「受験に失敗し、やけっぱちになっていた私。車に乗った見知らぬおじさんに声をかけられて...」(山梨県・60代女性)
2025年2月27日(木)14時4分 Jタウンネット
山梨県在住の60代女性・Kさんは学生時代、志望校に合格することができなかった。
そのことで前向きな気持ちを失った彼女はその日、家族に黙って家を飛び出し、富士山のふもとに向かったという。
<Kさんからのおたより>
大学受験の時、志望校に落ち、進めるのは滑り止めの1校だけだった。
努力が足りなかったのだから仕方がないけれど、すっかり自己嫌悪に陥ってしまった私。前に進もうとする気持ちも無くなっていた。
スケッチブックとカミソリを鞄に入れて
そんな自分が嫌になり、ある日やけっぱちな行動を起こした。
家族に告げず、夜明けを待って自転車で家を飛び出しのだ。逃げ出したい衝動にかられていた。
行き先は富士山の麓の大草原が広がるところ。自然を求めてのことだった。
リュックサックにはスケッチブックとカミソリ。カミソリを持った理由は怖い人に出会ったら、いっそのこと死んでしまおうと思ったから。
大草原を駆け抜ける気分はすがすがしくて、本来の自分に帰ることが出来た。
雄大な富士山をスケッチしながら、「もっと大きな気持ちで生きなさい」と教えてもらった気持ちにもなった。
問題は帰り道、向こう見ずな私はあまりに遠いところに来てしまい体力は限界だった。
日が暮れてしまえはそこは青木ケ原樹海。ヨロヨロと自転車を押していた私の横に1台の車が止まった。
運転手は中年のおじさん
「行きの道で、一人で走るあなたを見た。今、帰り道だがフラフラなあなたを見過ごせない」
運転手である中年のおじさんはそう言い、自転車をトランクに積み私を車に乗せて走り出した。
怖い人かもしれないので、私はリュックの中のカミソリを確認した。
おじさんは、私に進路を尋ねた。私は「保育士になります」と答えた。夢は幼い頃からその一つだけだった。
あの時のおじさんに「助けてくださってありがとうございました」と伝えたい。
その後私は唯一の希望の職に就いて定年まで働き、さらに今も短時間だが保育所で働いている。
おじさんのお陰で生き甲斐のある仕事につき、豊かに強く人生を生きています。
誰かに伝えたい「あの時はありがとう」、聞かせて!
名前も知らない、どこにいるかもわからない......。そんな誰かに伝えたい「ありがとう」や「ごめんなさい」を心の中に秘めている、という人もいるだろう。
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