2スペック&ソフトタイヤの可能性を見せた塚越広大「2ピット戦略で行きたかった」

2017年8月20日(日)21時53分 AUTOSPORT web

 今回のスーパーフォーミュラ第4戦もてぎは、ピエール・ガスリー(TEAM MUGEN)の初優勝というトピックの他にも、いくつもの大きなトピックが見られた。その中でも、特に2スペックのタイヤで今後のスーパーフォーミュラの可能性を見せた塚越広大(REAL RACING)の2ピット作戦は、今回のレースのハイライトのひとつだった。


 スタートでエンジンストールしてしまい、15番手グリッドから最後尾まで落ちてしまった塚越。しかし、そこからの逆襲は1台だけ別カテゴリーのマシンかと思わせるような鋭い動きと回頭性で、1周1台のペースで前のマシンを抜き去っていった。コーナーを選ばすさまざまなラインからオーバーテイクして行くマシンの姿は、まさに人馬一体の生き物の動きのようだった


 塚越は11周目には19番手から8番手まで順位をアップ。7番手まで順位を上げて18周目にピットインし、コース上での別次元の挙動から燃料が軽いことは推測されたが、このピットインで履いていたソフトからソフトへとタイヤを交換したことで、2ストップ作戦であることが判明した。


「最初のスタートでエンジンストールしてしまって、せっかくの2ストップ作戦を台無しにしてしまった部分があるので。実際、2ストップにしたからといって抜けるかどうかは分からなかったんですけど、結構、抜くことはできました。でも、僕的には本当に、最初に大きなミスをしてしまったので……」と、見事なオーバーテイクを連発しながらも、レースを振り返る塚越の言葉は後悔ばかり。


 最初のピットインを終えてからも、塚越は次々とオーバーテイクを繰り返して順位をアップ。これまでオーバーテイクどころか、昨年はサイド・バイ・サイドにも至らなかったレース展開だっただけに、もてぎでここまで抜けることに、多くの方が驚いたはずだ。さらに、あらゆるコーナーで抜いていく塚越の多彩なオーバーテイク術に、会場中が興奮することになった。


「そういった意味では、良かったと思うんですけど、スタートに失敗があるので。スタートを抜きにしたら、いいレースだったと思います」と、それでもやはりスタートを悔やんではにかむ程度の塚越。


 そもそも、唯一となった2ストップ作戦はどのような経緯で選択されたのか。


「戦略は、いくつかプランがある中から選びました。他と一緒の戦略では抜いて前に行くのは難しいと思ったので、田坂(泰啓/エンジニア)さんのいくつかのプランの中から、僕の方で2ストップで行きたいとリクエストを出しました」


「天候も雨が降るかもしれなかったので、チームもギリギリまで2ストップをするのか迷っていたと思うんですけど、最後、ピットから離れてグリッドに向かうときにはガソリンの量を決めなければいけないので、その時に決まりました」と、その経緯を話す塚越。


 15番手スタートから、入賞までのあと一歩の9位でレースを終えたが、塚越はこの順位以上に、大きな存在感と、2スペックタイヤの可能性を示すことができた。


 金石勝智監督も、塚越のスタートの失敗よりも、その後のアグレッシブな走りを褒め称える。


「レース的には楽しんでいるだけじゃダメなんですけど、楽しいレースをお見せすることができたので、作戦も良かったのかなと。あの予選順位(15番手)からだと、何かしないと他と一緒のパターンで数珠つなぎの展開で終わってしまって、先がない。というところで、広大が2ストップで行きたいと」


「今回の2スペックのタイヤはソフトタイヤがきちんとタイム差があるので、戦略の幅が広がりますよね。もてぎであんなに抜けるんだって、多くの方に言ってもらえました。次はきちんと前からスタートして、面白いレースをしたいと思います」と、金石監督。


 塚越も、自分の決断を後押ししたチームに感謝を述べる。


「チームのみんなからはストールしたのは残念だけど、すごくレースが楽しかったと言ってもらえました。抜けなかったらこの作戦は終わりなので、そこは自分を信じてくれて、本当、田坂さんとチームが思い切ってこの戦略と採ってくれたお陰だと思います。このいい流れを次のオートポリスにもつなげていきたいと思います」


 今シーズンは昨年の2台体制から1台となり、チーム体制も変わったリアル・レーシング。開幕戦で6位になって以来、ここ2戦は惜しい展開が続いていたが、今回のもてぎ戦は今後の躍進のきっかけになりそうな印象的なレースとなった。


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