知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第193回 DAZNが無料で利用できる「ドコモ MAX」、割引が非常に複雑なプランの勝算はどこに

2025年5月2日(金)15時2分 マイナビニュース


NTTドコモが2025年6月5日より提供開始予定の新料金プラン「ドコモ MAX」は、スポーツ映像配信の「DAZN for docomo」が無料で利用できるなど多くの付加価値が備わっている一方で、最も安い料金で利用するために適用が必要な割引の数が多い上に複雑で、批判の声も少なからずあるようだ。批判があってもなお、それだけ複雑な割引を設ける勝算はどこにあるのだろうか。
「ドコモ MAX」は「DAZN」が付くと考えれば非常にお得
携帯電話料金の引き下げにとても熱心だった菅義偉元首相の政権下にあった2021年以降、インフレにもかかわらず下がり続けてきた携帯電話料金。だが2025年に入り、さすがにその傾向に変化が出てきたようだ。
それは2025年4月24日にNTTドコモが発表した新料金プランであり、同社は6月5日以降、オンライン専用の「ahamo」以外の料金プランを新しいプランに入れ替えることとなる。そして新プランの中でも注目を集めたのが、従来の「eximo」に代わる大容量プランの「ドコモ MAX」である。
これはeximoと同様、通信量によって料金が変化する仕組みを備えながら、月額料金の上限となる8448円を支払えばデータ通信が使い放題で利用できるプラン。eximoの月額料金上限が7315円円であったことから、ドコモ MAXは月額1000円以上の値上げがなされているのだが、その分付加サービスを多く追加しているのが大きな特徴となる。
中でも代表的なものが、スポーツ映像配信の「DAZN for docomo」が無料で利用できること。DAZN for docomoはDAZNの「DAZN STANDARD」とほぼ同じサービスを提供するもので、月額料金もDAZN STANDARDと同じ4200円。それゆえドコモ MAXは、DAZN for docomoに4248円を追加して使い放題のモバイルデータ通信が利用できるプラン、と見ることもでき、DAZN利用者にとってはかなりお得な内容となっている。
他にもドコモ MAXには「Amazonプライム」「Leminoプレミアム」が最大6カ月間、実質無料で利用できるサービスや、国際ローミングを30GBまで無料で利用できる仕組みなどが用意。多くの付加価値サービスを用意しお得さを高めようとしていることが分かる。
加えてドコモ MAXは、より月額料金を安くできる割引サービスも用意されているのだが、その数が多く、しかも内容が複雑だとして批判する人も多い。確かにドコモ MAXに適用できる割引サービスを見ると、eximoにもあった「みんなドコモ割」「ドコモ光 セット割/home 5G セット割」「dカードお支払い割」に加え、新たに「ドコモでんき」とのセット契約で適用される「ドコモでんきセット割」と、長期利用者に向けた「長期利用割」の2つが追加され、それらを全て適用しないと最も安い料金では利用できない。
またdカードお支払い割は内容が変更され、最も大きい月額550円の割引を受けるには、会費が有料の「dカード GOLD」以上での支払いが求められる。また長期利用割も、その対象は10年以上で、最も大きい月額220円の割引を受けるには20年以上の契約が求められるなど、かなりハードルが高く現実的ではないと感じてしまう人も多いことだろう。
複雑な割引は既存顧客と「ahamo」があるからこそ
ドコモ MAXはDAZN利用者からすればお得なプランではあるものの、これだけ割引の数を増やし、なおかつ内容が複雑となれば不満が出てくるのも無理はない。しかしそれでもなお、NTTドコモがこのような料金プランを提供するに至ったのには、一定の勝算があるからこそだろう。
では、NTTドコモがどこに勝算を見出したのかというと、それは既存のNTTドコモユーザーである。日本の携帯電話利用者は保守的な傾向が強く、一度契約した携帯電話会社をなかなか変えない傾向にあるのだが、携帯大手3社の中でもとりわけ年配層が多いとされるNTTドコモは、長期利用者が多くユーザーの忠誠心が強い傾向にある。
そのことを示しているのがクレジットカード「dカード」の契約数であり、会費無料の「dカード」よりも有料の「dカード GOLD」の会員数の方が多く、その数も1100万を超えている状況にある。2024年11月より提供開始したより上位の「dカード PLATINUM」も、2025年1月時点で会員数が34万7000を突破するなど好調な伸びを示しており、いかに優良顧客を多く抱えているかが分かるだろう。
また長期利用割は、むしろ既存ユーザーの要望を受けて追加されたものだという。そうしたことを考えれば、dカード GOLD以上を利用し、20年以上契約し続けるなど、ドコモ MAXの割引を上限まで適用できる可能性のあるユーザーは相当数に上るといえ、だからこそこれだけ複雑な割引を用意しても受け入れられるとNTTドコモは判断したのではないだろうか。
とはいえ、NTTドコモも売上を伸ばすには既存だけでなく、新規の顧客獲得が必要になってくるだろうが、ドコモ MAXにはDAZN for docomoが無料で利用できるという、他社プランにはない強力な武器がある。スポーツに関心が高くDAZNを利用している他社の大容量プラン利用者からしてみれば、ドコモ MAXに変えるだけでかなりの料金節約になるだけに、NTTドコモはDAZN利用者に向けたプロモーションで他社から乗り換えを促そうとしているのではないだろうか。
一方で、スポーツに興味がなくDAZN for docomoを必要としていない人、そして複雑な割引に不満を抱き、シンプルな料金プランを求めている人は、ドコモ MAXのメリットを受けられず離脱を招きかねない。だがNTTドコモは、既に割引がなくシンプルなオンライン専用プラン「ahamo」を提供しており、オプションの追加で110GBのデータ通信が利用できる「ahamo大盛り」も選べることから、ahamoをそうした人達の受け皿として活用する方針のようだ。
ゆえにドコモ MAXは、ある意味で既にahamoがあったからこそ、高付加価値で割引が複雑な料金プランに振り切ることができたと見ることもできよう。新プランの評価は大きく賛否が分かれていたようだが、こうして見るとドコモ MAXとahamoの布陣は意外と隙があまりないだけに、競合が大〜中容量帯で有効な対抗策を打ち出すのも意外と難しいかもしれない。

マイナビニュース

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