「Ryzen 9 9950X3D」を検証する - X3Dで16コアなZen 5はゲームとクリエイティブ両面で最強か!?

2025年3月11日(火)22時0分 マイナビニュース


国内では2025年3月14日の午前11時から発売がスタートするAMDの最新CPU「Ryzen 9 9950X3D」と「Ryzen 9 9900X3D」。今回は上位で16コア32スレッドの「Ryzen 9 9950X3D」を試用する機会を得た。Ryzen 9 9950X、Ryzen 7 9800X3D、Core Ultra 9 285Kを交えて、その実力を検証していく。
Ryzen 9 9950X3Dは16コア中8コアに3D V-Cacheを搭載
Ryzen 9 9950X3DとRyzen 9 9900X3Dは、AMDのZen 5アーキテクチャを採用し、3D V-Cacheを搭載する「X3D」シリーズの最新モデル。グローバルでの発売は2025年3月12日でメーカー希望小売価格はRyzen 9 9950X3Dが699ドル、Ryzen 9 9900X3Dが599ドルとなっている。国内では2025年3月14日の午前11時からの発売、予想価格はRyzen 9 9950X3Dが132,800円、Ryzen 9 9900X3Dが112,800円だ。
大容量3次キャッシュである3D V-Cacheはゲームにおいて高い効果があり、それゆえにRyzen 7 9800X3Dは“ゲーミング最強CPU”として2024年11月の以来、突出した人気になっている。しかし、8コア16スレッドなので動画や写真編集といったクリエイティブ系や配信しながらのゲームプレイといったマルチスレッド性能を求める処理では物足りなさがあったのは事実だ。
それをカバーするのが16コア32スレッドのRyzen 9 9950X3Dと12コア24スレッドのRyzen 9 9900X3Dというわけだ。なお、どちらもCCD(CPUコアを格納するダイ)は2基で構成されているが、3D V-Cacheが搭載されるのは片方のみ。両方に3D V-Cacheを搭載するとコストが高くなるのに加えて、CCDをまたぐ処理はゲームにおいてパフォーマンス低下につながることがあるためだろう。ゲームは3D V-Cache搭載のCCDで処理、それ以外はすべてのコアを使って処理とアプリを選ばず高いパフォーマンスを発揮できるのが大きな強みと言える。これは前世代のRyzen 9 7950X3D(16コア)/7900X3D(12コア)とRyzen 7 7800X3D(8コア)の関係と同じだ。
ただ、大きく異なるのは構造だ。Ryzen 7000シリーズのCPUダイの上に3D V-Cacheをかぶせるように搭載していた。そのため熱がこもりやすく、3D V-Cache非搭載のモデルよりも動作クロックが低いというウィークポイントがあった。しかし、Ryzen 9000シリーズの第2世代3D V-CacheはCPUダイの下に搭載。これにより冷却効率は格段に改善され、非搭載モデルと変わらない動作クロックを実現している。つまり、Ryzen 9 9950X3Dは単純にRyzen 9 9950Xの強化版と言えるようになったわけだ。
3D V-Cacheを活かすには最新ドライバーの導入が必須
性能テストを行う前に、Ryzen 9 9950X3D/9900X3Dは、ゲームを3D V-Cache搭載CCDだけで動作させるわけだが、それを実現するためにはいくつかの手順が必要になるので紹介しておこう。基本的にはRyzen 9 7950X3D/7900X3Dと同様なので知っている人は読み飛ばしても問題ない。以下はOSはWindows 11の場合だ。
まず、AMDの最新チップセットドライバーを導入する。これに含まれる「AMD 3D V-Cache Performance Optimizer Driver」、「AMD PPM Provisioning File Driver」が3D V-Cache搭載コアだけを動作させるのに必要になるからだ。そして、Game Barを最新版に更新する。これは、Microsoft Storeの更新プログラムを取得すれば最新になるはずだ。そして、Windowsを再起動し、何も操作しないでアイドル状態にしてしばらく待つ(15分ほどなら確実)。これはアイドル時のみ行われるWindowsのメンテナンスタスクを動かすため。このほか、Windowsのゲームモードや仮想化ベースのセキュリティを有効化する必要もあるが、Windows 11ならデフォルトで有効なっているので意識する必要はないだろう。これで、ゲームは3D V-Cache搭載CCDだけで動くようになる。
ゲームにもクリエイティブでも強さを発揮! 文句なしの高性能
ここからは、ベンチマークを実行していこう。CPUの設定や検証環境は以下の通りだ。
Ryzen 9 9950X3D(16C/32T) TDP170W/PPT200W/TDC160A/EDC225A/Tj95℃
Ryzen 9 9950X(16C/32T) TDP170W/PPT200W/TDC160A/EDC225A/Tj95℃
Ryzen 7 9800X3D(8C/16T) TDP120W/PPT162W/TDC120A/EDC180A/Tj95℃
Core Ultra 9 285K(24C/24T) PL1=250W/PL2=250W/ICCMAX=347A/Tj105℃
まずは、CGレンダリングでシンプルにCPUパワーを測定する「Cinebench 2024」、「Cinebench R23」とPCの基本的な性能を測定する「PCMark 10」を見ていこう。
16コア32スレッドの性能は確かだ。Cinebench 2024のマルチコアは9800X3Dよりも1.78倍も高いスコアを出している。24コアの285Kには若干及ばないが、9950Xよりはわずかに上。第1世代3D V-Cacheの弱点だったクロックの低さを見事に克服している。PCMark 10は負荷のそれほど高くないテストなので大きな差はついていないが、クリエイティブ系のDigital Content Creationではコア数の多さが効いて、9950X3Dと9950Xは高いスコアになっている。
続いて、実ゲームではどうだろうか。まずは軽めのゲームから「オーバーウォッチ2」と「マーベル・ライバルズ」を試そう。オーバーウォッチ2は、botマッチを実行した際のフレームレート、マーベル・ライバルズは訓練場の一定コースを移動した際のフレームレートをそれぞれCapFrameXで計測している。GPUがボトルネックになりにくくCPUの性能差が出やすい低画質設定と、GPUがボトルネックになりやすくCPUの差が比較的出にくい最高画質設定の2種類でテストしている。解像度はフルHDに統一した。
オーバーウォッチ2では、X3Dが強さを発揮した。9950Xを低画質なら30fpsほど上回っている。9800X3Dとほぼ変わらない結果と、9950X3Dは優れたゲーミング性能を持っていると言ってよいだろう。マーベル・ライバルズもオーバーウォッチ2ほどではないが、似たような傾向だ。
続いて話題のハンティングアクション「モンスターハンターワイルズ ベンチマーク」を実行しよう。
X3Dの2CPUが若干高いフレームレートを出しているがどの差はごくわずか。コア数の多さが効きやすいテストだけに、9800X3Dがかなり健闘していると言える結果だ。
続いて、「Ghost of Tsushima Director's Cut」と「F1 24」ではどうだろうか。Ghost of Tsushima Director's Cutは旅人の宿場周辺の一定コースを移動した際のフレームレートをCapFrameXで計測、F1 24は内蔵のベンチマーク機能を利用した。
Ghost of Tsushima Director's Cutはほとんど誤差レベルの差。一定以上のCPU性能があればそれほどフレームレートに影響するわけではなさそうだ。F1 24はX3Dが若干高いフレームレートを出している。9950X3Dと9800X3Dでゲーミング性能に差がほとんどないことが改めて分かる結果だ。
最後に重量級ゲームの定番として「サイバーパンク2077」を実行しよう。ゲーム内のベンチマーク機能を利用している。
3D V-Cacheが強烈に効くゲームだ。低画質では9950Xよりも約1.2倍、81.77fpsも高いフレームレートを出した。レイトレーシング:ウルトラ画質でも40fps以上も上回っている。ここでも9950X3Dと9800X3Dはほとんど差がない点に注目したい。
クリエイティブ系のテストも試そう。まずは実際にAdobeのPhotoshopとLightroom Classicでさまざまな画像処理を行う「Procyon Photo Editing Benchmark」から。
ここでは9950X3Dがトップスコアになった。主にCPUで処理される「Batch Processing
」は、3D V-Cacheが効くようだ。コア数が半分の9800X3Dが9950Xのスコアにかなり迫っている点からもそれが分かる。なお、Image RetouchingはCPUとGPUの両方を使う処理だ。
続いて、エンコードアプリの「HandBrake」を使って、約3分の4K動画ファイルをH.264とH.265のフルHDにエンコードするのにかかった時間を計測した。
16コア32スレッドの9950X3Dと9950Xが強さを見せた。9800X3Dよりも約1.5倍から約1.8倍の速度でエンコードが終了している。24コアの285KはH.264ではトップに立ったがH.265では9950X3Dと9950Xが上回った。
最後に消費電量や動作クロックをチェックしておこう。まずは、システム全体の消費電力から。アイドル時は起動10分後、そのほかはベンチマーク実行時の最大値だ。電力計にはラトックシステムの「REX-BTWATTCH1」を使用した。
コア数が多いだけにCinebench 2024での消費電力は9950X3Dと9950Xが高くなる。コア数が多くマルチコアのスコアでトップに立った285Kが9950X3Dと9950Xより消費電力が低いのは、さすが電力効率重視の設計と言える部分だ。その一方でサイバーパンク2077は、GPUの消費電力が大部分を占めるためCPUによる差は小さくなる。
続いて、Cinebench 2024のマルチコアを10分間動作させたときのCPU温度、動作クロック、消費電力の推移を確認しよう。「HWiNFO Pro」を使用し、CPU温度はRyzen系が「CPU (Tctl/Tdie)」の値、Core Ultra 9 285Kが「CPU Package」、動作クロックはRyzen系が「Average Effective Clock」、Core Ultra 9 285Kが「P-core 0 Clock」、CPU単体の消費電力は「CPU Package Power」の値だ。
温度は9950X3Dが平均81℃、9950Xが平均79.2℃、9800X3Dが平均78.7℃、285Kが平均74.5℃だ。36cmクラスの水冷クーラーならまったく心配なく運用できるだろう。動作クロックは、9950X3Dと9950Xが5GHz前後、9800X3Dが5.1GHz前後、285Kが5.25GHz前後で推移となった。
消費電力については、9950X3Dと9950Xは電力リミットのPPTが200Wなので、ほぼその上限で推移。9800X3DのPPTは162Wだが、そこまで上がらず145W前後で推移、285Kもリミットは250Wだが、200W前後の推移となった。
全方位に強いCPUが誕生
Ryzen 9 9950X3Dは、9800X3Dのコア数に物足りなさを感じていた人にとっては最強の選択肢と言えるだろう。ゲーミング性能は9800X3Dとほとんど変わらず、9950Xのパワーをそのまま持っており、クリエイティブ面でも優れた性能を発揮できる。132,800円という価格はコンシューマー向けCPUとしてトップクラスの高さと言えるが、コア数が半分の9800X3Dが93,800円前後であることを考えるとお得感があるほど。あとは潤沢に流通することを願うところだ。

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