これで年を重ねても「刺激に満ちた毎日」を過ごせる…変化のない日々に彩りを加えるちょっとしたコツ
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Kayoko Hayashi
※本稿は、名取芳彦『達観するヒント もっと「気楽にかまえる」92のコツ』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
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■「若々しくいる」のはとても大事
人は年相応に生きたいものですが、老いを感じたからといって、年寄り染みた言動をするには及びません。
若い僧侶に法話のデモンストレーションをしてもらうと、20代、30代なのに70歳過ぎの老僧のような低く落ち着いたトーンで話す人がいます。
ある僧侶は、物事がわかっているようなしゃべり方をしたほうがいいと思っているようでした。私は「そんなこと、誰も決めてないよ。あなたはその若さがいいんだ。その若さを発揮しないで、老僧の真似をするなんてもったいないよ」とアドバイスしました。
年を取ると総じて声が低くなります。多くの人は声帯が衰えたのが原因だと思っていますが、違います。感動する心がなくなっているのです。その証拠に、お年寄りでもきれいな虹を見れば、高い声で「わっ、きれいな虹だ」と言います。
ビックリするようなことに遭遇すると「へぇ、こんなことが起こるのか!」と張りのある声が出るのです。この条件反射を逆手に取って、高い声で話すと心に張りが戻ります。
老いを感じたら、体も心も若さと元気を保ちたいと、少し意識したいものですね。
■「無常」がわかると、無理をしなくなる
人生は変化の連続です。常ではない“無常の現場”と言ってもいいでしょう。変化してしまう状況に自分が対応できるかどうか不安な人は、「~だったらどうしよう」と多くのことが心配になります。
今までの人生で経験したことがないような、伴侶が死んでしまったら、自分が不治の病にかかったら、自己破産してしまったらなどの状況にも考えが及んでしまうかもしれません。
心配性の人は、心配の種をたくさん持っています。そのうち1つでも現実になれば、他の心配ごとも起こるのではないかとますます心配になります。
しかし、考えてみれば、心配ごとのほとんどは実際には起こりませんし、たとえ現実になることがあっても、たいていの場合どうにか対応できているはずです。
この先もどんな変化が起ころうと、どうにかなります。死は避けられませんが、親しい人との別れに遺族はどうにか折り合いをつけて暮らしていきます。
どうにかなるとわかれば、先を見越した過度の心配はしなくてすみます。否でも応でも変化してしまう状況と、それに対応する自分を楽しみにできるようにもなります。
写真=iStock.com/itakayuki
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■「老い」には、嘘も偽りもありません
気力、体力、記憶力が衰えるのが老いの1つの側面です。それだけを考えればクヨクヨしたくなります。しかし、物事は異なった3つくらいの見方をしないと真実のあり方は見えません。これが「3人寄れば文殊の知恵」と言われる理由です。
年を取ることでレベルアップすることもあります。30代で自分の悪い噂が耳に入れば、酒の力を借りて憂さ晴らしをするか、悶々として眠れぬ夜を過ごし朝を迎えることもあるでしょう。
しかし、年を取ると、悪い噂が風の便りで聞こえてきても「あの人は人の悪口を言うと自分が偉くなったと、いまだに勘違いしているんだ。かわいそうな人だよ」とサラリと受け流すこともできます。
「あの人は、悪口が服を着て歩いているようなものさ」と軽くスルーできるようにもなります。これは年を取ったメリットです。
そして、年を取ることに嘘や偽りはありません。老いは生き物の真実のあり方です。
このように三側面から「老い」を見ないと、その正体は見えてきません。劣った部分だけでなく、別の部分にもスポットライトを当てれば、クヨクヨせずにすみます。
■「一病息災」の心がまえで自分の体とよく「相談」しておく
作家の吉行淳之介さんは、人工水晶体移植手術の体験記『人工水晶体』(講談社)のあとがきで、「『一病息災』という言葉があるが、あれは健康な人間が病人を慰めるための言い方に過ぎないと私は思っている」と述べています。
持病の1つくらいある人のほうが健康に気を配るので、健康に自信のある人よりもかえって長生きをするものだという「一病息災」。1つでも持病を持っている人がこの言葉を健康な人から言われれば「好き勝手なことを……」と呆れたくもなるでしょう。
しかし、自分で人生の折り返しを過ぎたと思うころ、体のあちらこちらが不調をきたします。疲れやすくなった、傷がなかなか治らないと思うのは、体が自分に相談をしているようなものです。
体と相談したあとは周囲の人に相談し、次に医者に相談して、最終的な決断は自分がするしかありません。
定期的な投薬や治療が必要になり、そのための時間のやりくりや精神的なストレスに苛まれることになるかもしれません。そのときに健康な人から慰めの言葉として「一病息災」を聞く前に、健康でいる間に自分に言い聞かせておくといいでしょう。
写真=iStock.com/South_agency
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■老いを笑い飛ばせる人は生き方上手
年齢に関係なく、生き方上手のコツは「“初めて”という心の張りを持つ」ことでしょう。
今年、あなたは生まれて初めての年齢を生きています。今までやったことがあっても、幾度も行った場所でも、今の年齢でやったり、行ったりするのは初めてです。
以前から時間がたって、多くのことを経験しているので、対処の仕方や感じ方もレベルアップしているはずです。以前と全く同じ、ということはありえません。
“初めて”の新鮮さを楽しみにする心の張りがないと、「どうせ」や「つまらない」が口癖になります。そうなれば、泥水をたっぷり吸ったスポンジのようなもので、どんなきれいな水に浸しても、吸い込む能力はありません。
老いには気力、体力、記憶力が劣化する側面がありますが、その劣化を凌いで余りある知恵を蓄えられるのも老いの側面です。
何より老いは、赤ちゃんのころからの成長の1つの過程であり、そこには嘘や偽りがありません。安心して、堂々と年を取りましょう。
■日々に彩りを加えるちょっとしたコツ
大人より子どもの体感時間が遅いのは、感激することが多いからだそうです。年を取ると、多くのことを「まあ、そんなものだ」と思うのが関の山で、一日をだらだらと過ごしているうちにあっという間に1カ月、1年が過ぎているのです。
刺激の少ない、変化のない日々が始まるのは30代くらいからでしょうか。実際、30代から40代向けの本をのぞいてみても、同じような毎日に辟易している人向けの項目がよく入っていることがわかります。
ただ、感性のアンテナを張ってさえおけば、年齢にかかわらず、刺激に満ちた毎日を過ごすことができるようになります。
食事の食材の来し方を想像する、街路樹の葉を手で触る、使ったことがない言葉を聞いたり見たりしたときにメモを取るなど、些細な日常にある楽しい出来事に気がつけるようになるのです。
とりあえず、その日の夜に、その日にあった楽しかったことを走り書きしたり、人に話したりしてください。2週間つづけると、思い返すのではなく出合った瞬間に「おっ!」と思えるようになります。その日一日を、楽しく過ごせるようになるのです。
■「長生き」が目標の人生はむなしい
母が57歳でこの世を去ってから数週間後に、遺された父が色紙に書いた言葉があります。「去ることを待たれて去る人は、去ることを惜しまれて去る人より、ずうっと幸せなのです」
去ることを待たれている人は「まだ死なないの?」と思われてしまうほど長生きをする人。去ることを惜しまれて去る人は若くして亡くなる人、または人気絶頂で引退したり、亡くなったりする人と考えてもいいでしょう。
名取芳彦『達観するヒント もっと「気楽にかまえる」92のコツ』(三笠書房)
「惜しまれて去るうちが花」とおっしゃる人がいますが、孫たちの成長を見られずに逝った母よりも、父は生き長らえ年を取って孫と遊べる自分のほうが幸せだという感慨を述べたのです。
たしかに、長生きできるのは幸せなことです。しかし、長生きするだけが目標になってはむなしいでしょう。
若い人にアドバイスしたり、老いても楽しく生きる姿を見せたり、チンギス・ハーンが言ったように「あとから来る者のために泉を清く保つ」など、長生きするからできることも付け加えたいものです。
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名取 芳彦(なとり・ほうげん)
元結不動密蔵院住職
1958年、東京都江戸川区小岩生まれ。密蔵院住職。真言宗豊山派布教研究所所長。豊山流大師講(ご詠歌)詠匠。密蔵院写仏講座・ご詠歌指導など、積極的な布教活動を行っている。主な著書に、『気にしない練習』『人生がすっきりわかるご縁の法則』『ためない練習』『般若心経、心の「大そうじ」』(以上、三笠書房《知的生きかた文庫》)などベストセラー、ロングセラーが多数ある。
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(元結不動密蔵院住職 名取 芳彦)
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