モノが多くても快適に暮らせるイギリス流「足すインテリア」の極意とは

2025年4月28日(月)11時0分 大手小町(読売新聞)

モノを持たない「ミニマルな暮らし」は近年のトレンドです。ミニマルな暮らしを目指して、すっきりと片付いたおしゃれな部屋にしたいけれど、実際にはなかなかモノは減らせないし、思うほどおしゃれにもならない——。こうした嘆きは、インテリアを「足す」ことで解決すると提唱するのが、インテリアデザイナーの飯沼朋子さんです。このほど著書『イギリス人の部屋はなぜ物が多くても素敵なのか』(飛鳥新社)を出版した飯沼さんに、モノを足して快適な部屋を作るノウハウを聞きました。

飯沼さんは、イギリスでインテリアデザインを学び、デザイナーとして欧米人のクライアントを担当してきました。飯沼さんによると、日本人の多くは、「引き算(モノを減らす)」で部屋を整えるのに対し、イギリス人は「足し算(モノを足す)」で部屋を整えるそうです。

なぜ、イギリス人は「足す」のか。飯沼さんは「日本とイギリスでは、インテリアデザインのスタート地点が違うから」と説明します。

和室には、柱や障子、畳など縦横のラインがあり、ふすまには絵が描かれ、家が建った時点でインテリアデザインが完成しています。また、押し入れがあるので収納家具は少なくてすむし、畳での生活なので椅子もいりません。

「日本人は『モノが少ない=住みやすい』という考えが根底にあるので、洋風の暮らしになっても、片付ければ、すてきな部屋になると思い込んでしまいがちなんです」

一方、洋室は白い壁に囲まれた無機質な空間からスタートします。壁には絵や写真を飾り、ソファにはたくさんのクッションを配し、テーブルには小物を置いて部屋らしく整える必要があります。このようにしてイギリス人は、無機質な空間に個性や温かみを足し、居心地を良くしようとするのだといいます。

(1)色やモノが少ないミニマリストの部屋(2)パーソナルチェア、ラグ、クッションなどが足されている部屋(3)アートやランプが足され、オレンジと青が印象的な部屋(4)壁に色があり、ソファや小物がたくさん足されたカラフルな部屋

飯沼さんは「モノが多くて散らかってしまうのは、収納する家具が足りていないからです。家具を足してモノを収納すれば部屋は整います。家具を増やすと部屋が狭くなるというのは“引き算”の考え方です。自分好みのインテリアなら、足していくことで気持ちの良い空間になります」と話します。

それでは、どこに何をどのように足せばよいのでしょうか。飯沼さんにコツを教えてもらいました。

「まず、『フォーカルポイント』を作りましょう。フォーカルポイントとは、ドアを開けて最初に目に飛び込む、部屋の第一印象を決める場所のことです。最初はリビングに作ってみましょう」

ソファがベーシックな色の場合、ラグを足すと見せ場としての完成度が高まる

フォーカルポイントは家具の配置によって変わります。正面の壁際にテレビを置いて、その前にソファを配置すると、部屋に入った瞬間にソファの背中が見えてしまいます。そこで、「ようこそ」と歓迎する雰囲気にするために、ソファの座面が入り口を向くようにします。アクセントとしてクッションやラグを置くと、個性が出て楽しい空間になります。無機質なテレビは、ドアから見えにくい場所に置くとよいそうです。

フォーカルポイントを作ると、次のような効果があります。

(1)部屋全体の印象が良くなる最初に目に入るアイテムで部屋の印象が決まります。好きな景色であれば、居心地良く感じられます。

(2)視線が定まり、心が落ち着く空間にメリハリが生まれ、視線が定まることで、心が落ち着きます。

(3)見たくない部分に視線が行かない視線を見たい部分に誘導すると、散らかっている部分が気にならなくなります。

好きな小物を並べるコーナーを作る

部屋が狭くてソファが置けない場合には、1人がけの椅子(パーソナルチェア)を入り口に向けて置いてみます。椅子の背にファブリックを飾り、横にフロアランプを置くと、ウェルカムな雰囲気を作り出せます。棚の上などに小物や写真を飾るスペースを作ってもいいでしょう。フォーカルポイントは一つとは限りません。例えば、玄関のドアを開けたときに見える壁や、キッチンの壁、トイレの壁にも作れます。

「わたしにはセンスがないから無理」と思う人もいるでしょう。飯沼さんは「センスは特別な才能ではない」と言います。「誰にでも、個性というセンスが備わっています。ステキだなと思ったモノ、大好きなモノは、その人のセンスそのものです。大切なのは、自分の個性を生かすこと。目と心を楽しませるアイテムを少しずつ増やしていくと、大好きな空間が広がります。シンプルな部屋も良いですが、好きな景色に囲まれた暮らしもすてきですよ」

(読売新聞メディア局 後藤裕子)

プロフィル飯沼朋子(いいぬま・ともこ)建築士、インテリアデザイナー、アートアドバイザー。聖心女子大学卒。総合商社に勤める傍ら、建築・インテリアを学ぶ。英国では、The Interior Design Schoolにてインテリアデザインを学び、Professional Development Diploma取得。Sotherby’s Institute of Artでは アートビジネスを学ぶ。輸入壁紙のショールーム勤務、インテリアデザイン事務所勤務を経て、2002年に独立。大使館関係者や欧米人などのクライアントを担当し、また英国で学んだ経験から、西洋風のスタイルや、東洋とのミックススタイルを得意とする。セミナー講師多数。企業向けアドヴァイザリー業務なども行う。

『イギリス人の部屋はなぜ物が多くても素敵なのか』(飛鳥新社/税込み・1760円)

大手小町(読売新聞)

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