震災時の運命は「普段の片づけ」に左右される?棚からあらゆるモノが飛び出し、洗濯機も倒れ…整理収納アドバイザーが震災を経て確認した<命を守る心がけ>とは
2025年3月11日(火)12時30分 婦人公論.jp
(写真:stock.adobe.com)
着なくなった服を押しこんだクローゼット、本がぎっしり詰まった本棚、使わないお皿だらけの食器棚……。モノで溢れた家にうんざり、という読者も多いのでは。一方、これまでに7000人以上の受講生へアドバイスをしてきた人気整理収納アドバイザー・阿部静子さんは「こんな時代だからこそ、人生の折り返し地点を過ぎたら片づけたもの勝ち」と断言します。その阿部さんが50代以上に向けて、お手軽片づけ術を伝授! 今回のテーマは「3月11日を迎えて」です。
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3月11日を迎えて
今年も3月11日を迎えました。あの東日本大震災から、14年の月日が経ったことになります。
この連載でも何度か触れたとおり、著者である私は震災の時も今も仙台在住で、あの日は震度6弱の地震を実際に経験しました。
地震の瞬間にはタンスやテレビ、洗濯機といった大物家具・家電まで倒れ、棚、押し入れからはモノというモノが全て外に飛び出るなど、それはすさまじい状況でした。
モノが多いと、激しい地震の時などは床にそれが散らばり大変危険です。モノが邪魔で、ドアが開かなくなる場合もあれば、逃げ道をふさがれることになりかねない。
高さのあるタンスや棚の上にモノを置きっぱなしにしているお宅も多く見受けますが、これも危険です。地震では頭上のそれらが即、凶器に…。
いざという時にあって困るモノ、ないと困るモノ
揺れが収まったあとも大変。
そもそも、「家の中に散らばったモノを片づけるだけで心が折れる」と多くの方が言います。私の近隣でも、部屋の中を復旧するのに数カ月かかった方が。
もともと片づけが苦手でモノが多かった私でしたが、たまたま震災の前からスッキリさせはじめた時期であったため、3日ほどで家の中を元に戻すことができました。
でもそんな人は少数だったようで、復旧の速さについては同じマンションに住む方から、とても驚かれた覚えがあります。
ともあれ、家の中にモノが多いことが、震災ではリスクになりえます。逆に「片づけは家が整うだけでなく、災害から命や家族を守ってくれる」という事実を知る経験にもなりました。
近所にコンビニやスーパーがあれば大丈夫?
反面、いざという時に「ない」、あるいは「少ない」ことで困るモノもあります。それが非常用持ち出し袋と備蓄です。
片づけ講座などで話をおうかがいすると、そもそも家に非常用持ち出し袋の用意がない人が一定数います。
阿部家に備えてある非常用持ち出し袋(写真:著者)
理由として「準備しなくては、と常々思ってはいたんですが…」という方が多いですし、私も以前まではそうでした。しかし震災を経験した今となっては備えが無いままで暮らすなんて、むしろ心配になるくらい。
そして備蓄。こちらは概ね食料のことを指すわけですが、「余分な食べものを家に置いておきたくない」「近所にコンビニやスーパーがあるし」という声をよく聞きます。かくいう私も、震災前には申し訳程度に2リットルのペットボトルの水を数本、台所に置いていただけ。
震災後には、被害が少なかった同じ市内の夫の実家へ身を寄せることになりましたが、私の住む地域の水道と電気は1週間後、ガスは1か月後にようやく復旧しました。その間、水は給水に並ぶなど、家と給水場と往復するのはとても大変だった覚えがあります。
スーパーもしばらく開きませんでした。ほんのわずかな店が開いても人が殺到。数時間待ってようやく一人5点、など制限付きの毎日を長く過ごすことに。
この心がけが災害の時、自分や家族の命を守ることに直結する
それまでの災害に対する準備の足りなさを反省した私は、その後、3人家族1週間分の飲み物・食べ物をローリングストック(普段から少し多めに食品や飲料水を買っておき、使った分だけ買い足していく備蓄方法)で保管。非常食や長期保存水も常備するようにしました。
ただ、備蓄をするのが大切とはいえ、あくまで「管理できる量」に留めておくことも大切です。飲料、食品、洗剤その他、色々なものを沢山買い込んだはいいが、かなりの場所をとった結果、普段くつろぐスペースがなくなった…なんてお宅も見受けます。
また備蓄につきものなのが「賞味期限切れ」。私もよく賞味期限を切らしていたので、毎年3月の今の時期、必ず非常用持ち出し袋の中を確認するようにしています。ちなみに確認は年に2回で、もう1回は9月1日の防災の日です。
またわが家では万が一に備えて給水用のポリタンクも購入しましたが、最近ではコンパクトに折りたためるものもありますので、場所の確保が難しい家などではオススメです。
いずれにせよこれらのものは、家の中にそれなりに置くスペースが必要になります。それで私は震災を経験してから、場所を確保するためにも一層モノを減らそう、片づけるようになりました。
必要なものを置き、不要なものを手放す。片づけはメリハリをつけて行うことを意識して。実はそうした心がけが、災害の時、自分や家族の命を守ることに直結します。
この記事がそれを考えるきっかけになれば幸いです。
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