MotoGP譲りのV4エンジンを搭載したドゥカティ・パニガーレV4 Sの乗り味とは/市販車試乗レポート

2018年9月7日(金)19時38分 AUTOSPORT web

 MotoGPマシンの技術をふんだんに盛り込んだドゥカティの新型スーパースポーツ、Panigale V4(パニガーレV4)。ドゥカティ伝統のLツインからV型4気筒のエンジンに変わったパニガーレはどのような乗り味なのか。


 2017年の11月にイタリアのミラノで発表されたパニガーレV4。日本では2018年の5月から発売がスタートしている。このパニガーレV4には通常版に加え、MotoGPマシンに最も近い市販車と言われるパニガーレV4 Sとサーキット走行に特化したパニガーレV4 S Specialeの上位モデルが存在する。今回は、パニガーレV4 Sに試乗した。

ドゥカティ・パニガーレV4 SにはMotoGPマシンの技術がふんだんに盛り込まれている。


 パニガーレV4 Sの車両価格は税込みで328万円と決して安いとは言えない。しかし、数億円すると言われているMotoGPマシンの技術がふんだんに盛り込まれていることや、車両のデザインと仕上がり、装備されているパーツを見れば、その価格には十分納得できるはずだ。


 外観はスーパースポーツのなかでも個性的で、ひと目で“カッコいい”と思える美しさがある。リヤのテールは国産車と比べて非常にスリムで、どことなく色気も感じるから不思議だ。エキゾーストは車体下部に一体化している形で備わっている。車体にはタンデムステップもついており、二人乗りが可能だが、その際はシートカウルををタンデム用シートに変更する必要があるとのことだ。

外観はスーパースポーツのなかでも個性的で、ひと目で“カッコいい”と思える美しさがある。
リヤテールは空気を抜くザイン。テールランプもLEDとなっている。
タンデムするにはリヤのシートを取り換える必要がある。
 パニガーレV4最大の特徴といえる新型のV型4気筒エンジンは、最高出力214馬力、最大トルクは124N・m(12.6 kgm)を発揮する。MotoGPのフィードバックを受けたV4エンジンということで排気量は1000ccと思われる方も少なくないだろうが、パニガーレV4の排気量は1103ccとMotoGPマシンよりも103cc拡大されている。これは、一般道を走行するにあたり重要となる中速域のトルクを最大化し、低回転域でのトルクとパワーを向上させることが目的とのことだ。


 シート高は830mmとスーパースポーツのなかでは高めだ。しかし、車重は乾燥重量175kgと非常に軽く、跨っても足つき性に不安はなかった。

身長166cmの編集部スタッフがまたがると、つま先で立つ形に
つま先立ちでも車体が軽いため、支えるのに苦労はしなかったようだ


■新型V4はドゥカティの乗り味を残しつつ安定感が向上


 筆者は4気筒1000ccの国産スーパースポーツを所持しており、Lツインのパニガーレに乗った経験もある。Lツインのパニガーレを初めて試乗したときは、独特なトルクから生まれる4気筒とは違った加速に戸惑い、うまく乗ることができなかった。V4となったパニガーレはどうだろうか。


 さっそくエンジンをかけ走り出してみる。軽い車重と200馬力オーバーのエンジンスペックから凶暴なモンスターマシンを想像するが、実際に公道を走ってみるとそうではなかった。独特のエンジンから生まれるドゥカティの乗り味はそのままに、国産スーパースポーツと同様スムーズに加速していった。


 コーナーでは、スーっと倒れ込んでいき安定して曲がっていく。Lツインの時は、スパッと切れ込むような感覚があったため、そこを意識しながら乗っていたが、V4では自分が思い描いたように曲がってくれた。これはエンジンの気筒数が2気筒分増えたことにより、重量配分のバランスがより高まったおかげなのかもしれない。

ドゥカティ・パニガーレV4 S
ドゥカティ・パニガーレV4 S


 パニガーレV4はRACE、SPORT、STREETの3つのモードが選択可能でそれぞれの状況に合わせて走りを変えることができる。最初に走り始めた時はSTREETを選択。このモードでは、トラクションコントロールの介入レベルが高く設定されているため、強力なパワーをもつバイクでも不安なく扱うことができたのだろう。また、Sバージョン標準装備のオーリンズ製電子制御サスペンションにより、スーパースポーツを一般公道で走らせるときに感じる路面からの強い衝撃も軽減してくれることから、街乗りも難なくこなしてくれると感じた。

ドゥカティ・パニガーレV4 Sに跨る生田ちむさん
リヤにもオーリンズ製の電子制御サスペンションを装備
メーターは液晶ディスプレイ。速度や回転数も非常に見やすかった。


 クラッチを握らずにシフトアップ・ダウンできるドゥカティ・クイック・シフトアップ/ダウン(DQS EVO)も優秀で、加速中のシフトアップも滑らかだ。シフトダウン時には自動で回転数を合わせてくれるため、大きな変速ショックなくギヤを下げることができた。このDQS EVOは、パニガーレV4の全モデルに標準で装備されている。

右ステップ
左ステップ
ドゥカティ・パニガーレV4 Sと生田ちむさん


 試乗中は高速道路に乗る機会があり、ここで走行モードをRACEに選択。すると車両は驚くほど大きく変化する。進入時にスロットルを多めにあけると、体が少し後ろに動くくらいの強力なパワーを発揮。一瞬にして法定速度に到達するのだ。このときは、だいたい5000回転くらいでシフトアップしていったが、2速から3速に入れようとした段階では100km/hに到達してしまっていた。もし、この車両を富士スピードウェイに持っていったらホームストレートで難なく300㎞/hを越えてしまうだろう。


■車体から発せされる“熱”が唯一の欠点


 見た目、走行性能とも素晴らしいと感じたパニガーレV4だが、欠点がひとつだけある。それは車両から発せられる“熱”だ。シート下にはエンジンに加え、ドゥカティ独特の入り組んだエキゾーストパイプがあり、ここから生まれる熱気が体に襲ってくるのだ。スーパースポーツを乗るなら車体からくる熱気については仕方ないと感じるだろうが、パニガーレV4の熱気はとにかく厳しかった。

熱対策としてパニガーレV4には気筒休止システムが備わっている。これはエンジンの冷却水温度が85度以上でギヤがニュートラルになると後の2気筒が止まるという仕組みだ。それでも夏場の熱は相当なものだった。


 本来、この車両はサーキットこそそのポテンシャルを発揮する。サーキットでの高速走行であれば風が常時車体に当たってエンジンが冷却されるため熱は問題ないだろうが、ストップ&ゴーを繰り返す一般公道でエンジンはなかなか冷えにくかった。夏場に一般公道でこのバイクに乗るときは、熱による身体への負担に注意が必要となるだろう。


 今回は一般公道を中心にパニガーレV4 Sを試乗した。街乗りに関しては、夏場以外は問題なくこなせるだろう。しかし、このバイクは街乗りでなく、サーキットや峠道のようなコーナーが多いワインディングロードにこそふさわしい車両であると強く感じた。機会があればパニガーレV4 Sをサーキットに持ち込み、MotoGP譲りのポテンシャルを体感してみたい。

ドゥカティ・パニガーレV4 S(フロント)
ドゥカティ・パニガーレV4 S(左サイド)
ドゥカティ・パニガーレV4 S(右サイド)
ドゥカティ・パニガーレV4 S(リヤ)
シャープなフロントカウルの奥に見えるLEDヘッドライト
右ハンドルレバーにはエンジンスターター。アクセルはフライバイワイヤー方式でケーブル類はなくすっきりしている。
左ハンドルレバーにはモード切替スイッチなどが備わっている。
エキゾーストは車体と一体化しているデザイン
サイドにも排気口が備わっている
トップブリッジは国産スーパースポーツと比べると大き目
フロントスクリーンはクリアでコンパクト。伏せるとしっかりと風を防いでくれる。
ホイールは前後ともアルミニウム合金5本スポークホイール。タイヤはピレリのディアブロ・スーパーコルサSPを標準装着している。フロントのサイズは120/70 ZR17。
スイングアームは片持ち
リヤタイヤのサイズは200/60 ZR 17と国内スーパースポーツよりも大きい。
生田ちむさんのお気に入りポイントは金色に輝くオーリス製リヤサスペンション
車体に一体化した形のエキゾーストもスリムでカッコいいという。


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