「貧乏人のくせに歯向かうな」「お前は不快な存在だ」カスハラの対処法、罰則はある?【弁護士が解説】

2025年4月20日(日)21時15分 All About

従業員が安心して働ける労働環境のために、「カスタマーハラスメント(カスハラ)」への対応が進んでいます。今回は弁護士である筆者が法律という視点から、カスハラとは何か、罰則について解説します。

従業員が安心して過ごせる就労環境のために、スターバックス コーヒー ジャパンは4月3日、「カスタマーハラスメント対応方針」を発表しました。
また、いわゆる“フジテレビ問題”で、中居正広氏の行為が取引先(中居氏)からフジテレビへのカスタマーハラスメント(以下、カスハラ)と位置付けられたことなどもあり、“カスハラ”への注目が集まっています。

「貧乏人のくせに歯向かうな」「この店の存在が不快でたまらない」

All About編集部は全国のユーザーに「カスハラ」に関するアンケートを実施。その結果、客から“理不尽”な対応を求められて困ったことがあるという人は少なくありませんでした。
「クーポンの期限切れで使えずに、自分の思い通りにならなかった客が、暴言を吐いて『低能だからこんな誰でもできることしかできない。貧乏人のくせに歯向かうな』と言われてしまい、自分の人格まで否定されてしまい見下された」(40代女性/熊本県)
「お客さんの方が注文を間違えたのに、店員が間違えてんだから家まで誤りに来るように電話で言われた。防犯カメラにも注文を間違えたのはお客の方だと証拠が残っているのに、自分の非を絶対に認めない様子だった」(20代女性/神奈川県)
「学生時代、ファーストフード店でアルバイトをしていた際に、混んでいる時間帯のレジにわざわざ並びに来て『この店は何を考えているんだ!』と叫びだすお客様に当たったことがあります。
話を聞いてみると『自分はダイエットをしているのに脂っこいものを売るんじゃない』『この店の存在が不快でたまらない。お前のことも同じように不快な存在だ』となんだかよくわからないままに謎の謝罪を要求され、面倒だったのでそのまま1時間程ただただ平謝りした経験があります」(30代女性/岩手県)
では、そもそもカスハラとは何か、どんな罰則があるのか、法律という視点から弁護士である筆者が解説します。

カスハラとは

カスハラとは「カスタマーハラスメント」の略であり、「顧客や取引先などからのクレーム・言動のうち、要求内容の妥当性に照らして、要求を実現するための手段・態様が社会通念上不当なものであって、手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」(消費者庁)や、顧客等から就業者に対し、その業務に関して行われる著しい迷惑行為(暴行、脅迫その他の違法な行為又は正当な理由がない過度な要求、暴言その他の不当な行為)であって、就業環境を害するもの(東京都カスタマー・ハラスメント防止条例2条5号)と定義されています。

カスハラを罰する法律や、罰則について

カスハラに心を悩ませる労働者がいることが問題視され、前述の東京都カスタマー・ハラスメント防止条例が施行されるなど、カスハラ自体を明確に意識した取り組みは開始されているものの、カスハラを明確に罰する条例や法律はありません。
しかし、個々のカスハラの内容に応じて罰則が適用される場合があります。
具体的には、店員などに土下座を強要した場合には「強要罪」が成立する可能性があるほか、タダにしないと悪い口コミを書くぞと言ったことであれば、「脅迫罪」や「恐喝罪」の成立が考えられます。
他にも傷害罪、暴行罪、名誉毀損罪、侮辱罪、威力業務妨害罪、不退去罪、軽犯罪法違反などが考えられます。
また、罰則ではないものの、最近は従業員を守るために、カスハラへの対応方針を明示する企業が増えており、カスハラに及んだ場合には、当該店の利用を断ったり、警察に通報したりすることがあるという内容を明示していることが多いようです。

カスハラに遭遇したらどうするか

もしもあまりにもひどい態様のカスハラを目撃したのであれば警察に通報をすることが考えられます。筆者も駅員に怒鳴って「料金をタダにしろ」と求めている人を見たとき、警察に電話をしたことがあります。
従業員としてカスハラに遭った場合には、相手が一応客の立場であるため対応に苦慮することが多いでしょう。カスハラとはいえない正当なクレームとの区別も困難です。そこで、1人では対応せず、複数名で対応する、責任者やカスハラ対応の窓口に速やかに連絡して指示を仰ぐなどが考えられます。
前述のように最近は、事業者側もカスハラに対し、毅然(きぜん)とした態度で臨むことを表明しているところが増えていますから、労働者においては、事業者の方針に従い、平身低頭に対応するだけではなく、時に理不尽な要求には応じないなどの対応も必要でしょう。
<調査概要>
調査方法:インターネットアンケート
調査期間:2024年6月13日〜2024年6月23日
調査対象:140人(男性:39、女性:99、その他:1、回答しない:1)
回答者のコメントは原文ママ
<参考>
スターバックス コーヒー ジャパン「カスタマーハラスメント対応方針について」
消費者庁「カスタマーハラスメント防止のための消費者向け普及・啓発活動」
東京都カスタマー・ハラスメント防止条例

鬼沢 健士プロフィール

慶應義塾大学卒業。平成24年、茨城県取手市「じょうばん法律事務所」を開設。主に労働者側の労働事件(不当解雇など)やインターネット詐欺被害救済(サクラサイト、支援金詐欺など)を取り扱う。All About 暮らしの法律ガイト。
(文:鬼沢 健士(弁護士))

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