双極性障害とは何か? 原因・症状・治療法【精神科医が解説】
2025年4月20日(日)20時45分 All About
【精神科医が解説】双極性障害は、気分が上がり過ぎた「躁」の状態と、落ち込む「うつ」の状態を繰り返す心の病気です。以前は「躁うつ病」と呼ばれていましたが、うつ病とは異なる病気です。双極性障害の症状、原因、治療法について、分かりやすく解説します。
双極性障害とは何か? 主な症状と問題点
双極性障害とは、依然は「躁うつ病」と呼ばれていた心の病気の1つです。「うつ病」とは全く異なる病気であると考えられるようになったことから、名称が変わりました。最近では「双極症」と呼ばれることもあります。双極性障害は、気分が上がり過ぎる「躁」の状態と、うつの状態を交互に繰り返す病気です。気分が上がる状態なら問題ないと思われるかもしれませんが、実際には違います。躁状態のときには以下のような症状が現れやすくなり、日常生活でトラブルを起こしてしまうことも珍しくありません。
・気分が高揚し、楽観的になる
・頭の回転が速くなる一方、考えがまとまりにくくなる
・多弁・多動状態になる
・判断力が乏しくなり、危険を顧みなくなる
・睡眠時間が少なくても疲れを感じなくなる
・注意散漫になり、集中力が低下する
・イライラしやすく、怒りっぽくなる
反対に、気分が落ち込む「うつ」の状態になると、次のような症状が現れます。
・悲しい気持ちになり、絶望感が強くなる
・今まで楽しめていたことに興味を感じなくなる
・頭の回転が遅くなり、思考力が低下する
・疲れやすくなる
・不眠、食欲低下が起こる
・自責の念が大きくなり、希死念慮や自死願望が生じる
双極性障害の原因は、遺伝要因・社会的要因・環境要因など複合的
双極性障害の原因として、遺伝的な要因が知られています。一卵性双生児の研究によると、片方が双極性障害の場合、もう片方も双極性障害になる確率が85〜89%という報告もあります。とはいえ、15%程度の人は発症が見られないため、遺伝要因のみという考えは誤りです。社会的要因、環境的要因が絡んで、複合的な背景で発症すると考えるべきでしょう。特定の病気になりやすい体質の場合、ストレスなどのさまざまな原因が引き金となって、その病気を発症しやすくなると考えてください。
双極性障害の治療法は薬物療法が中心。自然治癒はせず、長期的治療が必要
双極性障害は、治療が必要な病気です。自然治癒は期待できませんが、適切な治療を受けることで気分の変動をコントロールできるようになり、問題なく日常生活を送れるようになります。しかし、双極性障害の治療は長期戦です。精神安定剤などの薬物療法を中心に行い、まずは強い症状を軽減させるための「急性期治療」から始めます。少し落ち着いてからは「継続期治療」を行い、その後は再発を防ぐための「予防的維持」へと進んでいきます。状況に応じて、精神安定剤以外の薬も使用しますので、主治医の指示に従いましょう。例えば、うつ症状が強い時期に抗うつ薬を用いるほか、状況にあわせて非定型抗精神病薬などを用いることもあります。
個々人の状態によりますが、初めての場合、治療期間の目安は急性期治療に3カ月、継続期治療に6〜9カ月、予防的維持に1年以上です。
双極性障害は、うつ状態の際は本人も精神的なつらさを感じますが、一定の期間を過ぎて躁状態に変わると、治ったととらえやすく、治療を中断してしまうリスクも伴います。病気について本人と家族をはじめとする周りの人が正しく理解し、継続してケアしていく必要があります。
中嶋 泰憲プロフィール
千葉県内の精神病院に勤務する医師。慶応大学医学部卒業後、カリフォルニア大学バークレー校などに留学。留学中に自身も精神的な辛さを感じたことを機に、現代人の心の健康管理の重要性を感じ、精神病院の現場から、毎日の心の健康管理に役立つ情報発信を行っている。(文:中嶋 泰憲(医師))