まるでインド映画? ケンカ→仲直り→最後はみんなで楽しく踊る...岩手の郷土芸能「鹿踊」がかなりハートウォーミング

2023年10月3日(火)8時0分 Jタウンネット

突然だが、読者の皆さんにひとつ、「あらすじ」を読んでもらいたい。

ある女性を巡って、ケンカを始めた男たち。
争う彼らの前にあらわれたのは、リーダーだった。
リーダーは彼らを説得し、仲直りさせることに成功。そして最後は、みんなで楽しく踊ったとさ。

皆さんの脳裏によぎったのはどんな光景だろうか。もしかしたら最後の1文で、かなりボリウッドな気持ちになったかもしれない。

しかしコレ、実は「日本の伝統芸能」の演目である。

こちらは、漫画「あおのたつき」の作者・安達智さんが自身のツイッターアカウント(@Sato_adachi)で、2022年9月11日に投稿した動画。「こんな演目が300年前から演じられてたんだと心温まる伝統芸能です! 鹿踊」と、コメントしている。

動画には、こんな声も寄せられている。

「おお東北の鹿踊りだ!いいなぁ!」
「鹿踊りというんですね、カッコいい!! この世ならざる者感がいいですね!!」
「カッコよくて痺れました」

安達さんは岩手県一関市で開催された「鹿踊」のワークショップに参加したという。

いったいどんなワーウショップだったのか。Jタウンネット記者は、投稿者・安達さんと、ワーウショップ主催者・蜂谷淳平さんの話を聞いた。

大地を清め、邪気を払う「ヘンバイ」

年間約2万頭もの鹿が駆除され、その多くが廃棄されているという岩手県。2022年、先人達が守ってきた自然への感謝と畏敬の気持ちを見直し、駆除された鹿皮で商品を作り、心と経済の循環の輪を広げるプロジェクト「山ノ頂」が始まった。

スタートは同年5月。クラウドファンディング(目標金額100万円)を募ったところ、約1か月で5倍以上の金額を集めて達成。そのリターンとして用意されていたのが、鹿踊体験だった。

投稿者・安達さんは縁があって誘われ、9月11日、一関市の骨寺村荘園遺跡で開催されたワークショップに参加することになったという。

「大地を踏みしめる足捌きを反閇(へんばい)と言って邪気を祓う意味があること、ササラを大地に当てることも、鹿の髪にあたるザイを振り回すことも、五色の帯にも、頭上の華鬘も、最初はただ趣があるなあと思って眺めるだけだった物全てに願いが込められた意味がある事を知り、科学が未発達で明日を生きる事に今より命懸けだった時代、人々がどんな願いを込めて舞ったか、300年以上の当時の人達の祈りを肌で感じれるような感覚を覚え感動しました」(安達さとさん)

観ているだけでは分からないことが、実際に演じてみることによって、理解でき、実感できる、という貴重な体験となったようだ。

次に、Jタウンネット記者は、「山ノ頂」プロジェクトの主催者・蜂谷淳平さんに電話した。蜂谷さんは京屋染物店(一関市)の専務として、全国の祭り衣装の制作・祭りの文化継承などのために活動している。鹿踊ワークショップについては、次のように語った。

「鹿踊には300年以上の伝統があり、岩手県の郷土芸能として認められている存在です。ただ最近のコロナ禍で、ここ3年ほど上演する機会がすっかり減ってしまったことに、危機感を感じていました。鹿踊をもっと身近に感じてほしい、というのが、今回のワークショップの大きな目的です」
「身につける衣装は15キロほどあります。その衣装を着て、反閇という大地を踏みしめる所作を繰り返します。大地を清め、邪気を払うという、重要な意味が込められています。太鼓の重低音のリズムを聴きながら、同じ動作を続けるうちに、エモーショナルな何かが生まれてきたりします。それを感じていただければ、ワークショップの意義はあると思います」(蜂谷淳平さん)

自分ではない何物かに化けている、鹿(?)に化けている、自然と一体になる......、そんな感覚なのだと、蜂谷さんは話す。

22年9月のワークショップの参加者は、約20人だった。岩手県出身者が多かったが、なかには新潟県佐渡から来た人も......。地方の郷土芸能経験者の交流の場にもなったらしい。

また、10月に開催したイベント「ヘンバイバライ2022」でも鹿踊の演舞や、ワークショップを開催。イベントには県内外から400人以上が来場したとのこと。

そして2023年は10月15日と29日に「ヘンバイバライ2023」を開催予定。

間近で鹿踊を見てみたい人は、公式サイト(https://ennichi-satoyama.jp/)で詳細を確認してほしい。

Jタウンネット

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