“ゴルフ界のアイドル”菅沼菜々が復活優勝!「ファンにパワーもらい頑張んなきゃと思えた」
2025年5月4日(日)17時32分 スポーツニッポン
◇女子ゴルフツアー パナソニック・オープン最終日(2025年5月4日 千葉県 浜野GC=6751ヤード、パー72)
“ゴルフ界のアイドル”が復活優勝を飾った。首位から出た菅沼菜々(25=あいおいニッセイ同和損保)が5バーディー、2ボギーの69で回り、通算10アンダーで逃げ切り、23年「NOBUTA GROUP マスターズGCレディース」以来2年ぶりのツアー3勝目を挙げた。
苦しんだ1年分の思いを込めたアプローチだった。1打リードで迎えた18番パー3。ティーショットはグリーン左奥へ。ピンまで23ヤード。球は深いラフにすっぽりと埋まり、下りの傾斜がかかる難しいラインだった。「勝っても負けても後悔がないように、練習してきた分のアプローチを緩まず、しっかり打つことに集中した」。覚悟を決めた菅沼は56度のウエッジで40センチに寄せた。
「パーパットを打つ前に去年のつらかったことを思い出し、泣きそうになった」。少し感情的になったが“ゴルフ界のアイドル”は勝利の瞬間を笑顔で迎えた。短いウイニングパットを沈めると、両手を挙げてファンの歓声に応えた。
8番パー3で同組の蛭田がホールインワンを達成。首位の座を奪われたが、続く9番パー5で第3打を50センチにつけるバーディーを奪い、一度手放した流れを引き戻した。
後半は11番で5メートル、12番で8メートルのパットを入れて連続バーディー。14番でも3メートルにつけてリードを広げた。17番で3パットを喫して、1打差に迫られたものの、トップでホールアウトした。
23年に初優勝を含む2勝を挙げた。さらなる飛躍を期して臨んだ昨季、右膝の負傷をきっかけに不振に陥った。「ティーショットは曲がり、パットは入らない。全部がうまくいかなかったので、ゴルフ場に来ることも嫌になった」。優勝争いに絡めずシードを喪失し、11月の最終予選会(QT)でも103人中102位に終わった。「QTもボロボロだったので、ゴルフを好きになり、またやりたいと思うまではクラブを握らないと決めた」。精神的にも追い込まれて、ゴルフから離れることを決断した。
年明け1月19日、ファンミーティングを開催。多くのファンの前で歌を歌い、励ましの言葉をもらった。「ファンの方にパワーをいただいて、今年も頑張んなきゃと思えたので練習を再開した」。1カ月半の空白期間を経て再びクラブを握った。
菅沼は“ゴルフ界のアイドル”を目指し、コース以外でファンとの交流やイベントを行ってきた。インスタグラムのフォロワーは8万人以上。今オフには臼井麗華とアイドルユニット「Chell7」(ちぇるなな)を結成し、2月にライブを開催した。また今月2日には初のデジタル写真集「Nana’s moment」を発売した。
成績が振るわなかった昨年はアイドル活動を批判する声も耳に届いていた。それでも「私は頑張るだけ頑張っていた。成績はついてこなかったけど、ゴルフを広めたいし、自分ができることはしたいので発進していた」。意志を貫いて大切にしてきたファンの力に後押しされ、ゴルフに戻ることができた。
「応援が力になるし、私のファンにはゴルフを知らない方もいるので、そういう方にもゴルフの良さが広まったらいい。本当にありがたい」と感謝の気持ちを言葉にした。
昨年11月から森守洋コーチに師事し、ショットもパットも、調子が良かった23年の状態に戻す作業を行ってきた。父・真一さん(56)が編集した動画を見ながらアドレスや体の動きを確認し、ショットはクラブがインサイドから下りてくる悪癖の直し、パットは球に順回転を掛けるような打ち方に戻すよう修正に努めてきた。
今季は前戦まで3試合中2試合で予選落ちと結果は出なかったが、前週男子ツアー前澤杯に参戦し、4日間、森コーチに付きっきりで指導を受けてスイングが改善。前夜もスイング動画を送り「これなら曲がらないから信じてやっておいで」と太鼓判をもらって最終ラウンドに臨んだ。
今季4戦目での優勝に「こんなに早く復活できるとは思っていなかった」と漏らした。昨季唯一トップ10(9位)に入った今季国内メジャー初戦ワールド・サロンパス杯(8日開幕、茨城GC)の出場権も手にした。
「プロになってずっと出ている試合だし、茨城GCは凄く好きなコース。昨年奇跡の9位になった思い出もあるので頑張りたい」とメジャーのビッグタイトル獲得への意欲もにじませた。