暖冬なのに大雪の危険性が増大? 地球温暖化によって日本の冬はどう変わる?

2024年4月4日(木)8時45分 ウェザーニュース

2024/04/04 08:00 ウェザーニュース

記録的暖冬といわれた今冬、スキーシーズンを前にゲレンデコンディションが整わず、多くのスキー場で軒並みオープンが延期されました。東北や北海道では、例年よりも1か月近くも遅れたスキー場が出たほどです。
「暖冬」「寒冬」には地域偏差がありますが、全国的に見ると近年はおおむね暖冬傾向にあります。このまま暖冬が続くと、日本の冬はどうなってしまうのでしょうか?
ウィンタースポーツを楽しむ場所が限定される、寒い冬に旬を迎える農産物や海産物の収穫に影響が出る、などさまざまな弊害が予想されますが、問題はそれだけにとどまりません。
今回は気候変動と日本の冬の関係についてウェザーニュースLiVE「地球天気予報」の解説を務める、ウェザーニュース予報センターの森田清輝(以下、モリタ)と一緒に考えてみました。

暖冬傾向は今後も続いて降雪量が減少

気候変動というと、夏の平均気温の上昇ばかりに目が行きがちですが、実は冬の平均気温も徐々に上昇しています。
「気象庁発表のデータによると、1890(明治23)年からの100年間で冬の平均気温は1.19℃上昇。さらに冬日(1日の最低気温が0℃未満になった日)も100年間で18日も減少しています。
こうした冬の平均気温の上昇は、日本だけにとどまりません。ヨーロッパなどでも暖冬が続き、フランス・スイス・イタリアなど多くの国々で雪不足に悩んでいます。なかには廃業を余儀なくされたスキー場も出ているほどです」(モリタ)
平均気温の上昇を抑制するために、世界中で温室効果ガス削減に向けた取り組みが続けられていますが、今後の冬の平均気温と降雪量はどう変化していくのでしょうか?
「気象庁から気になる数値が報告されています。
それによると、2015年に採択されたパリ協定で掲げられた2℃上昇シナリオ(世界平均気温の上昇を産業革命前を基準に2℃よりかなり低く抑え、さらに1.5℃より低く抑える努力を追求すること)が実現できた場合でも、降雪量は1980〜99年の平均値を100とした場合に比べて約30ポイント近く減少するデータが出ています」(モリタ)

しかしながら、冬の平均気温上昇をストップさせるのは難しいのが現実。焦点はいかに抑制できるかです。
「もしパリ協定が達成できず、4℃上昇シナリオとなった場合には、約70ポイントの減少という危機的な状況となります。つまり降雪量は3分の1以下になるということです。4℃上昇シナリオとは、温室効果ガス削減の緩和策を取らなかった(取れなかった)場合の平均気温上昇をいいます。
いずれの場合でも初雪が遅くなり、終雪(春の降雪の終わり)も早くなります。降雪量が減少するばかりか、降雪期間も短くなってしまうのです。この結果、本州の平地ではほとんど降雪が観測されなくなり、山間部や高緯度でも減少してしまうでしょう」(モリタ)
今や「JAPOW(ジャパウ)」(ジャパン+パウダースノー=Japan+powder snow)として世界中で人気となっている日本のゲレンデとウィンタースポーツにとっては、深刻な問題になりそうです。

これからは局地的大雪の危険性が増大する!?

一方で、毎年のように「大雪による車の立往生」という現象も生じていますね。
「雨か雪かは気温で決まるので、温暖化しても高緯度で高標高の低温地域では、変わらず雪害リスクがなくなるわけではありません。
近年も北陸・信越・北海道などでたびたび局地的な豪雪となり、交通が麻痺してしまう事態が起きていますが、こうした豪雪の危険性がさらに増してくる可能性もあります」(モリタ)
冬の平均気温が上昇して降雪量が減少するにもかかわらず、豪雪となるのはどうしてなのでしょうか?
「端的に言うと、別表のように気温が高くなるにつれ飽和水蒸気量(空気に含まれる水蒸気の量)が増えるからです。つまり、暖冬によって大量の水蒸気を含んだ発達した大気が、低温地域で大雪をもたらすのです。注意したいのは、本州日本海側の山岳部や緯度の高い北海道などです。
最近の研究では、冬の平均気温が高くなると、10年に一度といわれる大雪の危険性が5倍になると報告されています」(モリタ)

日本は7割以上が山地という森林大国(フィンランドに次いで世界2位)。山岳部が多く、北海道は緯度も高いので注意が必要というわけですね。

降雪量減少で心配されるのは慢性的な水不足

実は、降雪量の減少が招く見逃せないポイントがもう一つあります。
「降雪量が減ると、冬の間に山や森林に蓄えられる水分量が減ってしまいます。これは水不足に直結します。
日本の水資源は融雪水が高い割合を占めています。これまで水不足というと空梅雨が要因となってきましたが、降雪量の減少も夏の飲料水不足・農業用水・工業用水不足の引き金となります。とりわけ融雪水を前提にして成り立っている北国の農業は、打撃を被るかもしれません」(モリタ)
降雪量減少による水不足。降雪量減少が不可避とすると、水不足で私たちができることはないのでしょうか?
「ぜひ、節水に心がけていただきたいと思います。風呂の残り湯を洗濯に利用する、キッチンやシャワーの流しっぱなしを止める、洗面・手洗いでは水流を少なくしてこまめに蛇口を締めるなどです。できることだけでいいと思います。これを水不足の年だけでなく、常に意識して実行できるといいですね」(モリタ)
地球温暖化の影響で水不足を招くのであれば、節水はその影響を軽減するための「適応策」になります。加速度を増す地球温暖化に対して、生活の中の日常的な「緩和」と「適応」を実践していくことが、私たちの未来を守ることにつながります。
気候変動の急速な進行を食い止めるために、私たちも身の回りのできることから取り組み、一緒に地球の未来について考えていきませんか?

▶ 森田 清輝(もりた きよてる)
ウェザーニュース予報センター所属のベテラン気象予報士。現在は、24時間生放送の気象情報番組ウェザーニュースLiVEで「地球天気予報」コーナーの解説を務める。


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