【M-1決勝進出・錦鯉】「ずっとダラダラしていた」2人がなぜブレイク? 知られざる経緯(インタビュー)

2021年12月18日(土)18時0分 tocana


 昨年『M-1グランプリ2020』で決勝に進み、「史上最年長ファイナリスト」として話題になったお笑いコンビ・錦鯉。彼らは、今年の『M-1グランプリ 2021』でも2年連続ファイナリストとなり、19日(日)の決勝戦を目前に控えている。


 そんな彼らが11月17日に初めての著書『くすぶり中年の逆襲』(新潮社)を出版した。2人の生い立ちや芸人としての歩みを振り返る内容になっている。現在50歳の長谷川雅紀と43歳の渡辺隆は、これからどのようにお笑い界を生き抜いていこうとしているのか? 全4回にわたるインタビューの第2回では「中年の星」と持ち上げられることについての葛藤を語ってくれた。


・ インタビュー第1回:錦鯉・長谷川雅紀が「他人の目を意識しない」本当の理由


■歯がないということ


——雅紀さんといえば「歯が8本ない」というのが有名ですが、そうなったのは歯磨きをあまりしていなかったからなんでしょうか?


長谷川雅紀(以下、長谷川)  そうですね。夜寝る前に甘いものを食べて、歯を磨かないで寝たりしてたんですよ。あるとき、いとこが僕に悪い知恵を教えてきたんです。「歯磨いてから寝なさい」って言われたら、歯磨き粉を指につけて口に塗って、歯磨き粉のにおいをさせて磨いたふりをするっていう技を。


渡辺隆(以下、渡辺)  別に技じゃねえよ。


長谷川  そういうのでごまかしたりしてきたツケが回ってきたのかなと思いますね。


——毎日は磨いていなかった?


長谷川  いや、朝は磨いてましたけどね。夜磨かないんですよね。夜は甘いものを食べながらそのまま寝たいじゃないですか。そこで歯を磨くというのが、どうも苦手というか。まあ、誰が悪いって僕が悪いんですけどね。ハッハッハ!


渡辺  当たり前だよ。


——今は8本ない状態ですが、今後はもっと減ってしまう可能性もあるのか、それとも差し歯などで埋めていくのか、どうなる予定ですか?


長谷川  いま歯医者に通っていて、これから歯を入れる予定なんですよ。15年ぶりぐらいに奥歯ができるかと思うと、ワクワクが止まらないですね。


——奥歯がないっていうのはどういう感じなんですか?


長谷川  食べ物はたいてい丸飲みなんです。噛んではいるんですけど、下の歯がないので上の歯だけで噛んでる状態なんですよね。だから、餅つきです。


渡辺  餅つきじゃねえよ。


長谷川  餅つきの要領でちょっと柔らかくして飲んでるみたいな感じなんですよね。だから胃にも悪くて。ABEMAの企画で「歯のない人と行くならこんな店」みたいなロケに行ったりもしたから、それはありがたいなと思ったんですけど、母親にはすごい怒られましたね。「歯がないなんて芸じゃないんだからね!」って。


——ごもっともですね。


長谷川  奥歯ができたら噛みたいものっていろいろあるんです。たとえばマカデミアナッツ(が入ったチョコレート)。


——今は無理なんですか?


長谷川  無理です! 奥歯がないから周りのチョコレートのコーティングを溶かして、中の豆の部分を前歯でカリカリって「リス式」で食べてるんで、正しい食べ方をしたいなって。


渡辺  (チョコと)一緒に食べたいんでしょ?


長谷川  そうそう!



■「中年の星」ではない!


——この本ではお2人が芸人になってからのことが書かれていますが、ずっと精力的に活動していたわけではなくて、結構ダラダラと過ごしていた期間もあったりしたそうですね。


渡辺  ずっとですね。ずっとダラダラしていました。


長谷川  本当に良くないと思いますね。自分の中で「30歳まで」とか「5年以内に」とかちゃんと決めて、それで達成できなかったら別の道に行くとか、そういうことをやった方がよかったのかなと思います。そういうのを決めてなかったから、ダラダラと辞めるきっかけを逃してここまで来ちゃいました。


——それはご自分たちではあまり良くなかったと思っているんですね。


長谷川  振り返ってみたら、良くないですよね。今やっとお仕事を頂けるようになって、お金ももらえるじゃないですか。でも今、僕は50なんで、お金があってもおいしいものとかそこまで食べられないし、奥歯がなくて噛めないんです。女性はどうなのかって言っても、結婚もしてないし。膝も腰も悪いからスポーツもできない。何が楽しいんだ、って。


長谷川  だから、若くして売れた方がいいです。いろんな経験もできるじゃないですか。


渡辺  絶対そうだよ。


——「中年の星」なんて言われることもありますが、ご自分たちではこの年齢で世に出るのはあまりいいことだとは思っていないんですね。


渡辺  全然思ってないですよ。だって、世の中年の人の方が絶対にすごいから。僕らがこうなったのなんてたまたまです。


——本の中でも書かれていましたね。自分たちは商店でたとえたら潰れた店なんだから、こんなの見習っちゃいけないって。


渡辺  それは本当に思ってます。僕らを目標にしちゃダメです。反面教師にしてほしいです。


■芸人を名乗って笑わせなかったら詐欺


——でも、お2人が世に出たことで、キャリアの長い芸人に夢を与えた部分もあるんじゃないですか?


長谷川  それも言われますね。「僕らでもまだできるんだ、がんばれるんだ」って思わせた反面、「もう辞めようかな、違う仕事しようかな」と思ったときに、僕らのせいで「まだ希望はある」って延命させてしまった。良し悪しがあるのかもしれないですね。


——お2人はライブに出ている頃に、自分より若手の人が売れても焦ったり嫉妬したりしなかったそうですね。


渡辺  もう慣れちゃってましたね。当たり前のことになってました。「そりゃそうだろう、若いんだし」とか思ってました。


——それを見て焦って「俺たちもがんばらなきゃ」みたいにはならなかったですか?


渡辺  正直、そこまではなかったです。


長谷川  もう麻痺してました。同期だったらタカアンドトシとかいるんですけど、タカトシが『M-1』に出た、『オンバト』に出た、売れた、みたいなときに「クソー! 俺も負けないぞ!」ってなればいいのに「良かったね、おめでとう」って思っていたし。同じ事務所の後輩のバイきんぐが売れたときも、悔しいというよりは「やっぱり面白いもんな」って。野心がないのが良くないなと思いました。


——お2人ともそういうタイプみたいですね。


渡辺  そうなんですよ。似てるんですよ。


——それって結構珍しいですよね。世に出てくるようなお笑いコンビって、どちらかがガツガツしていて、その人が引っ張っていって売れるみたいなイメージがあるんですけど。


長谷川  そう言われたら珍しいかもしれないですね。もう奇跡ですね。


渡辺  何やってるんだ、って話ですよね。どっちか引っ張れっていう。


——でも、最近は『M-1』でも「決勝に行くんじゃないか」とか言われたりしていて(※)。ここ数年は前向きにやってきた感じがあるんじゃないですか?


※ 取材日は11月22日。その後、錦鯉は『M-1グランプリ 2021』の決勝進出を果たした。


渡辺  昔からネタはちゃんとやっていた方だと思いますね。「お笑い芸人です」って名乗って、笑わせなかったら詐欺だなっていうのもありまして。「いけるかもしれないな」「がんばろうか」みたいな感じはありました。でも、その「がんばろうか」も、ほかのコンビに比べたら弱かったと思います。



長谷川  この何年かの話でいえば、2016年に初めて『M-1』で準決勝に行かせていただいて、その時に「決勝行くんじゃないか」みたいな噂があって。でも、結局行けなかったんですよね。


 それで、僕が自信あったのが2018年だったんですけど、そのときは準々決勝で落ちてるんですよ。そのときに「『M-1』はちょっと厳しいのかな」と思ったんですよね。でも、2020年に決勝に行けたから、嬉しかったですね。


——ずっと行けないとそう思っちゃいますよね。「無理なのかな?」みたいな。


長谷川  そうなんですよ。ウケなくて行けないというのならわかるんですけど、ウケていたのでそんな思いはありました。『M-1』には感謝してます。


——お2人のネタはずっと面白いと思うんですけど、2020年には『爆笑問題&霜降り明星のシンパイ賞!!』(テレビ朝日系)とか『そろそろ にちようチャップリン』(テレビ東京系)とか、テレビにも少しずつ出るようになってきて。そこで空気が変わってきたというか、波に乗っているのかなっていう感じはしたんですよね。


渡辺  たしかに、2020年からテレビに出させてもらえるようになって、それからライブでもネタはやりやすくなったかな、みたいなのは感じました。


長谷川  ありがたかったですね。テレビの方が面白がってくれたというのがありました。


〜つづく〜


・ インタビュー第1回:錦鯉・長谷川雅紀が「他人の目を意識しない」本当の理由


※「ボケてない。生きてるだけ」錦鯉の漫才が今ウケる理由とは? インタビュー第3回(19日18時に公開予定)はコチラ!

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