ソフトタイヤへの交換は「さすがレッドブルという感じ」戦略が功を奏し2台を抜いて9位入賞【角田裕毅F1第4戦分析】
2025年4月14日(月)12時0分 AUTOSPORT web

2025年F1第4戦バーレーンGPのスタート前の10番グリッド。カーナンバー22のRB21の横に座って気持ちを整えていた角田裕毅(レッドブル)に、レースエンジニアのリチャード・ウッドが歩み寄って、最後の確認を行った。
すべてが初めての経験だった前回の日本GPから2週連続での開催となったバーレーンGP。角田にとって、レッドブルでの2戦目となる今回はレースに向けて金曜日からプログラムを立てて戦っていた。
バーレーン・インターナショナル・サーキットはタイヤのデグラデーション(劣化)が大きい。タイヤをいたわり、レース中のデグラデーションをいかに小さくするかがポイントとなる。
「グランプリが始まる時からストラテジーはだいたい決めていました。もちろん、予選順位やレースでの状況によって変わる可能性もありましたが、クルマに乗っていて、2ストップで行けると感じていました」
金曜日のフリー走行では2台でダウンフォースを分け、角田は軽めのウイングを装着。しかし、マシンのバランスやロングランでのタイヤのデグラデーションを考慮して、レースに向けては重めのウイングを採用した。チームメイトのマックス・フェルスタッペンが逆に軽めのウイングに変更したのとは対照的だった。前戦日本GPでもレッドブルは2台でダウンフォースレベルを分けていた。この決定は角田が行ったのか。それとも、チームが行ったのか。
「決めたのは僕でもチームでもなく、僕たちです。ただ、ダウンフォースの安定性については、チームとしてこれから話し合わなくてはいけないかもしれません」
タイヤの選択もチームとともに決定した。ソフトタイヤでスタートし、1回目のピットストップでミディアムタイヤに交換するのも、予定通りだった。
ところが、このピットストップでトラブルが起きる。
「ミディアムタイヤへの交換は予定通りでした。ただ、ピットストップでちょっとしたことがあって……。それについてはチームと話し合わないといけないですが、ストラテジーは悪くなかったです」
同じ問題は直前にピットストップしたフェルスタッペンのときも発生していた。ピットストップ時のライトの問題だったのだろうか?
「それは教えられないです。ただ、消えるべきものが消えなかったということです」
クリスチャン・ホーナー代表によれば、「ピットガントリーに問題があり、信号に問題が生じたという最悪の1日となった。実際のピットストップはかなりよかったのが、電気系の問題がレースに確実に影響を与えてしまった」という。
4秒以上の静止時間を費やした角田はここでポジションを落としてしまう。しかし、焦らず2回目のピットストップのタイミングを待つ。すると32周目にコース上の破片を排除するためにセーフティーカーが導入される。このタイミングで角田はほかの13台のマシンとともにピットインする。
ここでハンナ・シュミット率いる戦略チームが導き出した答えが、ソフトタイヤだった。
これには角田も驚いた。
「セーフティカー時のピットストップでソフトタイヤを履いたのは驚きでした。あそこでソフトタイヤは考えていなかったので、さすがレッドブルだなという感じです」
タイヤ交換後の角田のポジションは11番手。入賞するためには前のマシンを抜くしかない。残りは20周以上あったが、気温はどんどん下がり、路面にはラバーが乗っている。果たしてレッドブルの選択は功を奏し、角田はカルロス・サインツ(ウイリアムズ)とジャック・ドゥーハン(アルピーヌ)をオーバーテイク。9位でチェッカーフラッグを受けた。レッドブルが2台そろって決勝レースでポイントを獲得するのは、昨年の第22戦ラスベガスGP(フェルスタッペン5位、セルジオ・ペレス10位)以来、6戦ぶり。今シーズン初だった。
レッドブルの初ポイントの気分を尋ねると、角田は穏やかな表情で「悪くないですね」と語った。
「このチームでの初めてのポイント獲得なので、ポジティブな1日だったと言っていいと思います。鈴鹿から一歩前進できました。チームが僕をサポートしてくれて、ここまで早くいい形で進歩できたことに感謝しています。ただ、まだまだうまくやれたことがたくさんあると思うので、完全に満足しているわけではありません。ただ、今やっていることを続けるだけです」
昨年のバーレーンGPはチームオーダーに反発して、インラップでチームメイトだったダニエル・リカルドを無理やりオーバーテイクした角田。あれから1年。今年のバーレーンGPでの角田は走らせるマシンが変わっていただけでなく、人間としても大きく成長していた。