「撃たれてもいい覚悟」で乗り込んだラスベガス ボクシング界36年ぶりの挑戦が実現した舞台裏

2025年4月26日(土)6時0分 スポーツ報知

自身のポスターの前でファイティングポーズを決める佐々木(カメラ・竹松 明季)

 WBO世界ウエルター級2位の佐々木尽(じん、23)=八王子中屋=が、6月19日に東京・大田区総合体育館で同級王者ブライアン・ノーマン・ジュニア(24)=米国=に挑戦することが25日、横浜市内のホテルで発表された。勝てば日本人初の同級世界王者となる佐々木は「勝算はめちゃめちゃある」と歴史的快挙に向けて、自信をみなぎらせた。日本人の同級での世界挑戦は16年ぶり6度目(5人目)、国内での挑戦は36年ぶり3度目となる。

 「日本の歴史を変えるために生まれてきました」—。開口一番の佐々木節だった。新調した黒地に白ストライプのオーダースーツに身を包み「夢のよう。人生の中で2番目に幸せ。人生を懸けて挑む」と難攻不落のウエルター級世界王座に挑む決意を語った。「やっぱり1番目は、母のおなかから生まれることに気合を入れてきたんで。ただ、この試合に勝って歴史を変えるために生まれてきたんだと分かった」と瞳をぎらつかせた。

 3月に米ラスベガスでノーマンの初防衛戦を視察した。3回TKOで快勝した王者に「撃たれてもいい覚悟」で紙に記した「挑戦状」を手渡し、対戦を直談判した。「ノーマンはスピード、パワー、技術、全てそろっていて本当に強い」と評価しながらも、「“ノー・マン”だけに、人間をやめてるのかな、とも思った。今回は宇宙人対決。日本代表として絶対に勝ちたい」と会見の席で真顔で話した。

 日本ボクシング史上、ミニマム級からミドル級までの13階級で唯一、ウエルター級だけ世界王者が誕生していない。ライト級と並び、全階級の中で世界的に最も層が厚い階級だ。興行を主催する大橋ジムの大橋秀行会長(60)も「勝つことはもちろん、挑戦すら難しい」と話す階級に日本人選手は過去5度挑戦し、いずれもはね返されてきた。

 それでも、佐々木は「勝算はめちゃめちゃある」と断言する。ノーマンとは夢の中で何度も対戦。「洋楽で入場して、どんどん目が真っ赤に、怪物みたいになっていく」王者に対して「1、2ラウンドで最初にダウンを取られて、自分が取り返して、相手が立ってきたところで起きた」という。「自分の理想は結構それかも。KOしか考えていない。盛り上げてなんぼなので、1回からガンガンいきます」と宣言。最後は決めぜりふとともに右拳を力強く突き出した。「待ってろ世界!」—。歴史の扉をこじ開ける。(勝田 成紀)

 〇…デビューから3戦連続KO勝利中の「ハマのタイソン」こと田中空(23)=大橋=が、4戦目で東洋太平洋ウエルター級王座決定戦に臨む。同級8位の田中は、同級4位・小畑武尊(26)=ダッシュ東保=と対戦。佐々木が返上して空位となった王座に挑む田中は「早い段階でいただけたチャンスを無駄にしないようにしたい。自分も世界を目指している」と決意を述べた。

 ◆佐々木 尽(ささき・じん)2001年7月28日、東京・八王子市生まれ。23歳。中学1年で八王子中屋ジムに入門しボクシングを始める。アマチュア戦績は1勝3敗。18年8月にプロデビュー。20年12月、日本スーパーライト級ユース王座獲得。23年1月、WBOアジアパシフィック・ウエルター級王座を獲得。24年5月、東洋太平洋同級王座決定戦を制し、アジア2冠王者となる(現在は返上)。身長174センチの右ボクサーファイター。弟・革もプロボクサー。

スポーツ報知

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