大腸がん発症、腸内細菌が出す毒素「コリバクチン」が関係…細胞の遺伝子を傷つける性質
2025年5月24日(土)8時46分 読売新聞
日本人の大腸がん発症に、特定の腸内細菌が出す毒素が関係しているとの研究結果を国立がん研究センターなどの国際共同研究チームがまとめた。大腸がんの新たな予防法や治療法の開発につながることが期待される。論文が科学誌ネイチャーに掲載された。
大腸がんは、日本人がなるがんの中で患者が最も多い。1年間で新たに診断される患者数は14万人を超え、世界でも3番目の多さだ。
同センターがんゲノミクス研究分野の柴田龍弘分野長らのチームは、英国の研究機関が主導する国際共同研究に参加。日本とカナダ、ブラジル、ロシア、タイなど11か国計981人の大腸がん患者について、がん細胞の遺伝子変異を分析した。
この結果、日本人28人のうち50%で一部の大腸菌などが出す毒素「コリバクチン」による特有の変異が確認された。他の国の平均19%に対し、2・6倍だった。この毒素は、大腸の細胞の遺伝子を傷つける性質があることがわかっている。
ただ、がん発症にこの変異がどの程度関与しているかは不明で、日本人に多い理由もわかっていない。また、11か国の患者について変異があった割合を年代別に比較すると、最も高いのは40歳未満で、高齢に伴い低くなる傾向もみられ、若年世代のがんに関係している可能性も示唆された。
吉住朋晴・九州大教授(消化器外科)の話「毒素がどのようなタイミングで細菌から分泌され、どのくらいの時間、腸内に存在すると発がんに影響するのかなどが解明されれば、発がん予防に役立つ可能性がある」