青木さやか「ギャンブル依存症について考える。〈極度の興奮〉を求め、パチンコがやめられなかった。嘘をつくのも一つの癖だ」

2024年5月9日(木)12時0分 婦人公論.jp


(写真提供◎青木さん)

2024年3月、大谷翔平選手の専属通訳だった水原一平がさんが違法賭博に関与したとしてドジャーズを解雇、大きな衝撃が走りました。その後も「ギャンブル依存」の問題が大きく報じられ、青木さやかさんも『news23』で自身の経験について語りました。今回は「ギャンブル依存だった過去を持つ人」として振り返って綴ります。

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ギャンブル依存症は病気である


4年前、この『婦人公論.jp』の連載で「パチンコがなかなかやめられなかった過去があった」という内容のエッセイを書いたところ、翌日にはヤフーニュースで「ギャンブル依存症克服タレント!」となっていたことに驚いた。

依存症かどうかというのは自己判断はできない。医師の診断があってはじめてその病名がつくことになるので、正確にはわたしはギャンブル依存症ではないのだが、おかげさまでギャンブル依存症関連のイベントや取材が増え(どんな経験も仕事になるのだ)ギャンブル依存症とはどんなものなのか、おおまかに人に説明できるくらいまでは学習した。

まず、ギャンブル依存症というのは病気である、ということ。

やめられないのはだらしがないからだ、意志が弱い、とか言うことではないらしい。誰もがなる可能性があるというもの。 
「花粉症になる人とならない人がいるようにね、ギャンブル依存症になる人とならない人がいるんだ」と説明されることもある。

青木さんのパチンコに関するエッセイはこちら

ギャンブル依存症の癖


かつて、わたしはパートナーに嘘をついてパチンコに通っていた。
多分、娯楽の範疇をこえてやっているようにみえたのだと思う。
そもそもパートナーが、わたしにパチンコを教えてくれたのだ。

だが、彼は程よくパチンコと付き合い、わたしはその面白さに連日通い詰めた。
一緒に行くこともあったが、早く切り上げて帰ろうとするのを「もう少しで出るから!ここまでやって勿体ないから!」と、よくわからない理屈で、わたしだけ閉店まで粘ることもあった。

「30分で帰るから」「この一箱が終わったら帰る」「明日は行かない」「もう行かない」

これらの嘘をつきながら、しかし、あっという間にバレて、「ごめんごめん」で済ませていた。

嘘をつくのはパートナーを失いたくなかったからであり、心配させたくなかったからであり、またパチンコをやめる気もなかったからだ。

ギャンブル依存症の癖の一つに「嘘をつく」というものがあるようだが、こちらはわたしも然り、よく理解できる。

ギャンブル依存症の癖
本連載から生まれた青木さんの著書『母』

親にも嘘をついた


わたしは親にもお金を借りていたことがある。

最近のインタビューで
「ご両親には、ギャンブルでお金がなくなったから、ギャンブルで取り戻したいから貸してほしい、と頼んだんですか?」
と聞かれた。

「いやいや、そんなことを言って貸してくれる親はいないでしょう!ははは、まあ生活費だとか嘘をついて借りるわけですよ」
と答えると、

「なるほど、嘘をついて、親からお金を借りていたんですね」
と深刻にインタビュアーから言われてしまうと、まあ、はい、そういうことに、なります、と下を向くしかない。

嘘を一つつくと、次の嘘のハードルは、かなり下がる。それに一つ嘘をつくと、それを守るために嘘の上塗りをしていかなくてならないので、自分でも、何が嘘だったのかわからなくなったりして、嘘をついている、という罪悪感をあまり感じなくなっていたように思う。

ギャンブルから抜けられない理由


ギャンブルから抜けられない理由の一つは
「過度な興奮状態を感じたいから」
ということも学んだ。

たとえばパチンコでいえば、爆音と光、そして「大金が当たるかもしれない!」と感じたときの興奮、緊張感。

生活の中で幸せだと感じることは、ギャンブル以外にももちろんある。

子どもとの時間、いい景色、植物の成長、心地よい風…。

だが、それらは非常にしみじみとした幸せであり、ギャンブルで感じられる「極度の興奮」とは全く違うものなのだ。

だから、わたしはきっと、ギャンブルに行きたいな、と今も思っているのだと思う(行ってないけど)。


(写真はイメージ。写真提供:photoAC)

婦人公論.jp

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