『フェラーリF355(JGTC)』秘めたる戦闘力を発揮した“ピッコロ”フェラーリ【忘れがたき銘車たち】
2025年3月12日(水)17時30分 AUTOSPORT web

モータースポーツの「歴史」に焦点を当てる老舗レース雑誌『Racing on』と、モータースポーツの「今」を切り取るオートスポーツwebがコラボしてお届けするweb版『Racing on』では、記憶に残る数々の名レーシングカー、ドライバーなどを紹介していきます。今回のテーマは1997年から2000年まで全日本GT選手権のGT300クラスを戦った『フェラーリF355』です。
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2024年シーズンにも『フェラーリ296 GT3』が参戦するなど、スーパーGTのGT300クラスを彩ったフェラーリのGTカー。
そんなフェラーリがGT300クラスへ初めて参戦したのは、今から28年前の1997年。当時、まだ全日本GT選手権(JGTC)時代のことだ。そして、同クラスに参戦したのが、『フェラーリF355』だった。
F355は、1994年に発表されたV8エンジンをリヤミッドに搭載するいわゆる“ピッコロ(小さな)”フェラーリの流れを汲むモデルである。
1997年、そのF355をJGTCに投入したのは、フェラーリ・クラブ・オブ・ジャパン(FCJ)だった。FCJは、フェラーリ・チャレンジというワンメイクレース用のF355をベースに、前後スポイラーの追加やダンパー、ロールケージの補強などといったモディファイを加えて、JGTC用のマシンを仕立てた。
こうして生まれたJGTC仕様のF355は、鈴鹿サーキットで開催された1997年の開幕戦でデビューした。規定によって装着されたリストリクターの影響で高回転型のエンジン特性を活かせず、ストレートスピードが遅いというビハインドを背負う状態だった。
しかし、次第にポテンシャルを上げていき、第4戦の富士スピードウェイラウンドでは2位表彰台を獲得。さらにその後、非選手権戦ではあったものの、ツインリンクもてぎのオーバルコースで開催されたオールスター戦では優勝も飾っている。
翌1998年もF355は参戦を続けたものの、富士スピードウェイでの第2戦で起きた多重炎上事故により2台中の1台を損失。
その後、イエローマジックやJIMゲイナーといったエントラントが、フェラーリ・チャレンジ車両ベースではなく、イチから製作したF355を走らせたが、再び優勝することは叶わず、目立った成績も残せなかった。
そして、2000年を最後にF355の参戦は終了。だが、GT300クラスにおけるフェラーリの系譜は、次期モデルの『360モデナ』に引き継がれていくことになるのである。