VR鑑賞により文化財への興味が促進…凸版・早大が検証
2019年9月12日(木)9時45分 リセマム
文化財VRコンテンツの鑑賞者に与える影響についての検証は、凸版印刷と早稲田大学理工学術院河合隆史教授の研究室による共同研究において実施。特に文化財のVR表現による興味や関心、理解などへの影響を実験的に検証することで、文化を伝達するコミュニケーションメディアとしてのVRの有効性を評価することを目的として行った。
今回の研究ではシアター型のVR表現を対象とし、VRの鑑賞前後に日本文化の特徴を含む静止画像を呈示。視線計測機能付きVRヘッドセットを用い、VRおよび静止画像鑑賞中の実験参加者(15例)の注視点を測定・解析し、「見方」や主観的な好ましさがどのように変化するかを確認した。
実験では、国宝「八橋蒔絵螺鈿硯箱」を対象としたVR作品「日本工芸の名宝 色絵月梅図茶壺・八橋蒔絵螺鈿硯箱」を使用。コンテンツでは硯箱の外観や内部構造に加え、硯箱の内側から外観を透過して鑑賞するといったVRならではの視点を、ナレーションと共に表現した。また、日本文化の特徴を含む静止画像には、「和舞踊」「和食器」「和室」の3種類を選定した。
視線計測の結果から、VR鑑賞後は画像に含まれる特徴領域への注視時間の延長が認められた。実験後のインタビューからは、VR鑑賞後に和服や食器のテクスチャに気づき、見るようになったという意見があり、静止画像の鑑賞後に求めた質問紙への回答からも、VR鑑賞後の静止画像に対する興味深さの上昇が認められた。
また今回の研究から、VRコンテンツの対象以外の文化的類似性を有した対象への波及効果が認められた。このことは、VR表現が文化財の「見方」を変化させ、「興味や関心」を増進させる影響源になり得ることを示唆しており、換言すれば、文化財とのコミュニケーションにおけるVR表現の有効性を示していると考えられるという。
凸版印刷は今後、VRコンテンツを文化財への興味や関心を増進させるツールとして、文化の魅力発信や観光コンテンツなどに活用し、訪日外国人など対して日本文化の理解向上を促進することに応用するとしている。
なお、この研究成果は、9月11日から13日に東京大学で開催される日本バーチャルリアリティ学会第24回年次大会にて発表する。