「大関以上になる予感がする力士」八角理事長が高評価のウクライナ出身21歳が6連勝 名力士たちを参考に「最後に攻められて良かった」
2025年5月18日(日)5時0分 スポーツ報知
遠藤(右)を押し出しで破った安青錦(カメラ・清水 武)
◆大相撲 ▽夏場所7日目(17日、東京・両国国技館)
東前頭9枚目・安青錦が、同11枚目・遠藤を押し出し、2日目から6連勝で1敗をキープした。新入幕だった先場所は11勝を挙げて敢闘賞に輝いたウクライナ出身の21歳が、今場所も存在感を放っている。綱取りの大関・大の里は東前頭4枚目・尊富士をはたき込み7連勝。横綱・豊昇龍は西前頭3枚目・平戸海を小手投げで退けて5勝目。全勝は大の里と平幕の伯桜鵬の2人、1敗で小結・若隆景と安青錦が追う。
安青錦の厳しい攻めに国技館内がどよめいた。「有名なので、テレビで見たことがあった」という34歳の遠藤との一番。立ち合いは頭で当たって、激しい押し合い。呼び込んで相手得意の左差しを許したが、胸を合わせる前に頭を密着させて前傾姿勢。小手で振ってきた相手の顎付近への強烈な右のど輪で、一気に土俵下へ押し出した。「完璧ではないが、最後に攻められて良かった」と振り返った。6連勝にも「思った通りの相撲ではない」と満足はしなかった。
名力士たちから学ぶ日々だ。部屋では師匠・安治川親方(元関脇・安美錦)が持つ過去の取組を収めたDVDを、食事の際などに見ている。この日、見せた右のど輪は元横綱・日馬富士を参考に、場所前の稽古場から挑戦。「まだしょっぱい(十分じゃない)。日馬富士関のように一気に出る相撲ではない。稽古するしかない」とさらに磨きをかけている。元横綱の3代目・若乃花のうまさを挙げ、「まねをするのは難しいが10%くらいでもできたら」と習得に意欲的だ。
また、しぶとく食い下がる取り口で「ピラニア」と呼ばれた元大関・旭国の土俵際の粘り。「F1相撲」と呼ばれた元関脇・琴錦(現朝日山親方)の速攻の突き押しも参考にしているという。「自分の持っていないものは欲しくなる」という貪欲な姿勢が快進撃につながっている。
八角理事長(元横綱・北勝海)も「大関以上になる予感がする力士。背筋が強いから起こすのは至難の業」と能力を高く評価。安青錦も「今いるところは目指しているところではない」と、三役昇進を目標に、さらなる高みを見据える。年6場所制となった1958年以降では最速(付け出しは除く)タイの初土俵から所要9場所での新入幕など快進撃を続ける。真摯(しんし)に相撲道に打ち込む21歳の逸材が、出世街道を突き進む。(大西 健太)
◆安青錦が参考にする4力士 いずれも大柄ではない。元大関・旭国は小柄だが気持ちのこもった相撲で「ピラニア」と呼ばれた。相手を研究する理論派で「相撲博士」とも。優勝はないが技能賞6回。元関脇で優勝2回の琴錦は鋭い立ち合いから「F1相撲」という愛称がついた。3代目・若乃花(元横綱)は巧みな技術が売りで優勝5回。元横綱・貴乃花は弟。モンゴル出身の元横綱・日馬富士は、右四つと鋭い立ち合いで優勝9回を果たした万能型。