新生活から1カ月、誰もが皆「新人」だった…大物アーティストたちのデビュー曲で癒される
2025年4月30日(水)6時0分 JBpress
(小林偉:放送作家・大学教授)
レジェンドたちの“新人時代”
新年度が始まって早1カ月が過ぎようとしています。3月に学校を卒業し就職した、いわゆる“新社会人”の皆さんにとっては、さぞかし長く感じた1カ月だったのではないでしょうか?
近年の厚生労働省の統計によると、大卒新社会人の入社1年以内での離職率は12.2%と、10人に1人以上が会社を辞めているそうです。中には入社3日以内という剛の者も少なくないそうですから大変です。さらにこれが入社3年以内となると34.9%。実に3人に1人が退社している計算。最近は、会社側による様々なハラスメント対策などが進んでいる状況にあってのこの数字は、厳しいものと言わざるを得ません。
一方で新人側にとってみれば、入社前には分からなかった社内の人間関係や、具体的な労働環境とのギャップに耐えられなくなって・・・というのも、3回の転職を経験している筆者にとって共感できることではあります。
いまやベテラン社会人である会社の上司や先輩たちも、誰もがかつて新人であって、様々な経験を経て、現在に至っているワケです。そして順風満帆に、幸せな社会人生活を歩んできたなんて方は稀だとも言えます。
そこで今回は“新社会人”の皆さんへのメッセージも込めて、音楽ファンの筆者から、今では世界的なアーティストであるレジェンドたちの“新人時代”の曲にスポットを当ててみたいと思います。題して「誰もが皆、新人だった」。
まずは20世紀、否、史上最大のロックバンド・ビートルズから行ってみましょうか。
ビートルズのデビュー曲はこの『ラブ・ミー・ドゥ』という曲ですね。1962年10月のリリースです。ファンの間ではよく言われることなんですけど・・・ご存知の通り、この後、たくさんの名曲を残したビートルズにしては地味な曲じゃないですか? 他に候補として考え得る曲はあったと思うのですが・・・。
ちなみにリード・ヴォーカルはポール・マッカートニー、印象的なハーモニカを吹いているのはジョン・レノンですが、可哀想なのはドラムのリンゴ・スター。彼の演奏にプロデューサーが満足せず、アンディ・ホワイトというスタジオミュージシャンが代役として叩き、リンゴはタンバリンを叩かされています。彼がこの時点で「辞めてやる」となっていたら、音楽の歴史は変わっていたかも。また、記念すべきデビュー曲であるにもかかわらず、後にほとんどライヴで取り上げなかったことからも、彼らにとっては、ちょっとした“黒歴史”だったのかもしれませんね。
続いては、いわばそのビートルズのライバル、ローリング・ストーンズのデビュー曲です。
結成から実に60年以上というローリング・ストーンズのデビュー曲はこの『カム・オン』という曲でした。1963年6月のリリース、ビートルズから遅れること8カ月後です。
ビートルズはオリジナル曲でのデビューでしたが、こちらはオリジナルではなく、彼らが敬愛するロックンロールの創始者の一人、チャック・ベリーのカバーですね。当時は、カバー曲でデビューするのは結構多いパターンだったんですよね。ちなみにオリジナルのチャック・ベリーのヴァージョンはこちら。
62年経った現在に至るまで、一度も解散せずに活動している、恐らく世界最古のロックバンドである彼らにとっても、その船出は華やかとは言い難いものだったと思います。
続いては、クイーンのデビュー曲をお聴きいただきましょう。
『キープ・ユアセルフ・アライブ』、“炎のロックンロール”という邦題がつけられたクイーンのデビュー曲、1973年7月のリリースです。
最初っからクイーンっぽさが全開となっている、なかなかの佳曲だと思うのですが、当時本国イギリスではまったくヒットせず、むしろ遠く離れた日本での方が受け入れられたというのは、映画『ボヘミアン・ラプソディ』でも描かれていましたっけ。いまやクイーンというバンドはイギリスの財産のようになっているんですけどねぇ。
次は、今年9月に来日公演も控えているスティング擁するザ・ポリスのデビュー曲です。
ザ・ポリスのデビュー曲『フォール・アウト』、1977年5月リリースです。こう言ってはナンですが、まだまだ粗削りな素人くさい感じですよね。リード・ヴォーカルのスティングの声もまだ若くて、今の渋い感じとは全然違います。
ギターも、後に彼らの黄金時代を支えたアンディ・サマーズではなく、ヘンリー・パドバーニという初代ギタリストが担当しています。この曲もその後、ほとんどライヴで取り上げられていないので、“黒歴史”系かもしれませんねぇ。
続いては、現代最高峰のバンドとも言われるU2のデビュー曲。
『アウト・オブ・コントロール』という曲。1979年9月のリリースです。こちらもザ・ポリスと同様、かなり素人バンドっぽい感じで、ヴォーカルのボノの声もか細く、少々不安定なところもありますよねぇ。それでも、仄かに彼らならではのカリスマ性が感じられもします。ちなみにこの曲は本国アイルランドのヒットチャートでは最高19位まで上がっていますし、今でもたまにライヴのセットリストに加えられています。
最後は、今や女性アーティストの大御所の一人・マドンナのデビュー曲。
『エヴリバディ』という曲、1982年10月リリースです。彼女もデビューしてから43年も経っているんですねぇ。イントロから80年代な感じが全開なのが、個人的には懐かしく感じますなぁ。
声も幼い感じで本当に初々しく、最近の凄みのあるヴォーカルとは全く違いますねぇ。ただ、その後の彼女を形作る要素が既に垣間見られるところは興味深いです。
ということで、今では“レジェンド”の域に達している海外の超大物アーティストたちのデビュー曲特集でしたが、こうして並べてみると皆、勢いだけが突っ走っている感もあり、やはり「誰もが新人だったんだなぁ」という感慨がありせんか?
そう、新人の皆さん、キャリアはまだ始まったばかり、「これから」ですよ。
筆者:小林 偉