大の里、綱取り初挑戦で破竹の13連勝「古里能登からパワー」…全勝優勝「やってみたい」
2025年5月23日(金)23時6分 読売新聞
琴桜(手前)を攻める大の里(23日、両国国技館で)=安川純撮影
両国国技館で行われている大相撲夏場所は13日目の23日、大関大の里関(24)(石川県津幡町出身)が2場所連続優勝を決めた。綱取り初挑戦となる場所で初日から破竹の13連勝。第75代横綱への昇進を確実にした。
得意の右を差して大関琴桜関を寄り切ると、大歓声の中で表情を崩さずに土俵を下りた。「落ち着いていた。この一番にしっかり集中した」。支度部屋でも冷静な口ぶりは変わらなかった大の里関。重圧をものともしない見事な独走だった。
大関として初めての優勝を果たした春場所を終え、4月に春巡業で富山市を訪れた時のこと。新潟県で働く日体大相撲部時代の同級生、寺尾拓真さん(24)を呼び出して温泉に出かけた。たわいもない会話の後、寮のルームメートだった親友は「次は綱取りだろう。正直、どうなの」と問うと、大関は「そりゃあ、意識してないわけない。でも、一番ずつ勝っていくだけだから」と
夏場所初日の前夜には珍しくビデオ通話が寺尾さんにかかってきた。場所前に体調を崩し、調整の遅れが懸念された時期もあったが、大関はムードメーカーだった学生時代の口ぶりそのまま、まるで場所を楽しみにしているかのように「いつも通り頑張るよ」と語ったそうだ。寺尾さんは「プレッシャーを自分の力に変えられる人。プロでもそれを発揮し、本当に感慨深い」と快進撃を喜んだ。
4月の巡業では、能登半島地震で被災した石川県七尾市を訪れ、1年遅れの開催を待ちわびた地元ファンから「たくさんのパワーをもらった」と語っていた。今場所は身長1メートル92、幕内力士で一番重い191キロの巨体を生かし、圧倒的なパワーで白星を重ねた。優勝を決め、初土俵から所要13場所という「最速出世」の横綱昇進を引き寄せてもなお、先を見据えた。全勝優勝を「やってみたい気持ちがある」と大の里関。まだ圧勝劇は終わっていない。
被災者ら「勇気づけられた」
大の里関の出身地・石川県津幡町の町役場ではパブリックビューイングが開かれ、住民ら約350人が大一番を見守った。優勝が決まった瞬間、会場は大歓声に包まれ、住民らは総立ちに。津幡町の男性(68)は「危なげない勝ち方だった。町の星だ」と喜び、「(県出身で元横綱の)輪島関を超える大横綱になってほしい」と期待した。
大の里関の祖父・坪内勇さん(76)は能登半島地震で被災し、同県内灘町の仮設住宅で暮らしている。この日はテレビで観戦し、「優勝おめでとう。これからもけがをしないで頑張ってほしい」とコメントした。
被災地からも喜びの声が上がった。同県輪島市の朝市通り周辺の大規模な火災で自宅が焼失し、仮設住宅に暮らしている男性(68)は「果敢に挑む相撲にとても勇気づけられ、気持ちが前向きになった」と笑顔。地震で自宅が全壊した同県珠洲市の女性(68)は「ずっと大の里関の相撲を見ていたのでうれしい。今後も石川を盛り上げてほしい」と語った。