私たちは何のために働くのか? 「つらい」と感じてしまう2つの原因
2025年4月14日(月)17時32分 マイナビニュース
「毎日働くのがつらい……」「なぜ大変な思いをして働かないといけないのだろう……」、仕事に対してそんな負の感情を抱いた経験が、誰しも一度はあるのではないでしょうか? そもそもなぜ私たちは働くことが「つらい」と感じてしまうのか、中之島設計代表取締役 村井一雄氏の著書『僕らは、なにを武器に働けばいいのだろうか?』(アスコム)より、一部抜粋・再編集してお届けします。
働く=チャンスの時間
「私たちはなんのために働くのでしょうか?」
「お金のため」「生活していくため」というのは、はじめに出てくる端的であり率直な答えでしょう。もちろん収入を得ることは、生きていくために欠かせないことです。なにより労働を提供して、生きるための糧を得るというのは、狩りをして食料を得るのと同じで、人間が太古より行ってきた行為です。
今に生きる私たちは、サービスや商品、労働、さまざまなものを提供することでお金を得て、それをもとに生活をする。仕事の大前提であり、生きるために必要であることに間違いないのです。ただ、働きはじめれば、1日の多くの時間を会社で過ごし、仕事に費やすことになります。それなのに、得られるものがお金だけ(もちろんお金は大切ですが)、というのはあまりにも時間を無駄にしているように感じませんか?
大丈夫です。 働くことで得られることは、よくよく考えれば、お金以外にもたくさんあります。「お金以外に働いて得られるものってなんだと思う?」と社員に聞いてみると、次のような答えが返ってきました。
一生困らないスキル
人間的な成長
一人前の証
社会に役立っているという実感
好きなことをとことん追求して知識欲を満たせる
実にいろいろな答えがあるものだと感心しました。特に、私が働くことで得られるものとして着目したいのが、次の2点です。
一人前の証
社会に役立っているという実感
仕事を通して「周りの人に自分を認めてもらうことで、自分の価値を見出せる」という点です。最近の言葉でいうと「自己肯定感の向上」というものでしょうか。人間は褒められると単純にうれしいですし、誰かの役に立てればそのことに喜びを感じるものです。
そのほかにも、ビジネスシーンでは「同僚からありがたがられた」「クライアントから感謝された」「大きなプロジェクトに選出された」「昇進した」「表彰された」など、さまざまな形で自己肯定感を向上してくれるイベントがたくさんあります。「仕事はつらくて、いやなもの」「楽しいことは、プライベートにしかない」、そんな考え方をする人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。楽しいこと、面白いこと、うれしいこと、そして自己肯定感を向上してくれるといった、あなたを幸せな気持ちにしてくれることが仕事や会社にも山ほどあるのです。もちろん、苦しいことや大変なことが、たくさんあるのも事実です。
仕事の時間をつらくて、いやな時間と一元的に決めつけて、いやいや過ごすのではなく、仕事は自分を幸せにしてくれるものが得られる「チャンスの時間」と考えてみてはどうでしょう。なぜなら、いやいや過ごしていては、自己肯定感を向上してくれるようなイベントも、そのほかの仕事を通して得られることも手に入りづらいからです。
ぜひ、仕事にもあなたを幸せにしてくれることがあると前向きにとらえ、自分の持っているものを出し切って、過ごしてみてください。それは、きっとあなたの人生そのものの幸せにつながります。事実、「仕事の幸福度」が高い人は、「自分の生活や人生への幸福度」も高いという調査結果もあるのです。
なぜ働くことにマイナスイメージを持ってしまうのか?
通勤電車に揺られているビジネスパーソン、もしくは自分の姿を思い浮かべてみてください。精気の抜けた顔で座っている、どこか疲れた表情で吊り革をにぎっている、そんな姿が思い浮かんだ方もいらっしゃるのではないでしょうか。
学生時代、私もそんな人たちの姿を見て、仕事ってつまんないんだろうな、つらいんだろうなと思っていたこともありました。もしかしたら、まだ学生の方などは、当時の私と同じようなことを感じ、働くことに不安やマイナスイメージを持っているかもしれません。またビジネスパーソンの中には、通勤電車に乗るたびに、「通勤するのだるすぎる」「今日、会社に行くの、いやだな」と憂鬱になる方もいらっしゃるかもしれません。
でも、通勤電車に揺られている人がつらそうに見えるからといって、仕事がつらいわけではありません。通勤電車は誰にだってつらいもの。しかし、それを乗り越えて職場に行けば、通勤時間で感じたつらさを余裕でかき消す幸せが得られる可能性が待っています。
一方で、働くのがつらい、面倒くさいという人もいます。私は、働くのがつらい、面倒くさくなるのには、大きく2つの理由があると思います。
(1)仕事がうまくこなせていない
仕事がうまくいっていない=仕事で得られる幸せもないのですから、つらいのは当たり前です。もし、仕事で得られる幸せがあるのであれば、通勤が楽しくなるということはないとしても、通勤ごとに憂鬱な気持ちにまではならないのではないでしょうか。
仕事がうまくいかない理由は、自分自身の問題だけではない場合もあるので一概にはいえませんが、日々仕事をこなしていき、経験を積んで、周りから「プロ」と認められるような人材になることが、仕事がうまくいくようになる一番の近道ではないかと考えます。
その道自体がつらい、大変だということはあると思いますが、道もわからずゴールも知らずに歩んでいるのと、道とゴールがはっきり見えている状態で歩んでいるのとでは、その途中のつらさが違いますよね。
だからこそ、「プロになる」というゴールをもって(「プロ」になってからも新たに「プロ」としてのスタートを切ることになりますが)、まずはそれを目指して働くことはとても意義のあることだと思うのです。朝から夜遅くまで働いても一向に報われない。「こんなに頑張っているのに… …」「周りがわかってくれない」などと思うときは、「働き方のコツ」が間違っている恐れがあります。
(2)周りと合わない
法律無視のブラックな会社やハラスメントが多い会社などは論外とはいえ、会社の数ほど求められる働き方が違いますし、そこで働く人がどういう人かによって職場環境も違うため、会社に合う、合わないというのはあります。
そのため「一生懸命に働いても、周りから評価されない」「いつまでたっても仕事が終わらない」などと感じて、働くのがつらい、面倒くさくなるということがあるのだと思います。
もし今の会社が「合わない」「働くのがつらい」と感じるならば、転職などを考えるのも1つの手です。
ただし、注意しておきたいのが、自分の働き方を今一度見直してほしいということです。
自分が会社で与えられた役割を果たしているのか、与えられたものをこなすための行動を実践できているのかということです。
そこがうまく実践できていないがために、評価されない、なにをやっても仕事がうまくいかずに、働くのがつらい、仕事が嫌いという結論にいたってしまっているということではないでしょうか。
もし、あなたが会社から求められていることを実践できて、周りから評価されたり、仕事がうまく運ぶようになったりすれば、実はあなたに合う職場かもしれません。
自分で働きやすい環境をつくるのも一つの方法
辞めることが決まったあとで、「自分は会社についてこういう風に思っていた」「仕事でのこういうところが不満だった」と話してくる人がいます。
話を聞いていくうちに「確かにうちとは合わないかも」と思うことも多いですが、「もっと早く言ってよ、言ってくれていたら改善できたのに」と後悔を覚えることも少なからずあります。もちろんそういったことを拾い上げることができなかった管理職側の問題もあるのですが、エスパーではないので、一人ひとりの隠された気持ちまで気を配れないことがどうしてもあります。
言ってなにも改善されなかったり、納得のいく説明がされなかったりすれば、合わない会社だと判断すればいいだけの話です。言わずに辞めてしまうのは、非常にもったいないことです。あなたも、会社という環境の一要素なのですから、まずは、自分自身で働きやすい環境に変えるための行動を起こしてみてはどうでしょうか。
すぐに「この会社は合わない」と断じて、次の会社を探すのではなく、まずは自身の在り方を見直してみることをおすすめします。
それは単純に、あなたの能力がないとか、仕事にやる気がないとかいうものではなく、「働き方のコツ」を知っているか、理解した上でそれを実践できているかどうかです。
それを知らなければ、たとえ次の会社に移ったとしても、また「周りから評価されない」「仕事が終わらない」と悩むという同じ轍を踏んでしまう可能性が高くなってしまうのです。
『僕らは、なにを武器に働けばいいのだろうか?』(村井一雄 著/アスコム/1,540円)
正しい働き方を知らずに働くなんて非効率! 上手な計画の立て方や相談の仕方、仕事の調整の仕方といった働き方を知らずに働くのは、ルールを知らずにスポーツをするのと一緒! 正しい働き方を知ることが、仕事ができる人、周りから「その道のプロ」と呼ばれるような人材になるために、一番の近道です!
著者は、職人気質のベテランが幅をきかす、設備設計という業界で、新卒を1から育てて、躍進をしている株式会社中之島設計の村井一雄氏。ただ、彼の本職である設計の技術が書かれたものではありません。本書は、すべての働く人に通じる、技術よりも大切な、そして社会人でも以外ときちんと教えてもらった人が少ない、「働き方のコツ」を説いたものになります。
村井一雄 むらい・かずお 中之島設計代表取締役。1976年生まれ。京都府出身。未経験で設備設計の世界に入り、28歳で独立。その後、2016年に会社の名称を中之島設計に変更。「気付かれない設備」をモットーに、ホテルや学校、駅、庁舎、商業施設などの設備設計を請け負っている。また、中途採用が当たり前で、高齢化が進む業界の中で、業界の未来のために、未経験者の新卒を1から育てることをはじめ、教育体制の充実や人事制度の策定などにも力を入れている。 この著者の記事一覧はこちら