海と子どもをつなぐコミュニケーター・茂木みかほさんが選ぶ「自分を見つける本5冊」

2023年1月22日(日)11時0分 ソトコト

*30代の先輩からU30の皆さんへ。今回は先輩たちの選書を通して、U30の皆さんに、自分たちにもこれからやってくる30代をより豊かに、気持ちいい生き方をしてもらえたらと思い、11名の方に本を選んでいただいています。





海と子どもをつなぐコミュニケーター」という肩書で、子どもたちに自然や海の素晴らしさを、磯観察やビーチコーミングを通して伝える自然体験活動の指導を行っています。活動拠点は、神奈川県の三浦半島、逗子や葉山です。
伝えるときに大切にしているのは、レイチェル・カーソンの名著『センス・オブ・ワンダー』にも書かれている、「知ることよりも感じることを大事に」という、自然と向き合う姿勢です。たとえば、磯観察で子どもたちは知らない生き物に出合うと、「これ、なんていう生き物?」と私に尋ねます。図鑑で調べると名前はわかりますが、そこで探究は止まってしまいます。だから私は、「3分間、この生き物を眺めてごらん」と名前よりも観察することを勧めます。どんな色や形をして、どんな動きを見せるか。目の前にいる生き物そのものを感じてほしいから。レイチェルも本のなかで貝や鳥、虫や植物など生き物の不思議さを甥っ子のロジャーに語りかけています。海に沈む月を眺めたり、夜の庭で虫の声を聴いたり、身の回りの自然と一緒に触れ合いながら感性を育むのです。
私も子どもの頃、新潟県の海辺や父の故郷でたくさんの自然を感じましたが、自然を「知ること」「伝えること」を仕事に決めたのは大学卒業後。自然を感じた経験があったから今があると思いつつ、もっと若いうちにレイチェルの言葉に出合えていたら、自分が進みたい道を早く意識できたのではと、ロジャーをうらやましく思いながら読んでいます。
三浦半島に暮らして10年以上が経ちます。仕事でもプライベートでも、三浦半島の自然と触れ合う機会が多いですが、その扉を開いてくれたのが、『三浦半島フィールドノート』です。サブタイトルにあるように、三浦半島での野歩きや海遊びの楽しみ方が見開きページに1つずつ、かわいいイラスト付きで紹介されています。「紫の汁で身を守るアメフラシ」や、「野山でできる苺狩り」や、「海藻標本を作りませんか」というページもあり、私はユカリという赤い海藻でつくってみました。ものすごくきれいです。海藻は水の中で広げるとその造形の美しさに感動します。植物の押し葉のようにケント紙に貼り付けて標本にすると、一つひとつ形が違って、その多様性に驚かされます。以来ハマッて、100種類ほどの海藻を標本にしました。そんなふうに、三浦半島の自然をこれ一冊で満喫できます。ぜひ、この本を片手に気軽に訪れてみてください。


白洲正子自伝
白洲正子著、新潮社刊





日本産魚料理大全
西潟正人著、緑書房刊





寄生蟲図鑑 ─ふしぎな世界の住人たち
目黒寄生虫館監、飛鳥新社刊








photographs by Yuichi Maruya text by Kentaro Matsui


記事は雑誌ソトコト2023年1月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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