湘南ベルマーレ、悪夢の7戦勝ちなし。良策を手放し神戸に敗北【J1リーグ2024】

2024年4月23日(火)18時0分 FOOTBALL TRIBE

ルキアン(左)髙橋直也(右)写真:Getty Images

2024明治安田J1リーグ第9節の計9試合が、4月20日と21日に各地で行われた。湘南ベルマーレは20日、本拠地レモンガススタジアム平塚でヴィッセル神戸と対戦。最終スコア0-1で敗れている。


直近のJ1リーグ7試合勝ちなしと、不振に喘いでいる湘南。2024シーズン同リーグ全20クラブのなかで唯一クリーンシート(無失点試合)を達成できておらず、総失点数も第9節消化時点で17にまで膨れ上がるなど、不安定な戦いが続いている。


J2リーグ降格圏の18位に沈んでいる湘南が直ちに改善すべきことは何か。ここでは第9節神戸戦を振り返るとともに、この点について論評していく。




湘南ベルマーレvsヴィッセル神戸、先発メンバー

攻撃クオリティーの差が浮き彫りに


両軍ともに[4-4-2]の基本布陣でスタートしたこの試合。GKや最終ラインからのロングパスで、相手のハイプレス(前線からの守備)を回避しようとする戦い方も共通しており、まさに似た者同士の対戦となった。


基本戦術は似ていたものの、キックオフ直後から湘南と神戸の攻撃クオリティーの差が顕著に表れる。湘南はFWルキアンへのロングパスを攻撃の初手としていたが、ボールの落下地点が相手センターバック手前やその背後になることが多かったため、2次攻撃に繋がらず。対する神戸は相手サイドバック近辺やその背後へロングパスを送っており、これが効果的だった。


キックオフ直後からの両軍の攻防を見れば、この様子が手に取るようにわかるだろう。前半2分、湘南MF池田昌生が自陣右サイドからロングボールを送るも、センターサークル付近で待ち構えていたルキアンへのこのパスは神戸DF山川哲史(センターバック)に阻まれて繋がらず。ゆえに湘南の攻撃が単発に終わった。


ホームチームとは対照的に、神戸陣営は前半3分にGK前川黛也が湘南DF畑大雅(左サイドバック)の背後へロングパスを送る。この直後の畑とMF茨田陽生のクリアボールを回収し2次攻撃に繋げたほか、同4分には前川のロングパスに反応したFW武藤嘉紀(右サイドハーフ)が畑の背後を突く。これにより神戸はチャンスを迎えた。


ロングパスが相手センターバックの背後に落ちたとしても、このスペースは相手チームのGKが飛び出して対応しやすい。また、ロングパスが相手センターバック手前に落ちてこれを弾き返された場合、このボールがそのまま相手チームの速攻や中央突破に繋がりかねない。この試合で湘南が陥った現象はまさにこれで、簡単にボールを失っては神戸の攻撃を浴びていた。


このため、ロングパスの送り先は相手にボールが渡ったとしても速攻に直結しにくく、相手GKとしても飛び出しづらいサイドバックの背後に設定するのが得策と言える。相手サイドバックの体の向きを変え、楽な体勢でクリアできないようなロングパスを攻撃の初手とする。これと同時にボールサイドへ人を集結させ、回収したボールを自分たちの速攻に繋げる。試合全体を通じ、この構図を神戸のほうが多く作れていた。




髙橋直也 写真:Getty Images

突き詰められなかった攻撃の初手


後半に決定機を逃し続けた点も然ることながら、湘南の真の敗因は、攻撃の初手となるロングパスの送り先に工夫が見られなかったことだと筆者は考える。この問題は第1節川崎フロンターレ戦で既に生じており、第2節京都サンガ戦以降は相手サイドバック付近へのロングパスが増えていたが、前節までできていた良い攻撃を今節は手放してしまった。


迎えた後半アディショナルタイム、湘南は相手のコーナーキックを凌ぎ、DF髙橋直也がルキアンへ縦パスを送ったものの、これを神戸陣営にカットされカウンターを浴びる。その後途中出場の神戸FW大迫勇也にボールが渡ると、同選手のラストパスを武藤に押し込まれてしまった。


湘南が喫したこの失点は、髙橋が神戸DF初瀬亮やMF山口蛍の背後ではなく、ルキアンの足下へパスを送ってしまったことに起因する。パスの出し手も受け手も、まずは相手サイドバックの背後を狙う。この原則がチーム内に浸透していれば、今回のアディショナルタイム被弾は防げたはず。詰めの甘い攻撃プランが最悪の結果に繋がってしまった。


一度改善されたはずの問題点が、試合を重ねるごとに悪い状態へ戻る。幾多のJ2リーグ降格危機を乗り越え、2018年よりJ1に在籍し続けている湘南だが、この悪癖を断たなければ今季こそ降格の憂き目に遭うだろう。


ルキアン 写真:Getty Images

不安定だった湘南のラインコントロール


湘南は攻撃面のみならず、守備面でも詰めの甘さを露呈。キックオフ直後から最終ライン背後のケアが緩慢で、ここを神戸陣営に度々突かれていた。


神戸の基本的な攻撃配置は、DF酒井高徳(右サイドバック)が高い位置をとり、4バックの残り3人で一時的に3バックを作るというもの。これにより神戸3バックと湘南2トップで3対2の構図が生まれ、ゆえにホームチームとしてはハイプレスを仕掛けづらい展開だったのは確かだが、そうであるならばボール保持者の顔が上がった瞬間に最終ラインを下げることを徹底すべきだった。


この湘南の問題点が浮き彫りになったのが、前半13分の神戸の攻撃シーン。この場面では神戸DF初瀬が自陣からロングパスを繰り出したが、同選手に寄せる湘南の選手はおらず。これに加え、ボール保持者である初瀬の顔が上がっているにも関わらず湘南の最終ラインが高かったため、ロングパスで呆気なく背後を突かれてしまっている。パスの出どころと落下地点、湘南はこのどちらもケアできていなかった。この問題が改善されない限り、クリーンシート未だなしという不名誉な記録が今後も続くだろう。

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