【ライターコラムfrom横浜FM】自分たちを「信じる力」が最高のエンターテインメントを生み出す
2018年7月28日(土)15時0分 サッカーキング
1試合平均2得点に迫る勢い(リーグトップの33得点)のオフェンス面は進境著しい。圧巻の8得点を記録した仙台戦ではポゼッションあり、カウンターあり、ミドルシュートあり、そしてセットプレーありと多彩なゴールパターンを披露。長年守備陣を支えてきた中澤佑二も「点を取れているのは進歩」とスタイルの変化を感じ取っている。FC東京戦でもルーキー山田康太のプロ初ゴールというトピックがあり、敗戦の中にも希望を見いだすことができた。
後半戦巻き返しのポイントは、言うまでもなく守備の安定だ。屈辱の5失点を喫した後、GK飯倉大樹は「ウチのウィークポイントをまんまと突かれた結果」とさばさばした表情で試合を振り返った。ボール保持で優位に立ちながら決定打が出ず、反対に手数をかけないカウンターでゴールに迫られる。FC東京戦はポゼッションを志向するチームにありがちな敗戦だった。
ただチーム全体に気落ちしている様子は見られず、メンタル面でのタフさが感じられる。ボランチの扇原貴宏が「今年の良いところはブレずに貫くところ」と言えば、飯倉は「チームとしてやるべきことは変わらないし、変えてはいけない。カウンターサッカーに戻すことはいつでもできる。成功は何かしらの犠牲の上にあるものだから」と語気を強めた。
現行のスタイルを推し進める上で最も怖いのは、選手たちがネガティブマインドになってプレーの部分でも前向きさを失うことだろう。アンジェ・ポステコグルー監督が「自分たちのサッカーを信じることから始まる」と言い続けてきたように、今こそ原点に立ち返り、信じる強さを見せなければいけない。
安定感に乏しい反面、すさまじい爆発力は秘めている。仙台戦のようなワンサイドゲームになればサッカーファンの耳目を集めるだけでなく、ライト層のファン獲得にもつながるだろう。それは夏のレジャーである花火大会やバーベキューに勝るとも劣らない最高のエンターテインメントになり得る。
今年のトリコロールには大きな可能性がある。目先の結果に一喜一憂し過ぎることなく、ファン・サポーターは胆力を持って残りのシーズンを楽しまなければいけない。
文=藤井雅彦