大学時代の西武・渡部聖弥&中日・金丸夢斗から学び
2025年5月20日(火)16時0分 スポーツ報知
西武の渡部聖弥
◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」
アマチュア時代を追った選手が、夢の舞台で活躍するほどうれしいことはない。最近では、西武の渡部聖弥(大商大)がその一人だ。多くの取材機会に恵まれた昨年、最も印象的だったのは、6連覇を決めた4年秋のリーグ最終戦。0—1の9回無死一、二塁、渡部の送りバントがサヨナラ勝利のきっかけとなった。
以前、話を聞いて驚いたことがあった。「休みの日に家でゲームをしてたら、ふと『これって野球につながるのかな』って」。そう思い、体力や体のキレにつながるサイクリングやゴルフの打ちっ放しに行くという。大学4年間をここまで野球にささげ、通算119安打で連盟新記録にも王手をかけていた試合だった。その最後になるかもしれない打席で、渡部はチームプレーに徹し自らバントを選択。「記録は本当にどうでもよくて、勝つことだけを…」。その姿に鳥肌が立った。
渡部と同様に、昨年担当した中日の金丸夢斗(関大)も1軍デビューした。記憶にあるのは3年秋の立命大との3回戦。負ければ勝ち点を落とす一戦で、金丸は同点の9回裏に無死満塁を招いた。立命大のベンチでは選手が肩を組み応援。これは決まるだろうと思った。が、相変わらずのポーカーフェースで2者連続三振と右飛。その後に勝ち越し、10回を1失点完投、17奪三振で勝利投手となった。
ただ試合後、勝利したはずの金丸の目には涙があった。「(周りに)温かい言葉をかけてもらって…」。真っ先に感謝の言葉を口にした姿を含め、その後、私の中でこれに勝る試合はない。人は、大きなことを成し遂げた時より、人間性が垣間見えた瞬間の方が、最後に誰かの記憶に残るのだと思った。任せてもらえる仕事も増えてきた入社4年目。一度、立ち止まって、今の自分に映し出したい。(アマ野球担当・瀬川 楓花)
◆瀬川 楓花(せがわ・ふうか)2022年入社。関西のアマチュア野球を中心に取材。23、24年はゴルフも担当。