親から「学校なんて行かなくていい」と言われてモヤモヤする理由とは。苦しいときほど人は休みづらくなる

2025年5月21日(水)12時30分 婦人公論.jp


(写真提供:Photo AC)

文部科学省によると、令和5年度の小・中学校における不登校児童生徒数は34万6,482人で過去最多となったそう。しかし、自身も不登校経験者である不登校ジャーナリスト・石井しこうさんは、「学校へ行っても行かなくても、結果的にはあまり関係ありませんでした」と語ります。そこで今回は石井さんの著書『学校に行かなかった僕が、あのころの自分に今なら言えること』から一部を抜粋しお届けします。

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親の態度にモヤモヤ。「行かなくていい」と言われても……


「学校なんてもう古い」「塾で勉強すればいい」「フリースクールへ行けばいい」と親から言われてモヤモヤして、なんだか傷ついた、という話。実は、取材でもよく聞いてきました。

あなたはただ、「苦しかった」という気持ちを聞いてほしかっただけですよね。吐き捨てるように「学校なんて行かなくていい」と言われても、その苦しかったプロセスを否定された気持ちになるのです。

15歳から25歳の若者を対象にアンケート(認定NPO 法人D × P による調査)をとったところ、「学校に行かなくてもいい」という大人のメッセージに「モヤモヤする」「よくないと思う」と回答した人は40.1%いました。「よくないと思う」と回答した理由としてあげられたのは「学校に行かなくていいと言うだけでは無責任」「腫れ物にさわるように優しくされてる気がする」といった意見。一方、「よいと思う」と回答した人は45.3%。「自分を苦しめてまで行かなくてもいい」などが理由としてあげられていました。

結果を受け、D × P は「休めばいい」「行かなくちゃいけない」と一概に言うのではなく、まずは本人の気持ちを受けとめ、否定せずにかかわり、ともに考えていくことが大事だと訴えていました。

ムリに学校へ行けとは言えない


私も同じ意見です。メディアや多くの人前で「不登校でもちゃんと休めば大丈夫」だと訴えてきた1人として反省しています。この先は、言い方を考えたいと思います。

でもね、苦しいときほど人は休みづらくなります。がんばって行くことを否定するわけではありませんが「ドクターストップ」をまわりにいる大人がかけることも必要です。

「休む道」もあること。うざいかもしれませんが、これからも伝えていこうと思うのです。少なくとも「学校は苦しくても行かなきゃダメだ」とは言えません。

ムリして学校へ通って奪われた命があまりに多いと私は思っていますから。

しこうポイント!
ムリに学校へ行けとは言えません

不登校が続いてて勉強もできない、こんな自分で親に申し訳ない


なんにもできなくなる状態、とてもよくわかります。

私も、中学で不登校をしたときに「教科書が読めない!」と焦った記憶があります。不登校でも勉強しなきゃと教科書を開いて読もうとする。でも、なに1つわからないわけです。今まで勉強していたことも、テストで高得点を取っていた範囲の勉強もまったくわからない。だんだんと教科書をめくることすら、できなくなりました。


(写真提供:Photo AC)

私の知り合いで「立ち上がることができなかった」という人もいました。小学生のころにいじめを受けて不登校したものの、中学校では「初日から行こう」と決心。入学式の日、制服を着て、筆記用具をカバンに入れ、さあ立ち上がろう……としても体が動かない。「どうしよう、動けない」と思ったまま、お昼になり、気がつけば入学式も終わっていたそうです。不登校など、精神的なダメージを負うと、「何もできない」というときがくるみたいなんです。

そして、「何もできない」と焦りながらも、いろんなことをあなたは考えていたはずです。よく思い出せないかもしれませんが、今の状況をどうしたらいいんだと思う反面で、とても大事なことを考えていたはずなんです。なぜ私は学校へ行けないんだろう、大人になるにはどうすればいいんだろう、勉強ってなんだろう、自分はどんな人間になるんだろう、などなど。

あの時期に得たものが人生の原資になっている


今の自分は「何もできない」とあなたは思うかもしれませんし、私も同じように思っていました。自分はダメ人間だなと。

ただ、振り返れば、あれは「闘い」でした。受け入れがたい事実と相対したときにどうするかと考える。これは人生にとって避けられない闘いの1つみたいなんです。

そして希望が1つあります。不登校の先輩でもある映画監督・押井守さんは、学校へ行かず布団のなかにいた時間について語っています。

「あの時期に得たものが人生の原資になっている」 と。きっとあなたも同じような時間を送っているはずです。両親はまだ焦りもあるので、あなたの闘いを理解するのに時間が必要かもしれません。でもきっとわかってくれる日がきます。あなたは「何もできない」と闘っているのだと。健闘を祈っています。

しこうポイント!
立ち上がれないけれど、あなたは闘っているんです

※本稿は、『学校に行かなかった僕が、あのころの自分に今なら言えること』(大和書房)の一部を再編集したものです。

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