グッドスマイル 初音ミク AMG、2年ぶりポールからの決勝は悔しい4位。それでも「楽しみな一年になりそう」と谷口
2025年4月15日(火)7時5分 AUTOSPORT web

4月13日に岡山国際サーキットで行われた2025スーパーGT第1戦『OKAYAMA GT 300km RACE』の決勝。GT300クラスのポールポジションからスタートした谷口信輝/片岡龍也組の4号車グッドスマイル 初音ミク AMGは、展開を味方につけられず4位でレースを終えたが、ドライバーふたりは今季のパフォーマンスに自信を持っているようだ。
今季も抜群の人気を誇る谷口/片岡コンビ、名門RSファインのメンテナンス、メルセデスAMG GT3のパッケージを継続するGOODSMILE RACING & TeamUKYO。前日の予選では、ドライ路面のアタックバトルで片岡が自身にとって8年ぶり2度目、チーム2年ぶりのポールポジションを獲得する速さをみせた。
しかし、迎えた決勝はあいにくのウエットコンディション。さらに片岡が担当したスタートでは、直前のGT500クラスで多重クラッシュが発生してしまい、グッドスマイル 初音ミク AMGの歯車がわずかに狂い始める。
「いきなりGT500のクラッシュが起きてパーツが散乱しているのが見えました。なので『黄旗(イエローフラッグ)が出ているだろう』と思って少しスロー走行にしたら、アクシデント直後すぎて黄旗がまだ出ていなかったようです」と片岡は振り返る。
「散乱したパーツをかき分けるようにいったら、そこで777号車(2番手のD’station Vantage GT3)に抜かれてしまいました。そこで順位が入れ替わったのはしょうがないですけど、その後のタイヤの温まりはダンロップのほうが良さそうでしたね」
ただ、片岡は自身のタイヤが温まりD’station Vantage GT3に迫ると、21周目のパイパーコーナー進入でインに飛び込む。しかしここで片岡の駆るグッドスマイル 初音ミク AMGが姿勢をわずかに崩し、2台は接触。D’station Vantage GT3は堪えきれずスピン、コースアウトを喫してしまい、片岡にはドライブスルーペナルティが科された。
なぜ片岡はパイパーコーナーで姿勢を乱してしまったのか。それは単純なウエットコンディションだったからというわけではなく「ドリフトのタイヤラバーがものすごく付いていた(片岡)」という理由があった。
岡山国際サーキットではレースのみならず、フォーミュラ・ドリフト・ジャパンのドリフト競技も開催されているが、そのときはホームストレートから1コーナーを抜けると、ショートカットを使用してパイパーコーナーに出るコースレイアウトが使用されている。そのため、レースとは異なるドリフトで路面に付いたラバーグリップに、雨が加わることでさらに“滑りやすく”なっていた。
片岡は「そこでフロントのグリップがすっぽ抜けてしまい、ラインが膨らみ777号車に触れてしまいました。あのコーナーはめちゃくちゃ滑るので、僕も接触したときに『頼む、スピンしないで!』と思ったのですけどね。でも僕のミスですし、777号車にも悪いことをしてしまいました」
ただ、グッドスマイル 初音ミク AMGはペナルティを消化した後も実質6番手でレースに復帰することができ「ワンチャン上位に戻れそうな(片岡)」順位でレースを進める。そして46周目、他チームがルーティンピットでウエットタイヤを継続するなか、初音ミクAMGはスリックタイヤで名手谷口をコースに戻す。
悔しがる谷口「もしかしたら優勝できていたかもしれない」
その谷口は「スリックを履くタイミングとしては、おそらくあそこが“ベスト”でしたけど、ウチのクルマはどうにもなかなかタイヤが温まらなくて、ペースを上げることができませんでした。他のスリックを履いたクルマはバンバンとペースを上げているのに、ウチはいけないというね……」と、思わぬ苦戦を強いられたと語る。
「作戦はバッチリだったと思います。18号車(UPGARAGE AMG GT3)や26号車(ANEST IWATA RC F GT3)を見ると、僕たちもトップ争いをできるはずだったのに、謎にペースを上げることができませんでした。とにかくフロントとリヤがまったくノーグリップで、もうひたすら我慢して耐えて、温まったと思ったらセーフティカーやフルコースイエローでタイヤが冷えて、またグリップがなくなる苦しい展開でした」
谷口によると、ペースが上がらなかったのは他車と比べて内圧が低かったことが考えられるとのことだが、詳しくはこれから分析していくことになるという。実際、ほぼ同じタイミングでヨコハマタイヤのスリックを履いた同車種のUPGARAGE AMG GT3は終盤トップ争いを繰り広げているだけに、谷口の悔しさは大きい。
「どのチームにもタラレバはあるかと思いますけど、僕たちは『片岡のペナルティがなかったら』『他車と同じくらいのウォームアップで走ることができれば』というふたつがなかったら、優勝争いができたか、もしかしたら優勝できていたかもしれない」
この結果、グッドスマイル 初音ミク AMGはひさびさのポールポジションを活かすことができず4位フィニッシュとなった。ただ、両ドライバーともクルマのパフォーマンスには満足している様子で、谷口は「ちょっと悔しいですけど、今年は楽しみなシーズンになりそうです。次の富士は得意なコースのひとつ、というか唯一得意なコースなので、勝ちたいと思います」と気持ちを切り替えていた。
そして片岡も「最後にいろいろな混乱があったので4位で終えることができ“不幸中の幸い”でした。マシンはドライでもウエットでも悪くないので、今シーズンのパフォーマンスには期待できると思います。富士は、もちろん優勝をすごく意識して挑みたいサーキットなので、この良い流れを持って臨みます」と次戦での巻き返しを誓う。
ポールポジションから優勝を目指した初音ミクAMG。結果としては4位だったが、これは2017年優勝以来の最上位。2024年途中からHWAのエンジニアが加わり、以降上り調子にある。近年苦戦を強いられていた岡山国際サーキットで速さをみせただけに、得意とする次戦富士では、2022年第5戦以来となる3年ぶりの勝利を掴むグッドスマイル 初音ミク AMGの姿を見ることができるかもしれない。