巨人・田中瑛斗、甲子園大声援「黙らせてやろうと」炎の無死満塁斬り がん闘病乗り越えた母に親孝行

2025年5月23日(金)5時0分 スポーツ報知

8回2死満塁、大山を三振に仕留め、雄たけびを上げる田中瑛(カメラ・今成 良輔)

◆JERA セ・リーグ 阪神2ー3巨人=延長11回=(22日・甲子園)

 巨人が連夜の4時間超の死闘を制し、阿部慎之助監督(46)の通算100勝を飾った。同点の8回、無死満塁の大ピンチで投入された田中瑛斗投手(25)が、Gキラーの森下を宝刀シュートで併殺打、大山を空振り三振に仕留め無失点で切り抜ける好救援。今季7度目の延長戦に持ち込み、11回に門脇誠内野手(24)の勝ち越し三塁打で決着をつけた。3年ぶりに甲子園で阪神に連勝し、今季初の同カード勝ち越しを決めた。

 これ以上ない大仕事で、信頼に応えた。田中瑛斗の10球がチームを救った。同点の8回無死満塁、打席には森下。「相手の応援が自分の応援と思って。めちゃくちゃうるさいなと思いましたけど黙らせてやろうと思って投げました」。絶体絶命の危機を無失点で切り抜け、完全アウェーの甲子園で絶叫した。延長、勝利へつなげた10球。現役ドラフトで発掘された新星が、阿部監督の100勝目に花を添えた。

 容赦ない内角攻めだった。石川がピンチを招き、ブルペンの電話が鳴った。まずは森下を初球から6球連続、内角への150キロ前後のシュートで攻め切り、三—捕—一の併殺。2死を奪い、続く佐藤輝を敬遠して再び右の大山と勝負した。ここでも超強気の3球連続シュートで追い込み、最後は日本ハム時代から得意とする外角スイーパーで空振り三振。「遊び球なし。結果がつくまでシュートでいこうと」。巨人が苦しめられてきた虎の主軸2人を、右殺しのエイトマンが完璧に封じた。

 右打者の懐をえぐるシュートは、捕手の甲斐も「すごい」とうなるほど。本来は器用に8球種を操るが、スタイルチェンジを促してくれたのが阿部監督だった。希少なシュートの使い手として、キャンプ中から一芸にできると自信を持たせた。対右打者と起用法も明確化。「監督からの信頼はものすごく力に変わる。『武器にしろ』って。すごいうれしかった。監督の助言が、僕の生きる道を広げてくれた」。死球なら押し出しの状況でも、無心で内角を攻め続けられる投手になった。

 人生をかけ、親孝行をしている。昨年、地元の大分に住む母・厚子さんががんと診断された。早期発見と懸命な闘病で幸い回復したが「頭真っ白で超焦って。あぁこうやってオカンって亡くなるのかなって。『俺、親孝行してないわ』って思ったんです」。今でも帰省の度に自家製ゆずこしょうから揚げを振る舞ってくれる最愛の存在。「『欲しいものは何でも言って』って言っても、安いヘナチョコのを選んでくる」と優しさに感謝は尽きない。母の日は高級電気治療器と段ボールいっぱいに詰めた巨人グッズをプレゼント。何より、1軍で輝く姿が親孝行になると分かっていた。

 9戦連続無失点で大勢に次ぐチーム2位の12ホールド目。巨人は3年ぶりに甲子園で阪神に連勝し、同カード今季初の勝ち越しを決めた。日本ハム時代は7年間で10登板だった男は「チームのためにゼロを刻むだけです」。育成落ちも経験した25歳が、新天地で代えの利かない存在になっている。(堀内 啓太)

掛布雅之Point

 地響きのような大歓声の中、無死満塁でクリーンアップ。田中瑛には失礼ながら、無失点で切り抜けると思わなかった。「僕はこれで生きていくんだ」とシュートという武器を信じて投げきった投球は見事だった。森下も大山もシュートを待ち構えている上に、死球なら押し出しの制球ミスが許されない場面。勇気を持って内角を攻めたメンタルの強さに感心させられた。

 ◆田中 瑛斗(たなか・えいと)1999年7月13日、大分・中津市生まれ。25歳。柳ケ浦から2017年ドラフト3位で日本ハム入団。21年オフ育成で再契約。22年7月支配下復帰。184センチ、84キロ。右投左打。年俸750万円(推定)。

スポーツ報知

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