1932年発行。第二次世界大戦前の日本の世界地図が興味深い

2025年4月28日(月)19時0分 カラパイア


image credit: the National Library of Australia[https://nla.gov.au/nla.obj-359512647/view]


 今から93年前の1932年。第二次世界大戦前の日本で発行された世界地図が、海外で話題になっている。


 もちろん、当時の世界情勢は今とは全然違っていて、国境線や国の名前も同じじゃないところも多い。


 それに海外の情報が今ほど身近じゃなかった時代、誤解や偏見、間違った情報もきっと少なくなかったはず。


 というわけで、今回はこの100年近く昔に作られた世界地図を眺めてみよう。


1932年発行の漫画風に描かれた世界地図


 この地図は1932年(昭和7年)に新潮社から発行された、「一目でわかる 漫画世界現状地圖」[https://nla.gov.au/nla.obj-359512647/view]だ。現在はオーストラリア国立図書館のオンラインライブラリに掲載されている。



image credit: the National Library of Australia[https://nla.gov.au/nla.obj-359512647/view]


二つの世界大戦の間の緊張感漂うヨーロッパ


 まずヨーロッパを見てみよう。ノルウェーは世界一の捕鯨大国、空にはツェッペリン号が飛び、イタリアではムッソリーニとグランディがパスタを食し、東からはソ連の工業化を進めるスターリンがヨーロッパを睨んでいる。


 ドイツは第一次大戦で敗れたものの、それに屈せず「フランスのへそをヒヤヒヤさせている」とある。ヒトラーがドイツの首相に指名されるのは、この翌年のことだ。



image credit: the National Library of Australia[https://nla.gov.au/nla.obj-359512647/view]


大半が植民地だったアフリカ諸国


 アフリカに目をやると、「皇統連綿三千年万世一系の王国」として、アビシニア(現エチオピア)が紹介されている。


 エチオピアはアフリカの中で唯一、欧米列強による植民地化を免れた国。他は北部を除けば野生の王国というイメージが強そうだ。


 南アのダイヤモンドやサバンナの動物たち、エジプトのピラミッドなどはよく知られていたらしい。 



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ガンジーの存在感にすべて持って行かれる南アジア


 南アジアは「イギリス政府の頭痛の種」、ガンジーのインパクトが強すぎる。紅茶はあってもカレーがないのがちょっと不思議?


 アフガニスタンの下に見える「ベルヂスタン」は、現在はアフガニスタン・パキスタン・イランにまたがるバルーチスターンのことだろう。


 東南アジアに見える「シャム」とは今のタイのこと。前述のエチオピア同様、植民地にならなかった国だ。



image credit: the National Library of Australia[https://nla.gov.au/nla.obj-359512647/view]


オセアニアはカンガルーと大自然のイメージ?


 オーストラリアはカンガルーにカモノハシ。コアラやエアーズロック(ウルル)は知られていなかったのかな。


 冷凍肉とあるけど、オージービーフはこの頃から人気だったのだろうか。ニュージーランドはマオリ族。羊のイメージはなかったみたい?



image credit: the National Library of Australia[https://nla.gov.au/nla.obj-359512647/view]


アメリカの情報は盛りだくさん


 北米大陸。アメリカは野球にラグビー(アメフトじゃないのか)、カウボーイ。アル・カポネが牢屋の中にいる。「ドルがあり過ぎて不景気」だそうだ。カナダのメイプルシロップは、この当時は有名じゃなかったのかな。


 ちなみにこの年はロサンゼルスでオリンピックが開催され、日本は7個の金メダルを取った。カリフォルニアの位置には、日の丸をつけた選手たちの姿も描かれている。



image credit: the National Library of Australia[https://nla.gov.au/nla.obj-359512647/view]


地球の裏側・南米大陸


 南米はどうだろう。ブラジルは既に日本からの移民が存在感を増していた。リオデジャネイロは「南米のパリ」と呼ばれていたらしい。


 どの国も「革命が年中行事」と書かれている。カリブ海周辺は「金持ち連が悠然としてふかす葉巻の産地」。


 コロンビアには「パナマ帽」とある。1932年といえば、日本でもパナマ帽が愛用されていた時代なので、よく知られていたのかもしれない。



image credit: the National Library of Australia[https://nla.gov.au/nla.obj-359512647/view]


張り詰めた東アジア情勢


 そして日本を含めた東アジア。軍艦に囲まれた日本の象徴は、この当時も富士山と桜だけど、横に座っている人物は、時の内閣総理大臣斎藤実氏? わかる人がいたら教えてほしい。


 大陸では前年に柳条湖事件が起こり、満州国が建国された頃。「中華ソビエト共和国臨時政府」を樹立していた共産党の台頭もうかがえる。



image credit: the National Library of Australia[https://nla.gov.au/nla.obj-359512647/view]


海外の反応は?


 この地図はSNSや掲示板で拡散されており、実際に目にした世界の人々からは、さまざまな感想が寄せられていた。


ステレオタイプを描けるほど、日本に詳しく知られていない国もあるのがいいね
なんでグレートバリアリーフに日本人のダイバーがいるんだ?
アワビか真珠を採っていたのかも
真珠を採っていた漁師だね。彼らは戦争中は収容されて、その後強制送還された。プラスチックのボタンの製造コストが安くなってからは廃れてしまった
日本とアメリカが銃を向けあうライバルとして描かれているのが興味深いね
ヒトラーとヒンデンブルクがドイツをめぐって争う様子は面白いね。この地図はヒトラーが首相に就任する直前に発表されたみたいだ
この頃はまさにジャズの時代だった!
ボーランドのはショパンかな?
テキサスに関してはこの通り!
フィリピンも正確に描写されているね
パタゴニアにダチョウってどういうことだ?
スカンジナビアの北で横になっている巨人は誰?
極地探検家のロアール・アムンゼンだね。この地図が作られる4年前に行方不明になってる
モナコは何なんだ?(頭がサイコロになっている。おそらくカジノのイメージ?) 
シチリアの象徴がムンギベッドゥ(火山)だ。日本人はわかってるね
ビルマ(ミャンマー)が米になっているのは興味深いね。イギリスの植民地だった頃は、ビルマは世界最大の米の生産国だったんだよ
100年経ってもそれほど変わってないところもあるな
素晴らしいね。非常に詳細な描写と、当時の政治的な論評も見られる。1932年の軍備増強や世界情勢の緊張関係も示されていて、それが第二次世界大戦に繋がっていくんだ
ウォーリーを探せ!みたいだ
アフリカの動物たちの描写がすごくいい! 特に象は今まで見た中で一番可愛らしいよ
もっとプロパガンダ的なものを想像していたんだけどそうでもなかった
こうやってみんなで協力して意味を探るのは楽しいね
いやあ、ビックリするくらい正確だよ!
日本ってこの頃から「kawaii」漫画が得意だったんだね

 時代が時代だけにもっとプロパガンダ的な地図を想像した人が多かったようだが、意外と公平で正確な描写に、逆に驚いていたようだ。


 1924年(大正3年)にも、「世界新漫畫鳥瞰圖[https://www.facebook.com/share/p/1BRDbsPg4b/]」という似たような地図が日本で発行されている。



 1924〜1932年の8年間で「日本から見た世界」がどう変わったか、比べてみるのも楽しいかもしれない。


追記(2025/04/28):1932年の昭和の年が間違っていたため訂正し再送します。


References: Nla.gov.au[https://nla.gov.au/nla.obj-359512647/view]

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