法大OBの山本浩二さん「めちゃくちゃ鍛えられた」野手転向で開かれた強打者への道 レジェンド始球式は「0点」
2025年5月11日(日)11時34分 スポーツ報知
レジェンド始球式に登板した法大OBの山本浩二さん(カメラ・加藤 弘士)
◆東京六大学野球春季リーグ戦 第5週第2日▽東大—法大(11日・神宮)
法大OBで、広島の強打者として「ミスター赤ヘル」の名で親しまれた山本浩二さん(78)が東京六大学野球連盟の創設100周年を記念するレジェンド始球式に登場。両校のスタンドからは大きな拍手が注がれた。
投げた瞬間、ため息が漏れた。「あ〜っ!」。狙ったノーバウンド投球はならず、浩二さんは悔しさをにじませた。広島時代の永久欠番となった「8」を背に、「HOSEI」のユニホームで神宮に帰ってきた。報道陣の「お疲れさまでした」とのねぎらいに、「疲れてないよ!」と笑い、こう続けた。
「届かないのよ。体が言うことをきかないの。本当はノーバンで投げたかったよ。自己採点? 0点だね」
野球界では無名だった広島の県立校・廿日市(はつかいち)から投手として法大に入学。だが当時の松永怜一監督から打者としての才能を見いだされ、野手に転向した。
「神宮のマウンドで投げたことはない。新人戦では田淵(幸一)とバッテリーを組んで東大戦に先発したんだけど、東大球場だった。田淵がまっすぐのサインしか出さない。当然、打たれてね。松永監督が『まっすぐしか投げさせるな』と。その時から、野手転向は何となく決まっていたみたい(笑)。後から松永さんに聞いたら、田淵の前後を打つ打者がほしいと。それで僕と富田(勝)に白羽の矢が立ったんだ」
松永監督と言えばノックが有名。通常の練習を終えた後、内野手の富田さんと外野手の浩二さんには特訓が課された。日没になるとボールに石灰をまぶし、ノックは続いた。
「めちゃくちゃ鍛えられた。苦しさしかないね。富田も同じように鍛えられていたから、へばるわけにはいかない。そういう意味では懐かしいね」
打棒は開花。在学中に3度のリーグ優勝、2度のベストナインに輝いた。1968年ドラフト1位で広島入団。日本プロ野球史に残る強打者として、その名は刻まれている。
試合前の法大ナインには「全国のOBがみんな気にしているんだぞ」「4年間を大切にしてください」とエールを送った。そんな浩二さんにとって、学生野球の魅力とは何だろうか。
「一生懸命にやっている姿だな。ミスもいっぱいしたよ。でも一生懸命、ガムシャラにやった。よき仲間も持てた。苦しかったけど、いい思い出だよね」。原点の地で、青春時代に思いを馳せた。(加藤 弘士)