26cmの穴子がドーン! 神保町の老舗『はちまき』の大盛り「穴子海老天丼」が旨すぎた

2022年2月3日(木)10時49分 食楽web


食楽web

「神保町に昔からある天ぷらのお店に、大きな穴子丼がある!」と聞いて向かったのは、三省堂前の交差点から、すずらん通りを少し入ったところにある『天麩羅 神田 はちまき』。1931(昭和6)年創業、という創業から91年目の老舗です。

 店頭には「江戸川乱歩先生 創業者 青木寅吉」と書かれた大きなモノクロ写真が飾られています。さすが歴史のあるお店。すごい人たちがいっぱいきていたのかも? 味はもちろん、エピソードにも期待しつつ暖簾をくぐります。


卓上に置かれたメニュー。穴子の大きな丼は「穴子海老天丼」。老舗の天ぷら屋さんの丼が800円からあるって魅力的

 席につき、早速メニューをチェック。大きな穴子丼と聞いていたけれど、メニューに「穴子丼」はなく、「穴子海老天丼」(1500円)を発見。そしてその下には「松天麩羅重」(1900円)があり、こっちも穴子天が入っている。果たしてどっち? と疑問に思いつつも、やっぱりお重ではなく丼では? ということで、「穴子海老天丼」をゴハン大盛りで注文。ちなみに大盛りは追加料金なしのサービス。ありがたい!

 天ぷらが揚がるまで、ちょっとお店の中をキョロキョロしていると、店内にも江戸川乱歩の写真と色紙が。さらにショップカードを見ると「主な常連様 江戸川乱歩、海音寺潮五郎、山岡荘八、佐野周二、三國連太郎、辰巳柳太郎」と書かれています。作家に俳優、まさに昭和のスターたちですね。ちなみに佐野周二は関口宏のお父さん、そして三國連太郎は佐藤浩市のパパです。そして、佐野周二は戦前神田に住んでいたそうなので、この店に食べにきていたというのも納得です。

両サイドにはみ出る長さ約26cmの「穴子海老天丼」(1500円)


「穴子海老天丼」1500円。お味噌汁付き。そしてささがきゴボウとガリのお新香は卓上に置いてあり取り放題

 注文が入ってから天ぷらを揚げるので、お客様の人数や時間帯にもよりますが、およそ10分ぐらい待ちます。そして目の前に待ちに待った「穴子海老天丼」が到着。早速計測です。

 高さ約11cm、重さは丼が673g、味噌汁が166g(共に器の重さを除く)。トータル839g。そしてこの日のアナゴの長さは約26cm。アナゴの橋にもたれかかるようにエビ天2本と野菜天がのっています。「今日の野菜はレンコン、ピーマン、ナス。野菜は日によって変わるね。アナゴは豊洲から仕入れたもので、天ぷら用にちょうどいいサイズのを仕入れているんだよ」と話すのは3代目店主の青木昌宏さん。生まれも育ちも神田。ショップカードに地元の保育園、小中学校を出たことが書かれています。


高さは約11cm。ゴマ油と、天ぷらにかかっているタレの香りが食欲をそそる

 さっそく穴子天を一口! 衣はカリッと、そして中はふっくら。ゴマ油とタレの香りがフワッと鼻から抜けていきます。そして、一般的な天ぷらよりカリッとしている。だからカリッととフワッとの差を感じます。色は薄く見えるのに、ちょっと意外。メリハリがあっていい感じです。

「衣はよく揚げてカリカリ一歩手前にしているんだよ。天ぷらは焦げちゃだめ。焦げる一歩手前がうまいんだよ」と店主。衣も厚めになっているので、カリッと感が活かされています。ちなみにタレは「おじいちゃんの頃からのレシピで、みりんやダシの他に、隠し味をちょっと入れてるんだよ」とのこと。そう言われると隠し味、気になります。


箸で持ち上げるとずっしり。このままかぶりつくべきか、箸で切ってからにすべきか悩む

 天丼を食べつつ、卓上にあるお新香もごはんの上にとって一口。ゴボウとガリのお新香は、口の中をさっぱりさせてくれて、揚げ物との相性が完璧。ぶっちゃけ、タレがかかったゴハンにこれだけでも絶対うまい! ガリのスッキリ感、そしてゴボウのシャキッと感が甘辛だれのかかった天ぷらに合う。「これは、ゴボウのささがきのお新香に、寿司用のガリを混ぜているんだよ」。まさかの卓上取り放題のお新香まで完璧な調和とは!

 ちなみにごはん大盛りでの注文は「1日100食ぐらい出るね」とのこと。大盛り673gなら、大盛り注文が多いのにもなるほどです。


「持ち帰り用の『天丼弁当』600円、『上天丼弁当』800円なども販売していますよ」(3代目店主の青木昌宏さん)

 店は元々、末広町(現在の外神田)で創業、その後神田駅前に移り、1944(昭和19)年ごろに現在の地に店を構え、神保町で80年続いているとのこと。でも、なんで江戸川乱歩など錚々たるメンツがこの店に食べに来るようになったんですか?

「江戸川乱歩先生が来ていたのは昭和20〜30年ごろ。当時は映画全盛の時代で、映画の原作者として映画会社の人たちが先生方を労うためにうちをよく訪れていたんだね」と青木さん。だから流行作家や俳優さんたちがお店に食べに来ていたんですね。

「当時は東映、大映、東宝、松竹、日活など色々な映画会社があって、同時に何作も映画を作っていたんだよ。いい原作だと映画がヒットするからね」。いわゆる接待、ということなんだろうなぁ。映画会社の人、作家はもちろん、まだ売れる前の女優の卵なども同席して、とっても華やかだったそうです。

 店内はカウンター席とテーブル席があり、一人でもふらっと入りやすい雰囲気の『天麩羅 神田 はちまき』。実は近隣の出版社の人たちの御用達店で、ランチタイムなどの時間限定や中休みがなく、15時でも16時でもお昼が食べられることから、時間が不規則な編集者さんに人気だそうです。

 昔は映画関係者や文人墨客、現在はランチタイムが不規則なお仕事の人や古本街に本を探しにきた人たちに愛され続けている『天麩羅 神田 はちまき』。店主の流暢なトークも、お店の魅力の一つなのかもしれません。

(取材・文◎いしざわりかこ)

●SHOP INFO

店名:天麩羅 神田 はちまき

住:東京都千代田区神田神保町1-19
TEL:03-3291-6222
営:11:00〜21:00
休:なし
※まん防、緊急事態宣言などにより、営業時間、定休日が変更する場合があります。

食楽web

「神保町」をもっと詳しく

「神保町」のニュース

「神保町」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ