不登校にはいくつもの理由が重なっている。友人関係、先生、勉強…不登校ジャーナリスト「昼夜逆転したら、すぐになおさず夜生活を楽しんで」
2025年5月20日(火)12時30分 婦人公論.jp
(写真提供:Photo AC)
文部科学省によると、令和5年度の小・中学校における不登校児童生徒数は34万6,482人で過去最多となったそう。しかし、自身も不登校経験者である不登校ジャーナリスト・石井しこうさんは、「学校へ行っても行かなくても、結果的にはあまり関係ありませんでした」と語ります。そこで今回は石井さんの著書『学校に行かなかった僕が、あのころの自分に今なら言えること』から一部を抜粋しお届けします。
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不登校の理由で一番多いのは何?
不登校の理由で一番多いのは何か。「具合が悪かった」「朝、起きられなかった」という体調不良をあげる人がもっとも多いでしょう。しかし体調不良は「理由」ではなく結果であり、1つの現象にすぎません。
一方、文科省はどうとらえているでしょうか。
文科省の調査によれば、不登校の理由は「無気力」や「やる気が出ない」など、本人に原因があるかのような理由がトップです。この結果には多くの専門家が疑問を投げかけています。
そもそも文科省調査は不登校した本人ではなく教師が回答しているため実態とズレやすいんです。そして「無気力」や「やる気が出ない」というのも、結果(現象)であり理由ではありません。何かしらの理由があって、学校生活に対して「やる気が出ない状態」に至ったのですが、その理由が見過ごされています。
「いろんな理由が重なったから」が一番多かった
私が取材してきた体感でお伝えすると「いろんな理由が重なったから」が一番多かったです。「いろんな理由」とは、友人関係、先生、勉強、部活やクラブ活動、運動会、遠足、給食など。また教室内の騒音、家のなかが険悪、母親と離れるのが怖い、という人もいました。
大事なのはここからで、今あげた理由が、いくつも重なって不登校になるのです。
理由がたった1つだけ、という人には会ったことがありません。たいていの人は、3つから4つぐらいの理由が重なり、いつのまにか心が疲れ果てて行けなくなります。
嫌いなこと、離れたいことを目の前にしたとき、人は複雑な心境をじつは持っているものです。
不登校の理由も今あげたように、さまざまな見解や調査があります。だからこそまだ答えが出ていない疑問でもあるでしょう。
何が正しいのか、あなたにもし不登校経験があれば、一度、深く考えてみるのはいかがでしょうか。
しこうポイント!
取材した体感から言えば「いくつもの理由が重なって」が多い
不登校してから生活リズムが逆転、夜しか安心できないのはなぜ?
昼夜逆転は、不登校生活の典型パターンの1つです。今すぐなおさなくても大丈夫。安心してください。
私も昼ごろに起きて深夜まで活動する「夜型」が不登校生活の基本リズムでした。大人になった今は「朝型」に切り替わりました。永遠に夜型が続くものでもありません。
しかし、なぜ夜しか安心できないのか。それは「みんなが眠っているから」です。私もそうでした。日中、起きていると、どうしても「今は英語の授業だな」とか「自分だけが、がんばっていない」と思ってしまいます。とくに朝はつらい。家族は忙しく用事をすませながら、家を飛び出していく。しかし自分はなんの予定もないし、する気もない。みじめに感じるときすらあります。
(写真提供:Photo AC)
それにくらべて夜はなんとすばらしいことか。みんな寝静まっていますから、何をするにも安心感がちがいます。そういえば、明日、用事はないのだから夜中まで起きててもいいんだ、と自由な気持ちになれます。
もし夜中の生活で、「ヒマだな」と思ったら、親との「夜散歩」はおすすめです。私が取材した親子は、父と息子の夜中の散歩を楽しんでいました(未成年が深夜に1人で出歩くのはやめてください)。
ふだん話せないことも散歩中だと話しやすいもの。散歩にかぎらず、夜生活が楽しめるほど、昼の生活もそのうち苦ではなくなるはずです。不安を感じない環境に、自分の身をおいてあげましょう。
昼夜逆転を解消する方法
一方、昼夜逆転を一時的にでもなおしたい場合はどうすればいいのか。解消方法をお伝えします。
早起きしたい日の数日前から、起きたい時間に目覚まし時計をセットして「根性」で起きるのです。
1日目は、日中に寝てしまいますが、それでも大丈夫。私の体感では、3日ほどくり返せば起きたい時間に体が慣れてきます。「早寝早起き」と言いますが、早寝は意図的に行えず、早起きだけは根性で可能、というのがポイント。早起きしたいという理由で早く布団に入っても、鼻息が荒くなるだけで眠れません。
強引には寝れないので、強引に起きるのが解決策です。アニメの最終回を見たいとか、イベントに行きたいとか、早起きが必要なタイミングに、ぜひ挑戦してください。
しこうポイント!
夜はみんなが「お休み」しているから
※本稿は、『学校に行かなかった僕が、あのころの自分に今なら言えること』(大和書房)の一部を再編集したものです。
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