)ブームに沸いてきた。


金正恩党委員長が旗振り役となって進められたメガプロジェクトの結果、倉田(チャンジョン)通り、未来科学者通り、黎明(リョミョン)通りといったタワーマンション団地が造成された。いずれも「金正恩時代」を象徴するランドマークとなっており、国営メディアも大きく取り上げられている。



しかしこのタワマンブーム、決して景気が良いだけの話ではない。いずれのタワマンも他の国では考えられないような短期間で建設されている。前述の黎明通りの建設期間はわずか1年。北朝鮮お得意の「速度戦」で建てたものだが、そこには常に崩壊事故の陰がつきまとっている。


さらにここへ来て、ブームに冷水を浴びせかけるようなことを、北朝鮮の保衛部(秘密警察)が行っているとの情報が、平壌のデイリーNK内部情報筋から寄せられた。


この情報筋によると、保衛部の思しき要員が、市内の朝鮮労働党の本部庁舎や、政府の主要機関が見下ろせる位置にある高層マンションを訪れている。その目的は「窓を塞ぐ」ためだ。


外に開けた窓にセメントで格子のようなものを作り、外が見えないようにするという。同様の作業は一昨年あたりから始まった。


情報筋によると、これは、高層マンションから重要機関の画像を撮影し、外部に流出させることを遮断するための措置だ。


平壌市内には、100メートルを超えるタワーマンションが50棟以上あると言われている。最も高いのは郊外の黎明(リョミョン)通りにある高さ270メートル、82階建てのものだ。この団地にある6棟のうち、4棟が高さ200メートルを超えている。一方、市内中心部にある未来科学者通りの19棟のうち、最も高いのは高さ210メートル、53階建てだ。


一方で、昔から存在する北朝鮮の党、政府機関の建物はいずれも3〜5階建てで低い。周囲の高層マンションから丸見えになってしまうのだ。それではマズいということで窓を塞ぐことにしたようだが、すべての階の窓を塞ぐことは現実的に困難だ。そこで、主要機関を様々な角度から見下ろせる高層階に限って窓を塞ぐ措置を取ったものと思われる。


金正恩氏は「国内情報の海外流出、海外情報の国内流入」に神経を尖らせているが、米朝、中朝、南北の首脳会談が続け様に行われている近年、さらに敏感になっていることを窺わせる。


北朝鮮に友好的な人物であっても容赦ない。北朝鮮の最高学府、金日成総合大学に留学する唯一のオーストラリア人留学生で、平壌の情報をSNSで発信していたアレック・シグリー氏がその例だ。彼は先月24日に突然音信不通となったが、今月4日に中国・北京空港に姿を現した。北朝鮮国営の朝鮮中央通信は6日、彼がスパイ行為を行っていたとして追放したと報じた。


このパラノイア的な当局の情報遮断策で莫大な損害を抱え込んだのは、不動産に投資したトンジュ(金主、新興富裕層)だ。


「洞窟のようなところに誰が住むものか」(あるトンジュ)


窓が塞がれた高層マンションの部屋は、日当たりが悪いばかりか、外からの見栄えも悪く、2万ドル(約218万円)で売りに出されていた部屋が7000ドル(約76万円)まで暴落した。


不動産投資で儲けてきたトンジュだが、供給過剰と国際社会の制裁による不況で不動産価格が暴落、苦しい思いをしている。損切のために原価を下回る価格で売りに出す場合も多いと言われている。そこに加えて今回の措置はまさに「泣きっ面に蜂」だろう。


問題はそれだけではない。深刻な電力不足に苦しめられている北朝鮮の人々は、窓際やベランダに設置したソーラーパネルで照明やテレビに使う電気を賄っている。窓を塞がれると、停電時に電気が使えなくなってしまうのだ。これも資産価値の低下に悪影響を及ぼしていると考えられる。

デイリーNKジャパン

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