スケボーもアイドルも若手は急成長、ベテランの背中は遠くても諦められないアイドルスケーターの決意…清司麗菜の#Skatelife
2025年5月2日(金)12時0分 読売新聞
スケートボードを練習する清司さん(Flora提供)
NGT48の清司麗菜さんは、スケボーを愛するアイドル。スケボー界にもアイドル界にも有望な若手が、次から次へと現れてきますが、活動10年目を迎えている清司さんは、若手スケーターやベテランアイドルに触発され、ある決意を固めたのだとか。「清司麗菜の#SkateLife〜continuity180〜」の第32回です。
スケートボードの選手は若い。パリ五輪の女子ストリートで優勝した吉沢恋選手は当時、14歳だったし、この4月に行われた全国から国内トップ級の選手が集まる「日本オープン・ストリート」の女子では13歳の松本雪聖選手が優勝した。
スケートボードシーン全体を見渡せば、男子は堀米雄斗選手や白井空良選手など20代の「ベテラン」選手たちが世界のトップレベルで活躍しているけれど、足元では若い選手たちが着々と育っている。でも、それって「トップ戦線」の話だけじゃない。
4月、私が生活している新潟市はまだまだ寒かったけれど、それでもパークには多くの人が見られた。中にいた、中学生の少年。彼は今から4年ほど前、私がスケートボードを始めた時期に、一緒に始めたスケーターだった。
久しぶりに再会した彼は、まるで別人のように上達していた。聞けば、毎日のようにパークに通っているといい、セクションには怖いものなしで挑んでいくし、この日はヒールフリップ系のトリックを練習していた。出会った頃は、まだパークのすみっこでモジモジしていた男の子。むしろ、当時は私の方が乗れていた。もちろん、彼は学校に通っている子どもで、私は社会人。スケートボードにかけられる時間も大きく違うのだけれど、こうまで一気に追い抜かされると……。
練習に行ったその日は強風にあおられ、屋外のパークで滑るのがどうしても怖かった。得意のフロントボード・スライドもレールセクションに⼊る前に完全にビビってしまう。じゃあ、屋内に移動だ!と切り替えたのもつかの間、スノーボードのハーフパイプみたいなUの字のコース「ランプ」の練習をしていると、開始2分で思いっきり骨盤を打った。はい、終了。あまりの痛さ、そして襲い来る恐怖心。
久しぶりに顔を合わせた仲間たちとおしゃべりタイムに突入してしまう。
若い世代の勢い、ももクロのすごみ
若い世代がどんどん前に来ているのは、スケボー界だけじゃない。私たち、アイドルの世界もそうだ。NGT48も今年10年目を迎え、残っている1期生も私と西潟茉莉奈ちゃんの2人だけ。今年に入ってからは5期生が加入してきた。
先日、シングルの選抜発表があった。AKB48グループには「選抜」という制度があって、選ばれたメンバーは表題曲を歌い、CDジャケットに写れるのは選抜メンバーだけ。私は選抜メンバーに選んでいただいたのだけれど、半分以上が3期生と4期研究生。まさに新生NGT48だ。
まだ加入してまもない研究生が選抜メンバーに入ったことはとてもすごいこと。NGT48は、新しいアイドルグループに変化しようとしている。心が躍る。反面、選抜入りできなかったメンバーの悔しい気持ちは痛いくらい分かる。だけど、つらい思いをした分だけ成長できることも知っている。だから、もう⼀度前を向いて頑張ってほしいと思うのだ。でも、なんて声をかけていいのか分からず……なかなか話ができなかった。
そして、4月13日には、新潟県新発田市で、ももいろクローバーZさんのライブ「ももクロ春の一大事」に出演させていただいた。いや、ほんとうにももクロさんはすごかった。お顔は小さいし、スタイルも抜群に良くて、肌はきれいで、芸能人オーラがすごかった。そして何より優しいお人柄の持ち主。ファンになりました。
当日は、新発田市で見たこともない人の数が集まっていた。動員数は1万2000人以上。今のNGT48には現実味のない数だ。
この日は、NGT48の「Maxとき315号」をももクロさんとコラボさせていただき、そのプロ意識の高さに驚いた。4人体制のももクロさんは、「大人数のフォーメーションに慣れていない」という。でも、前日のリハーサルの時には完璧にフリが入っていて、1、2回確認しただけで完璧にこなす。
活動15年、しかもアイドル界でトップを走り続けるすごみを感じたなぁ。
アイドル10年目の私は、ももクロさんに圧倒され、選抜に入れなかった後輩にかける言葉も分からない。スケートボードでは、中学生スケーターに追い抜かれて、「若者はすごいなぁ」とか言っている間に骨盤を打って戦意喪失してしまう。
もう一回走ると決めたのは…
4月19日。そんな私も24歳の誕生日を迎えた。この日行われた公演では「生誕祭」が開催されて、多くのファンの人にお祝いしてもらった。スピーチでは、「もう一回センターに立ちたい」と宣言した。
私が初めてセンターに立ったのは、テレビのバラエティ番組から選ばれた選抜だ。シングル「世界の人へ」に収録されている「泣きべそかくまで」という楽曲でのこと。NGT48の再スタートになった「夢を死なせるわけにいかない」公演でもセンターに立ったことがある。でも、そこからずいぶんセンターからは遠ざかっている。
みんなも、もしかしたらあのときに本気で目指していたら、たどり着けた場所なんじゃないか——って思うこと、ない? 振り返った時に、後悔がいっぱい出てきて、いても⽴ってもいられなくなるあの感情だ。
もう24歳。いつアイドルを卒業する日が来るかも分からないし、アイドルでいられるうちに、目標をファンの皆さんに届くように言葉にしたいと思った。
スケボーもアイドルも若い世代はどんどん突き上げてくる。スケボーでいえば堀米選手、白井選手、アイドルでいえばももクロさんのようなベテランたちはトップに立っている。その背中は遠い。
私には、もう若い世代の勢いはないかもしれないし、トップの人たちには追いつけないかもしれない。でも、できないことを数えていたら、また後悔が一つ増えるだけだから。スケボーもアイドルも、もう一回走る。最後の時がくるまで。
プロフィル
清司麗菜(せいじ・れいな)
NGT48の1期生。埼玉県出身。「バイトAKB」として2014年にアイドルのキャリアをスタートさせ、2016年にNGT48に加入。全国スケートボード施設連絡協議会アンバサダー。趣味はスケボーのほか、歌うこと、筋トレ。Instagramは「@reinaseiji」、X(旧Twitter)は「@official_seiji」