韓国人高校生のメジャー移籍に見た“大谷翔平の影響力” 18歳が告白した母国プロ野球界への本音「より大きく成長できる」
2025年5月20日(火)5時40分 ココカラネクスト

レンジャーズ移籍を決めたキム・ソンジュンが告白したのは、大谷への「憧れ」だった。(C)Getty Images
いまや「球界の顔」となった大谷翔平(ドジャース)。現球界で唯一無二とされる投打二刀流であらゆる金字塔を打ち立ててきた偉才の影響力は、国際的な広まりを見せている。
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そんな日本人スターの影響力が現れた発表が世間を驚かせた。現地時間5月18日、レンジャーズは韓国の名門校である光州高に通うキム・ソンジュンとの契約を発表。契約金120万ドル(約1億7400万円)を締結した彼は他でもない大谷に強い憧れを抱き、二刀流でプレーを続けてきた青年だった。
現在18歳のキム・ソンジュンは、投手と遊撃手を兼務する二刀流戦士だ。185センチ、83キロの体格を持つ逸材で、今年は打者として11試合に出場し打率.333、1本塁打、8打点、4盗塁をマーク。さらに最速153キロを計測した投手としても8登板で2勝1敗、防御率3.24とまずまずの数字を残していた。
高校卒業後の来年1月にレンジャーズ傘下のマイナー球団で研鑽を積むというキム・ソンジュン。圧倒的なポテンシャルの高さから、母国のKBOリーグ球団からも垂涎の的となっていた。日刊紙『朝鮮日報』などによれば、実際に複数球団はドラフトでの上位指名を決めていたという。
国内でのプロ生活を歩めば、間違いなくプロとして輝かしいレールは用意される。しかし、「メジャーリーグで二刀流として成功したい」(会見での本人談)と確固たる覚悟を固めていた。そして「投打兼任が事実上不可能だった」とされるKBOではなく、“野球の本場”への道を切り開いた。
当然ながら、メジャーリーグでの二刀流成功は容易な道程ではない。大谷がそうであったように、周囲を圧倒する努力を求められる。ただ、KBO球団のLGツインズでスカウトを務めた経験を持つチョ・ユンチェ監督の支えもあって着実にステップアップしてきたキム・ソンジュンは「野球を一から勉強するつもりでいく」と語る。
そんなキム・ソンジュンの憧れは他でもない大谷だ。地元紙『光州日報』の取材で18歳の若武者は、レンジャーズと契約に至った背景を交えて、こう答えている。
「両親も最初は心配していた。ただ、レンジャーズとのミーティングを続けていく中で、信頼を得られた。今行けば、韓国でプレーするより大きく成長できると思う。大谷さんを見ると『漫画みたいだな』とは思う(笑)。ただ、他の選手より1つだけ多くプレーできるのは気持ちいいし、責任感を持ってやらないといけないと思う。
人よりも多く勉強して試合に臨みたい。投手としても打者としても、アメリカではフィジカルが重要になると思っている。フィジカルを鍛えればスピードも上がるし、パワーも上がるので、今はそこを一番気にしています。打者としてはコンタクトの部分でもっと努力しなければならない」
「韓国の高校性を獲得しようとするだけでも多くの課題がある」
無論、レンジャーズ内部の評価や期待は上々だ。獲得を進めた国際スカウトと選手育成を担当するハミルトン・ワイズ氏は、米紙『The Dallas Morning News』で「テキサスが追求する価値を持つ選手だ」と称賛している。
「韓国の高校性を獲得しようとするだけでも多くの課題がある。そこに二刀流の兼務が加わるとなるとより事情は複雑になる。だから、我々も内部で本当に多くの議論を交わした。ただ、最終的にゴーサインを出したのは、単純に能力だけの問題ではない。挑戦を受け入れる心構えがあるか、また厳しい状況でも立ち向かうことができるかどうかがポイントだった」
不可能を可能にしようと進路を決めたキム・ソンジュン。彼の言葉を聞き、思い出したのは、大谷が2023年のWBC制覇後に発した野球界への想いだ。
優勝の余韻が冷めやらぬ場でのインタビューで「日本の野球がますます注目されていくことになると思うが、この先に向けてどんな思いか」と問われた大谷は、こう論じたのだ。
「日本だけじゃなくて、韓国もそうですし台湾も中国も、その他の国も、もっともっと野球を大好きになってもらえるように、その一歩として優勝できたことがよかったなと思いますし、そうなってくれることを願っています」
強い者に憧れ、ひたむきな努力を重ねてきた大谷らしい言葉だった。
そして、彼が世界に向けて発信した想いは、世代を超えて韓国の野球少年にも波及した。キム・ソンジュンのレンジャーズ移籍は、間違いなく二刀流で歴史を作った大谷の影響によってもたらされたものだと言えるのではないだろうか。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]