北米スバル、新開発のVB型『WRXラリーカー』を発表。来季2024年はパストラーナも戦線復帰へ

2023年8月4日(金)16時32分 AUTOSPORT web

 現地法人としてスバル・モータースポーツUSAを運営する北米スバルは、8月2日付で米国ラリー協会(American Rally Association/ARA)最高峰の”Open 4WD”クラスに投入する新開発のVB型『スバルWRXラリーカー』を発表。8月下旬開催のイベントでブランドン・セメナックのドライブにより180号車が実戦デビューを飾るほか、来季2024年からは同チームのエース的存在でもあるトラビス・パストラーナの復帰とフル参戦もアナウンスされている。


 高剛性化と低重心化を追求した最新のスバルグローバルプラットフォーム(SGP)を採用し、北米でも2022年初頭よりデビューを果たした瞬間から、長年のファクトリーパートナーであるバーモント・スポーツカー(VSC)によって初期設計が開始されたVB型WRXラリーカーは、この18カ月にわたって設計、製造、テストが続けられ、実態としてはVSCの長年にわたる開発の集大成として、現地ARA Open 4WDクラスの新たな技術規定に準拠したモデルに仕立てられた。


 そのため、パワートレインは先代からキャリーオーバーの上で最適化を受けた2.0リットル4気筒ボクサー(水平対向エンジン)を搭載。カスタムビルドのターボチャージャーとインタークーラーを備え、義務付けられた33mm径のリストリクターや最大ブースト圧の22psi(約1.52bar)などクラスの要件を満たしている。


 これにより最高出力は320PS、最大トルク380lb-ft.(約516Nm)を発生し、クロスレシオのサデフ製6速トランスミッションを介して4輪を駆動。車体側では完全にシーム溶接されたボディシェルとT45スチールで作られたFIA/USAC仕様のロールケージが組み込まれ、純正ガスタンクは容量82リッターのケブラーバッグに置き換えられる。


 その脚元を支えるスプリングとダンパーは、こちらもVSC設計のクロスメンバーやリンク、ハブ類と連携する“R53”と呼ばれるサスペンションを新しいシャシーに適応し、重量と効率の点で最適化された上で、ヨコハマタイヤ製15インチADVAN A053グラベル用ラリータイヤの性能を引き出し、よりハンドリングを洗練させている。


 そして一際目を引く外観ではカーボンファイバー製ワイドボディを採用。最新のARA規則を念頭に白紙からデザインされ、巨大なカーボンファイバー製リヤウイングとスバルの伝統的ラリーカーを彷彿とさせるカラーリングをまとう。

2.0リッター4気筒ボクサーは、最高出力320PS、最大トルク380lb-ft.(約516Nm)を発生する
サスペンションは、VSC設計のクロスメンバーやリンク、ハブ類と連携する”R53″と呼ばれるオリジナルに
この18カ月にわたって設計、製造、テストが続けられてきたVB型WRXラリーカーは、ARA Open 4WDクラスの新たな技術規定に準拠したモデルに仕立てられた
エース的存在でもあるトラビス・パストラーナは、今季2023年に向けては自身が立ち上げに関与した新生ナイトロクロスや、NASCARカップシリーズの『デイトナ500』参戦に注力するためARAでの活動を一時休止していた


■実戦投入は8月24〜25日の『オジブワ・フォレスツ・ラリー』


 前述の要素を含めたARA Open 4WD規定は、性能的にFIAのラリー2との類似性を感じさせるものでありながら、そのパフォーマンスはさらに上を行くとも言われており、安価に製造可能な点も含めて優れたコストパフォーマンスを誇る。


 今季はVA型のシングルカー体制でARAに挑み、2年連続のタイトルを獲得したセメナックは、8月24〜25日に開催される『オジブワ・フォレスツ・ラリー』でVB型WRXを実戦投入し、来季を見据えたデータ採りと信頼性向上を狙ったプログラムを進める。


「この新型モデルのリリースは、エキサイティングな未来をもたらすだろうね。プラットフォームは完全に再設計され、クルマの見た目も感触もよりダイナミックになった。ファンにとってさらに良いショーが見せられるだろうし、来季はトラビス(・パストラーナ)もチャンピオンシップに戻ってくるんだからね! 本当に楽しみだよ」


 そうセメナックが名前を挙げたパストラーナは、2022年まではエースとしてチームを牽引してきたが、今季2023年に向けては自身が立ち上げに関与した新生ナイトロクロス(旧NitroRX)や、NASCARカップシリーズの『デイトナ500』参戦に注力するためARAでの活動を一時休止していた。しかし来季からは、そのラリークロス活動でも実働部隊として協業するVSCとともに、このVB型の開発を進めていくことになる。


「2024年のARAラリー・チャンピオンシップ復帰が決まり、とても興奮している」と意気込みを語ったパストラーナ。「新しいスバルのプラットフォームは素晴らしく、2度のディフェンディングチャンピオンであるブランドン・セメナックとふたたび戦う機会は、とても楽しいものになるだろうね」


「ブランドンがチームに加わったとき、僕はベテランだった。でも来季は形勢が逆転するから、多くのことを学び、できればトップに返り咲きたいと思っている。このスポーツから離れてまだ1年しか経っていないが、多くのことが変わったし、新たな挑戦に向けた準備はできているよ」


 このVB型WRXラリーカーの披露に際し、北米スバルのYouTubeチャンネルでは全6話構成のミニシリーズ“Next Stage”の公開も予定。8月9日(水)のエピソード1以降、18カ月間にわたるラリーカー開発の舞台裏を包括的に紹介し、新しいクルマの設計、製造、テストのプロセスが明かされる。

VA型時代からNitroRX、そして新生『Nitrocross』と、パストラーナの愛機はVSCが担当してきた
最新のARA規則を念頭に白紙からデザインされ、巨大なカーボンファイバー製リアウイングとスバルの伝統的ラリーカーを彷彿とさせるカラーリングをまとう
Sparco ADV Prime競技用シートには、HANSデバイスや自己消火性ファブリックライナー、FIA承認のエネルギー吸収パッドが装備されている
「チームメイトがいると楽しいだけでなく、2台のクルマでより多くのことを学ぶことができ、プラットフォームの継続的な開発にとって重要」とブランドン・セメナック(右)

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