【内田雅也の追球】普通に守り快勝・快挙
2025年5月7日(水)8時0分 スポーツニッポン
◇セ・リーグ 阪神7—1巨人(2025年5月6日 東京D)
7—1の大勝だった。序盤3回までで6—0と大差がついたのは巨人守備陣の乱れに乗じ、阪神打線が活発に打ったからである。巨人のミスがなければ、ここまでの大量点は望めなかった。
1回表は無死一塁から中野拓夢の三塁前送りバントに三塁手・浦田俊輔の一塁送球が乱れ、中野と一塁手・岡本和真が交錯した。岡本は負傷し退場となった。この間に一塁走者・近本光司は二塁から三塁を陥れたのだ。
1死二塁と1死三塁では打者心理が違う。森下翔太は「外飛(犠飛)でも1点」という楽な気分になれたろう。左前打して先取点をあげた。
さらに2死後の左飛を左翼手・長野久義が落球した。ライナー性の打球で両手で捕りにいきはじいた。直後に小幡竜平が右翼線二塁打して余分に1点を追加できた。
3回表は先頭、小幡の投ゴロを投手・井上温大が一塁悪送球。2死後に近本が三塁打した。
8回表の1点も吉川尚輝の本塁悪送球。巨人は7失点中5点が失策絡みの非自責点だった。
逆に言えば、阪神はよく守った。いや、普通に守っていた。監督・藤川球児がテーマに掲げる「凡事徹底」である。
「ずっと言ってきていることですが、取れるアウトを確実に取ってくれている」と総合コーチ・藤本敦士は言った。そう普通が一番なのである。
目立つ好守もあった。プロ初スタメンで左翼に入った中川勇斗が左翼前飛球をダイビング好捕(2回裏)、左翼線邪飛をスライディング好捕(3回裏)して見せた。本来は捕手で打撃を買われての急造外野手だが、十分過ぎる守備を見せた。
中野はライナー性ハーフバウンドや一、二塁間のゴロを難なくさばき、森下は好送球で刺し、途中から二塁に入った熊谷敬宥はキャンバス寄りを美技で仕留めた。
実は、守備成績を見直してみて驚いた。阪神は5日現在、チーム守備率9割9分1厘でリーグ最高。失策数11も中日と並んでリーグ最少である。
屋外で風も吹き、土や天然芝で不規則バウンドもある甲子園を本拠地とするチームが最高守備率とは快挙と言える。
「え、そうなんですか!?」と一瞬驚いた藤本だが、実は知っていたようだ。「まだまだ先は長いので、これを続けていきたいですね」。もちろん一寸先は闇の世界だが、安定した守備力があれば、大崩れすることもないだろう。 =敬称略=
(編集委員)