スカウトと勘違いされまさかの“大歓迎”…また見たいドミニカンの笑顔

2025年4月23日(水)16時0分 スポーツ報知

◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 片言のスペイン語で「トゥーリスモ!(旅行です!)」と何度も言った。しかし、私の懸命の訴えもむなしく、男性は笑みを浮かべたまま、信じようとしない。約10年前、ドミニカ共和国を一人旅で訪れた時の出来事である。

 首都サントドミンゴには、米メジャーリーグ傘下のアカデミー施設がいくつもある。そのうちのひとつで高校生年代の野球を眺めていた私に、関係者とおぼしき男性がメンバー表を持ってきた。しばらくたつと、今度は天然マンゴージュース、バナナ、葉巻を差し出してきた。

 くたびれたTシャツからポロシャツに着替え、名刺を片手に再び現れた男性を見た時に、ようやく気づいた。どうやら私を、お忍びで訪れた日本人スカウトと勘違いしている。これは申し訳ないとわびたくて、冒頭の展開となった。(私の8度目くらいの訴えで)状況を理解し「ビッグマネーを逃した!」と笑っていた。

 ドミニカンはとにかく陽気で、社交的で、生きているだけで幸せだ、みたいな顔で日々を過ごしている。街を1キロ歩けば、10人に話しかけられる。「ここを一人で歩くと危ないぜ」と、軽トラの荷台に乗せてくれたホセさんとは、今でもSNSで交流がある。

 ドミニカ共和国で8日に発生した屋根崩落事故は、死者が200人を超えたと伝えられている。中日などで活躍したトニ・ブランコさんが亡くなったことで日本にも広く知られることになった。

 ニュースで目にする光景は、私が知るドミニカ共和国ではない。皆が悲痛の表情を浮かべ、絶望感が伝わってくる。温かくて、柔和で、太陽のような国に、再び笑顔が戻ることを願っている。(サッカー担当・岡島 智哉)

 ◆岡島 智哉(おかじま・ともや) 2016年入社。サッカー担当。入社前に世界を放浪。愛用したスペイン語は「シン・トマテ」(トマト抜きで)

スポーツ報知

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