住宅ローンの金利が上昇! 住宅購入を検討している人は早く買った方がいい?

2025年4月20日(日)10時0分 マイナビニュース


日銀の追加利上げを受け、大手銀行5行は、4月から住宅ローンの変動型の基準金利を0.25%程度引き上げています。今後も金利上昇が続けば、月々の返済額、支払い総額に大きな影響が出ます。そこで、金利が大きく上昇する前に住宅を購入した方がいいのでは? と考える人は多いでしょう。
本記事では、住宅購入を検討している人に向けて、すぐにでも買った方がいいのか、それとも待つことで住宅価格が下がることがあるのか、住宅購入のタイミングについて解説します。
住宅ローンの金利上昇で返済額はいくら変わる?
日銀が今年1月に追加利上げを行ったことを受けて、大手銀行は3月に短期プライムレート(短プラ)を0.25%引き上げました。短プラは変動型住宅ローンの基準金利の指標となるため、これを反映させる形で、4月から大手銀行5行の変動型の基準金利も0.25%程度の引き上げとなりました。
日銀は、経済・物価が見通しに沿って推移していった場合、1月に続いて追加利上げをする方針を明らかにしていることから、再度0.25%程度の引き上げがある可能性があり、今年1年間で0.5%程度の金利上昇は充分考えられます。
基準金利の上昇によって、借入金利が0.5%上昇した場合、毎月の返済額はどのくらい変わるでしょうか。
たとえば、4,000万円を返済期間35年で新規で借り入れる場合、金利が0.5%から1.0%に上昇すると、毎月の返済額は10万4000円から11万3000円となり、1万円程度増えることになります。
このように、1年待ったことで月々の返済額が1万円程度増えると考えると、少しでも早く購入した方が得に思えます。
しかし、住宅購入は、多角的な視点で検討する必要があるため、金利だけで判断するのは早計です。購入を先延ばしにすることで、物件価格が下がる可能性もあります。不動産価格は立地や物件の種類、購入時期など、さまざまな要因によって大きく変わってきます。
次項では、今が買い時かどうかを見極めるためのヒントとして、住宅価格に影響を与える主な要因について解説していきます。
住宅価格の変動要因
住宅価格はさまざまな要因で変動します。今後の住宅価格の動向を読み解くための材料として、価格変動にかかわる6つの要因を解説します。
建築費の高騰による影響
日本では、建築に使われる鉄鋼や木材などの多くを輸入に頼っています。近年は世界的なインフレに加えて円安の影響も重なり、建築資材が高騰しています。資材費は建築コストの約5〜6割を占めるため、その影響は大きく、住宅価格を押し上げる要因となっています。
これに加えて、人出不足による人件費も上昇もあります。今後この傾向はさらに加速すると考えられるので、新築マンション、新築戸建ての建築費は今後ますます上昇していくでしょう。
土地価格による影響
土地の価格は立地によって大きく異なります。都市部では人口の集中や投資先としての需要の高さから、土地価格は上昇傾向にあります。特に円安が続くと、海外投資家にとって日本の不動産は割安に見えるため、東京の一部エリアでは今後も価格上昇が見込まれるでしょう。
一方、地方では人口減少により需要が減っており、長期的に土地価格は下がっていくと考えられます。
このように、地域によって不動産市場の動向が異なり、今後ますます二極化が進んでいくでしょう。どのエリアを選ぶかが住宅価格に大きく影響するポイントとなります。
築年数による影響
住宅は新築でなくなった瞬間から2割ほど価格が下がると言われています。同じ広さ、立地でも中古物件を選ぶことで購入費用を抑えることができます。ただし、中古マンションの価格は新築マンションの価格に連動しているため、築浅物件は人気エリアではそれほど価格が変わらないことがあります。一般的には築年数が古いほど価格は下がっていくため、条件を整理して、築年数と価格の落とし所を見つけるといいでしょう。
また、中古物件は建物の管理状態が重要です。特にマンションは管理状況によっては、居住中に管理費や修繕積立金が大きく引き上げられる可能性もあります。せっかく物件を安く購入してもあとから高くつくこともあるので、購入前に管理状況はしっかり確認しましょう。
金利上昇による影響
住宅ローンの金利が上昇すると、購買意欲が低下して買い控えが起こるため、住宅価格が下がる要因となります。金利は住宅価格に影響を与える重要な要因です。
今年1月の追加利上げは、4月からの変動型の基準金利の引き上げをもたらしました。今後も日銀による追加利上げが行われる可能性は高いので、住宅ローン金利は上昇基調となるでしょう。
ただし、急激な金利上昇は、経済全体に悪影響を及ぼすため、政府が直ちに大幅な利上げに踏み切る可能性は低いと思われます。また、都心部のマンション需要は投資目的も多いため、現金購入であれば金利は関係ありません。金利上昇によって住宅価格が大きく下落することは現段階では考えにくい状況です。
税制改正による影響
税制改正は住宅価格に影響を与える要因になります。特に、住宅購入を促すための制度である「住宅ローン控除」の影響は大きいと言えます。現在、変動金利が0.3〜0.5%ほどで借りられる中、住宅ローン控除の控除率は0.7%であり、金利負担以上の控除が受けられる“逆ざや”状態となっています。今後、住宅ローン控除が縮小もしくは廃止されることがあると、住宅購入のモチベーションが下がり、市場全体で取引件数が減少し、住宅価格が下落する可能性があります。
2025年度税制改正では、子育て世帯などに対する優遇措置は、1年間、延長することが盛り込まれました。今後も子育て世帯や省エネ・耐震性にすぐれた「長期優良住宅」に対する優遇措置は続くと見込まれます。
2025年問題による影響
2025年問題とは、団塊世代が75歳以上の後期高齢者となることで、社会に影響を与える問題です。不動産市場では、団塊世代が保有する不動産が住み替えや相続で市場に大量に供給されることで、住宅価格の下落を招く可能性があります。
ただし、都市部では不動産需要の高さから価格下落にはつながらないと予想されます。一方、地方では買い手がつかない物件が増えることで長期的に不動産価格は下落していくと思われます。
二極化が進む住宅事情
住宅価格の変動要因を見ていく中で、二極化という大きな流れが見えてきたと思います。都市部は今後も住宅価格は上がっていき、都市部以外は長期的に下落していくと予想できます。
そのように考えると、金利が上がるから早めに住宅を購入するという考えは、本質から外れた枝葉の部分であるとわかります。エリアも購入する物件もすべて決定し、あとはタイミングだけであれば、早く買った方がいいでしょう。しかし、エリアを変える、物件を変えるだけで、住宅購入費用は大きく変動します。
二極化に注目すれば、都市部の物件を狙うなら早めに購入した方がよく、地方の物件なら購入を遅らせた方が安く購入できると言えます。
しかし、今後も価格が上がっていくと予想できる物件は、すでに高すぎて一般的な給与所得者は手が出ない状況です。一方で、待てば待つほど価格が下がる物件は、資産価値はないに等しいので、別の意味で手が出ないでしょう。
まとめ
住宅購入は、経済合理性だけを追求すると失敗することがあります。資産価値の維持や価格動向といった経済的な側面も大事ですが、「この街に住みたい」「こんな暮らしがしたい」といった希望も大事です。ライフステージや価値観によっては、資産性よりも暮らしやすさを優先する選択もあります。
住宅購入は一つの資産形成手段であると同時に、人生の質を高める手段でもあります。市場の動きを読むのは専門家でも難しいため、「これだ」と思える物件に出会ったときが、購入の好機とも言えるでしょう。自分と家族にとって最適な条件とタイミングを見極めることが大切です。
石倉博子 いしくらひろこ ファイナンシャルプランナー(1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP認定者)。“お金について無知であることはリスクとなる”という私自身の経験と信念から、子育て期間中にFP資格を取得。実生活における“お金の教養”の重要性を感じ、生活者目線で、分かりやすく伝えることを目的として記事を執筆中。ブログ「ファイナンシャルプランナーみかりこのお金の勉強をするブログ」も運営中! この著者の記事一覧はこちら

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