シーズン中盤から大幅に進化したマクラーレン。“改良型ダウンウォッシュ”で弱点を解消/2023年F1開発まとめ(4)
2023年12月28日(木)18時0分 AUTOSPORT web

2023年のF1は、前年に導入された新しい技術規則によりグラウンドエフェクトカーが復活して2年目のシーズンとなった。今年も各チームが特色のあるマシンを投入し、シーズンが進むにつれて徐々に進化を遂げていった。そんな2023年型マシンのアップデートを振り返ってく今回の企画、第4回はコンストラクターズ選手権4位のマクラーレンF1チームだ。
────────────────────────────────
▼マクラーレンF1チーム(MCL60)
マクラーレンは2022年もシーズン中に大きく進化を遂げた。2022年に進化を遂げた最大の理由は、サイドポンツーンをレッドブルのRB18とかなり似た外見にして、空力のコンセプトを変えたことだった。マクラーレンがレッドブルと同じコンセプトにするのは自然なことだった。サスペンションが2チームともフロントはプルロッド方式で、リヤにプッシュロッド方式を採用しているからだ。
しかし、マクラーレンはシーズン序盤に苦しんだ。2022年から2023年にかけて変更されたフロアのレギュレーションにうまく対応できなかったものと考えられる。またマクラーレンの2023年のマシン『MCL60』は高速コーナーを得意としているが、低速コーナーに弱点を抱えるという得手不得手が大きいという悪癖があり、それがシーズン序盤のサーキットとの相性が合わずに成績が残せなかったものと考えられる。
したがって、マクラーレンがノーマルなサーキットが舞台となるヨーロッパラウンドに入って浮上してきたのは自然なことだった。第8戦スペインGPでランド・ノリスが予選3番手となったのはそのいい例だったが、スタート直後にルイス・ハミルトン(メルセデス)と接触し最終的に18位に終わったことで、この時点ではまだそのポテンシャルが見えにくかった。
そのマクラーレンが結果をともなった速さを見せ始めたのが、第10戦オーストリアGPからだった。このレースでマクラーレンはノリスのマシンのみ、サイドポンツーンをアップデート。これはサイドポンツーンの上面の中央が滑り台のように溝状に後方へ向かって下がった『スロープ型』になっており、2023年にアストンマーティンが先鞭をつけたアイデアだ。一見すると、フェラーリのバスタブ型に似ているが、バスタブ型は後方へ向かって下がっていないのに対して、このスロープ型はむしろレッドブルのダウンウォッシュをより正確に行うための改良型ダウンウォッシュとも言うべきアイデア。ただし、この新サイドポンツーンはオーストリアGPではノリスのみにしか投入されず、チームメートのオスカー・ピアストリは従来スペックだった。
マクラーレンがさらに進化を遂げるのは第16戦シンガポールGP。サイドポンツーンのコンセプトはそのままに、形状のディティールをファインチューニングして、ダウンウォッシュをより適正化した変更だった。
シンガポールGPでのアップデートは、オーストリアGP時と同様、ノリスだけで、ピアストリとともに2台そろって最新スペックで走ったその次の日本GPでは2台そろって表彰台を獲得した。そのアップデートはサイドポンツーンだけでなく、フロアも改良されていた。
さらにシンガポールGPではリヤウイングのアッパーフラップもアップデートされていた。現在のグラウンドエフェクトカーにとって最も正しいと思われるコンセプトで開発されたマシンを、適正にアップデートしていったマクラーレンがシーズン中盤戦から後半戦にレッドブルに次いでコース上で速かったことは当然の結果だったといえるだろう。