植物細胞の構造をモチーフにしたタイポグラフィがステキ! デザインの楽しさが詰まった同人誌にわくわくが止まらない
2025年4月13日(日)12時4分 ねとらぼ
こちらは『カバーガラス版』
●今回紹介する同人誌
『植物細胞プレパラート カバーガラス版』148x148mm 72ページ(片面36ページ) 表紙、本文カラー
『植物細胞プレパラート モノクロ標本版』148x148mm 36ページ 表紙、本文モノクロ
●植物細胞の構造を“見せる”
こちらは、植物細胞の構造を文字のデザインで表したご本です。生き物の体の中にある細胞、その中でも植物の細胞が取り上げられ、「緑葉体」「ミトコンドリア」などの語が、それぞれのイメージに合わせて意匠化されています。
細胞壁、細胞膜、核、リボソームなど、理科の時間に聞いたことのあったなぁ……という言葉たち、それが太文字だったり、丸みを帯びていたり、すっきり直線だったりと、バリエーション豊かにデザインされることで変化に富んだ様子が、ぱっと目に楽しく飛び込んできます。
●同じテーマで分岐のある本づくり
今回ご紹介する2冊は、植物細胞を文字デザインで表すというテーマが共通していて、載っている文字デザインも同じものです。しかし、各々に特色のある本づくりがされています。
『カバーガラス版』は本文中のひとつひとつの言葉の間に透明なフィルムが挟み込まれています。これはまさに、小さなスライドガラスに極薄のガラスを乗せたプレパラートをそっと顕微鏡でのぞき込んだ、あの体験です。紙もフィルムもとじ込むことで、ページをめくるときの手触り、つやつやと光沢のあるフィルム越しの文字に、やわらかな緑で統一された色と文字デザインの組み合わせもあり、なんだか心が浮き立ちます。
一方の『モノクロ標本版』は白黒で統一され、本の作りもシンプルです。しかしこちらはページの片側に常に植物細胞の全体図が示され、対象の言葉が細胞膜のどれのことを差しているのかを、隣り合わせですぐに見ることができます。モノクロですが細胞での働きについてもひとこと添えられているため、植物細胞の全容からとらえることができ、分かりやすさもひときわです。
2冊は製本過程にも違いがあり、『カバーガラス版』はご自身でプリンタから印刷、穴あけパンチで加工してバインダーリングでとじるといった手作業で、『モノクロ標本版』は印刷業者さんに発注して作られたそうです。顕微鏡でぐぐっとフォーカスしていくような体験と、全体を俯瞰する広い視野という、2冊の方向性の違いと装丁の融合。そのために本の作り方にもバリエーションがあるのもステキです。
●見る、触る、考えてみるがつながっていく
図案化されているのは14の語です。文字の形の面白さ、そこから「どうしてこんなに細い線で表されているんだろう?」「この丸さには意味があるのかな?」と興味が引き出され、そこに本を触る、めくる、読む体験がリンクしていきます。
緑が芽を出す頃にじっくり本を眺めるのも、わくわくするアクティビティ、そんな気持ちも湧いてくるご本でした。
●サークル情報
サークル名:なかグラフィック
入手できる場所:BOOTH
次回イベント予定:コミティア152(6月1日)
X:@patampowder
Instagram:@nakagraphic
●レビュー担当:みさき紹介文
公共図書館、専門図書館に勤務していた元司書。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えたあたりで数えるのをやめました」と語る。