『卵子凍結』の誤解って? よくある見落としがちなポイント

2023年2月22日(水)16時45分 ソトコト

最近、様々なメディアをはじめ、周りの友人からも『卵子凍結』の話題を耳にすることが増えました。いうまでもなく『卵子凍結』をする・しないは個人の自由。今年28歳になり、まだまだ働き盛りの筆者は、将来の結婚や妊娠、出産についてなんとなくイメージはしているものの、具体的な想像や自分の身体に向き合うことは後回しになっていた一人でした。
しかし今回、選択的卵子凍結保存サービス「Grace Bank(グレイスバンク)」を運営する株式会社グレイスグループの花田秀則氏のお話を聞いて、たくさんの気づきがあったと同時に、自分のヘルスリテラシーの低さを痛感……。取材で知ったことや感じたことをレポートします。


まだまだ誤解が多い『卵子凍結』


検索すれば、ありとあらゆる情報が手に入るいま。便利な一方で、情報がパーソナライズ化されて視野が狭まったり、玉石混交の情報により誤解や錯覚が生まれやすかったりするのは確か。そういった時代背景から、『卵子凍結』についても不透明な情報を鵜吞みにしてしまうという問題があるそうです。
花田氏:「私たちが卵子凍結保存サービスを運営していて気づくのは、『卵子凍結』は女性のライフプランの有意義な選択肢になり得るにも関わらず、クチコミやネット上に偏った情報がたくさんあり、誤解している方がまだまだ多いということです。
『卵子凍結』そのものについてはもちろん、生殖医療界の外で暮らしていると、クリニックやサービス選びも難しいところです。高額なクリニックやサービスほど高品質だと思ってしまったり、料金体系や卵子凍結の保管に明確な基準がなかったりなど、情報が不透明でトラブルになりやすいというのが現状です」





日本の生殖医療技術は世界トップクラス


ほかの医療と比べるとまだ歴史の浅い分野なのでは? 技術には大丈夫なの? 花田氏いわく、そういった疑問や不安を抱く方もなかにはいるよう。
花田氏:「そもそも、採卵(体外受精のために卵巣内から卵子を取り出すこと)は、国内で年間25万件ほど実施され、高い安全性が臨床で十分に証明されている技術です。意外と知られていませんが、生殖医療における日本の凍結・融解技術は非常に高く、世界でトップクラスとの評価を受けています。
そんな世界最高レベルの技術があるにも関わらず、日本は性や妊孕性に関するリテラシーが低く、ある程度高齢になって不妊が顕在化してからしかクリニックに行かないため、体外受精の出産率がとても低い現状があります」





出典:『アメリカでの卵子凍結』


未来の可能性を拡げる“選択的卵子凍結”


「Grace Bank」では、自身のライフプランのためにする『卵子凍結』のことを、“選択的卵子凍結”と呼んでいるそう。その理由について、花田氏は次のように話します。
花田氏:「私たちは、必ずしもすべての方に『卵子凍結』をおすすめしていません。ほかのあらゆる医療行為と同じように 、経済的、時間的、肉体的に多少の負担がかかることは事実だからです。
どのくらいの想いの強さで、将来のお子さんを願うのかも、みなさんそれぞれの価値観があると思います。周りがどうこうではなく、最終的にはご自身で判断することが一番大切だと考えているからこそ、私たちは“選択的”というスタンスを大切にしています。
そのため、『卵子凍結』するにしてもし ないにしても、後悔のないようにご納得いくまで理解を深めていただくことが重要だと考えています。将来の妊娠・出産に備えて若いうちから体調を整えておく“プレコンセプションケア”という概念もあります。まずは少しでも早いうちから正しい情報を受け取り、ケアを始めていただきたいと思います」





クリニック選び≒体外受精をするクリニックの確保


『卵子凍結』という選択肢を知ったものの、採卵後に凍結保存しておくことだけにフォーカスしていた筆者。将来的に凍結保存した卵子を用いて体外受精することや、転勤やお引越しで自分の環境が変わったり、転院の可能性もあったりすることについては、全くイメージできていませんでした。
花田氏:「将来みなさんが、凍結保存した卵子を使用して体外受精をするとき、クリニック間の信頼関係がなければ、採卵・凍結をしたクリニック以外での実施(卵子の移送)は難しい場合があります。
すなわち、『卵子凍結』するクリニックやサービスを選ぶということは、将来、体外受精をするクリニックを選ぶこととほぼ同じです。体外受精を行っていないクリニックで採卵される方もいらっしゃるようですが、その場合には、ご自身の身体にリスク無く採卵が行えるかどうか、将来の体外受精を行えるクリニックが確保できるのかどうか、この点には大きな注意が必要です。
また、中長期で保管する場合には、保管期間内に担当の先生が独立したり、ご自身がお引っ越しされたりする可能性もあるでしょう。未婚の方であれば、パートナーの方次第で体外受精を実施したい地域が変わることもあります」


保管体制と凍結保存費用も重要


自身のライフプランのためにする『卵子凍結』は自由診療。料金体系には一定の傾向はあるものの、クリニックによって差があることも事実です。また、体外受精で妊娠・出産することをゴールと考えると、凍結した卵子の保管方法についても知っておく必要がありそうです。
花田氏:「卵子は生きた細胞なので非常にデリケート。保管は『卵子凍結』を謳うところならどこでもいい訳ではなく、環境がしっかり整っているサービスや生殖医療専門のクリニックを選ぶことも大切です。
また、凍結した卵子の保管費用についても考えなければなりません。一般的には凍結する卵子の数や年数に応じて費用が発生しますが、高額の保管費用を支払っていても、保管環境が悪く卵子が死滅してしまえばその費用は意味が無い上に、目に見えない卵子の状態を利用者側が確認することはできません。実際に、私たちの提携クリニックのなかには“患者さんのために外部の卵子凍結サービスから凍結卵子を受け入れたこともあるが、体外受精の成績が明らかに低かった”とおっしゃる先生もいらっしゃいます。
最終的な意思決定は自分自身になると思います。納得のいく判断をするためには『卵子凍結』について理解を深めるだけでなく、まずは検査や診察を通じてご自身の身体に向き合うことが不可欠です。
私たちはご納得いただいた上で“選択”いただくために、トップクラスの専門医が登壇するオンラインセミナーをはじめ、『卵子凍結』に関するご説明の機会を各種ご用意しています。何か分からないことがあれば私たちもサポートさせていただくので、情報収集にお悩みの方は、噂話を鵜呑みにすることなく、ぜひ正しい情報をご選択ください」
健康や医療についての正しい情報を選び、自らの健康を向上させることをヘルスリテラシーと言いますが、国際的にみても日本は特に低いと言われています。
花田氏いわく、最近の10〜20代女性は、PMS(月経前症候群)や生理不順で身体の不調が続いても、誰かに相談したり病院に行ったりすることなく、野放しにしてしまうことが多いそうです。(実は私もその一人でした)
まだまだ女性が抱える健康問題について知らないことが多く驚きました。でもそれは、日常生活で気づくきっかけがなかったり、自分の健康を過信していたりするからだと思います。もっと自分の身体に関心を持つこと。それこそが豊かな毎日を支える糧になるのではないかと実感しました。


花田秀則氏
はなだ・ひでのり 選択的卵子凍結保存サービス「Grace Bank(グレイスバンク)」を運営する株式会社グレイスグループ代表取締役CEO。慶應義塾大学経済学部卒。株式会社博報堂を経て、2020年、株式会社グレイスグループ設立と同時に現職に就任。https://gracebank.jp


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