木村武史、互いを良く知るケッセルから7回目のル・マン24時間に挑む。目指すは自己最高位更新

2025年4月18日(金)17時53分 AUTOSPORT web


 2025年も6月6〜15日にフランスのサルト・サーキットで開催されるWEC世界耐久選手権第4戦・第93回ル・マン24時間耐久レース。世界三大レースのひとつである伝統のル・マンにケッセル・レーシングから出場が決まった木村武史は、7回目の出場でLM-GT3クラスの過去最高位を目指している。


 木村は収益不動産を手がける株式会社ルーフの代表取締役社長を務めるかたわら、モータースポーツに情熱を燃やし、2018-19年のアジアン・ル・マン・シリーズ(AsLMS)では、自ら率いるCARGUY Racingのフェラーリを駆り4戦全勝。2019年にはル・マン24時間に初出場を果たした。



 ケイ・コッツォリーノ、コム・レドガーと組んで出場した2019年のル・マンでは、初めてのサルト・サーキットに適応しながら完走を果たしLM-GTE Amクラス5位でフィニッシュ。以降、コロナ禍の2020年、2021年も含めて6年連続の出場を果たしてきた。


 迎える2025年のル・マンにもケッセル・レーシングからの出場を決め、今年は7回目の挑戦となる。初挑戦時は「燃え尽きましたね」と満足していた木村だったが、ル・マンの魔力、そしていつもともにレースを戦っている妻の千春さんからの「世界一を目指して欲しい」という思いが木村の挑戦を続けさせている。



2019年ル・マン24時間 パレードに参加したカーガイ・レーシングの木村武史、ケイ・コッツォリーノ、コム・レドガー

●飽くなき挑戦がACOフィヨン会長にも認められる


 ただ木村の挑戦は、実はその初参戦となった2019年の5位が最上位。完走も3回のみで2022年がクラス12位、レクサスRC F GT3をドライブした2024年も10位と、なかなかひとケタ順位に食い込むことができないでいる。


「2018-19年のアジアン・ル・マン・シリーズで4連勝して、2019年は5位に入りましたよね。その時にかなり燃え尽きていたはずなのですが、そこから縁あって何度か続けて出場させていただきました。でもその度にリタイア続きで、ル・マンがいかに完走するのか大変であるかを痛感しましたね(苦笑)。結局最初のル・マンがいちばん結果が良かったんです」と木村は振り返った。


「最初が5位だったので『次は優勝かな』なんて思っていたのですが(笑)」という木村だが、そう簡単ではないのがル・マン。しかし、その飽くなき挑戦、そしてル・マン出場に近づくために戦ってきたWEC、ヨーロピアン・ル・マン・シリーズ(ELMS)でも速さをみせてきた。この活躍によりル・マン、そしてWECにおいて最も重要な人物からの言葉をもらうことができた。


「完走できないながらもル・マン24時間への参戦を6年続けていたら、ACO(フランス西部自動車クラブ)のピエール・フィヨン会長にも認めていただきました。またELMSでも実力としてはタイトルに近いところまでいけました」と木村。


「ELMSのときにフィヨン会長と会う機会があったので『ぜひル・マンに出場したい』旨をお伝えしたのですが、フィヨン会長からは『こうして会うのは初めてだけど、私は昔から貴方のことは良く知っているし、コロナ禍でも出場を続けてきたことに感謝している』という内容の話をいただきました」


 木村の挑戦はフィヨン会長にもしっかりと認識され、それもあってか、インビテーションというかたちで2025年のル・マン24時間にケッセル・レーシングから参戦することが決まった。



ヨーロピアン・ル・マン・シリーズを戦うケッセル・レーシングのフェラーリ296 GT3

●ケッセル・レーシングからル・マンに挑む理由


 気になるのは、2024年にレクサスRC F GT3で出場しながらも、ふたたびフェラーリ296 GT3を走らせるケッセル・レーシングに復帰した理由だ。これについて木村に聞くと、「まずベースとして、私がル・マンに出たいという希望があります。それをケッセルも、TOYOTA GAZOO Racingさんも理解してくれています」と説明した。


「昨年はケッセルがル・マンに出場できる見込みが弱かったのですが、WECをやればル・マンに出場できるので、私がTGRさんに声をかけて、うまく話がまとまったかたちです。一方で、ケッセルもル・マン出場を申請していたのですが、ブロンズドライバーが私ではなかったので、少し難しいところがあり、エントリーリストの次点扱いになっていました」


 木村はその後、ケッセルから「ACOはエントリーにあたってチームの体制はもちろん、ブロンズドライバーの顔ぶれも審査しているらしい」という情報を聞いた。もし木村がケッセル・レーシングのブロンズとして登録されていた場合、2024年にケッセルが出場できた可能性もあるという。


 結果的に木村はアコーディスASPのレクサスを駆りWEC世界耐久選手権、そしてル・マン24時間を戦うことになったが、2025年については先述のとおりインビテーションをうけたことから、ケッセル・レーシングでの出場を決めた。もともとケッセルはELMS、AsLMS(アジアン・ル・マン・シリーズ)もともに戦っている間柄。TGRとは良好な関係を保ちつつ、2025年については木村からTGRにケッセルからの参戦を伝え了承を得たという。



アジアン・ル・マン・シリーズを戦ったケッセル・レーシングのフェラーリ296 GT3

●乗り慣れたフェラーリで過去最高位目指す


 こうして臨む2025年のル・マン24時間について、エントリーリストには木村、ダニエル・セラのラインアップが記載されているが、これに加えキャスパー・スティーブンソンがシルバードライバーとして加わるという。


 2025年の目標について聞くと「フェラーリだと厳しいかもしれませんね」と木村は言うが、これには他車種を経験したからこその理由がある。


「フェラーリはコーナーが速いクルマなんですよね。昨年、レクサスは見てのとおりWECでは苦戦しましたが、ル・マンでは速かったですよね。やはりル・マンはストレートが速いクルマが有利なんです」


 とはいえ、やはり目標はこれまでの最高位である5位よりも上だ。「フェラーリは乗り慣れていますからね。自信がないかと言われると、自信はけっこうありますよ。表彰台は厳しいかもしれませんが、何もトラブルなく残ることができれば、5位くらいには入ってくることはできます。そこからの勝負になると思います」と意気込んだ。


 今季のル・マンは、現在のところエントリーしている日本人ドライバーはわずか4名。LMGT3クラスはゴールドとして参戦する佐藤万璃音と、ブロンズの木村しかいない。現在もル・マン24時間出場を目指すジェントルマンドライバーは大勢いるが、7年連続出場を決めた木村の存在は今後の日本人ジェントルマンにとっても参考になりそうだ。


「私が開拓者みたいな感じになっているかもしれません。コネとかがなくても、なんとかなることは示せたような気もします」

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