ぬらりひょんは実在する!? 秋田県で「ガチ百鬼夜行」の目撃例… ドラマ「妖怪シェアハウス」を民俗学者が深堀り!

2020年8月29日(土)21時15分 tocana

画像は「テレビ朝日」より引用

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——話題のドラマ「妖怪シェアハウス」を気鋭の民俗学者・畑中章宏が解説! ドラマに登場する妖怪アマビエの裏情報を解説! 今回の妖怪はぬらりひょん!



今回の妖怪:ぬらりひょん
 ドラマのなかでは、人間の弁護士兼経営コンサルタント沼田飛世(ぬまた・ひよ)として活動する「ぬらりひょん」。どこかとらえどこのない性格にもかかわらず“妖怪の総大将”とも言われていて、ドラマでも個性的な妖怪たちのまとめ役になっている。


 そんな不思議な存在だが、江戸時代の妖怪絵巻にもよく登場し、鳥山石燕(とりやま・せきえん)の『画図百鬼夜行』では頭が大きな坊主姿で描かれ、「まだ宵の口の燈影に ぬらりひよんと訪問する怪物の親玉」と記される。



 家のものが忙しくている夕方などにどこからともなくやってきて、勝手に家に上がりこみ、お茶を飲んだり、主人のキセルで煙草を吸ったり、まるで自分の家のようにふるまう。


 その姿は頭の大きな老人で、口元は笑っているけど、「鯰に目口もないようなもの」と記した資料もあり、のっぺらぼうのような物の怪として理解されていたようだ。


 作家の京極夏彦と妖怪研究家の多田克己によると、「ぬらり」は滑らかな様子、「ひょん」は『日葡(ポ)辞書』では、「思いがけない」や「奇妙」という意味なのだそうである。


 一見するとお坊さんのようにも見えるが、商人のような恰好をし、旦那風にゆったり歩く。ドラマのぬらりひょんもこのとおりの風情だ。



 漢字では「滑瓢」とも書くぬらりひょんの発祥地は、岡山県や秋田県だという説がある。


 岡山の備讃灘(びさんなだ)では、人間の頭ほど丸い玉が波の上に浮かんでいたので引き上げようとしたところ、「ぬらり」とすり抜け、「ひょん」と浮くことを繰り返したため、こんな名前が付けられたという。ただその実体は、クラゲやタコを妖怪と見たとも推測される。


 江戸時代の著名紀行作家・菅江真澄(すがえ・ますみ)の旅日記に、「さへの神坂を、小雨の降る夕方に通ると、男の場合は美女とすれ違い、女の場合は色男とすれ違うことがある。またぬらりひょん、おとろし、野槌(のづち)の百鬼夜行が見られるときもある。人はそこを化け物坂という」(現代語訳)という記述がある。


 この恐ろしい坂道は現在の秋田県湯沢市稲庭町沢口にあり、ぬらりひょんのほかに、おとろしや野槌などの物の怪が行進したというのだ。「おとろし」は長い髪におおわれた正体不明の妖怪、「野槌」は胴が太い蛇のようだが口だけで目鼻がなく、野の精霊、野つ霊(ち)だともいわれている。200年近く前の話だが、実際に百鬼夜行(ひゃっきやぎょう)があったなら、ぜひ見てみたかったものである。



 ぬらりひょんが“妖怪の総大将”だという設定は、水木しげるが『ゲゲゲの鬼太郎』での役柄から広まったらしい。原作でもアニメでも鬼太郎の敵役として対立し、権謀術数を用いて人間と争う。ドラマでも“今怪”もこれから先も、ぬらりひょんの暗躍には目を離せないことだろう。

tocana

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